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イスラエルのイラン攻撃は大統領選挙前の公算 ハマスのシンワル氏も殺害

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CNNがアメリカ高官の話として「イスラエルのイラン攻撃は大統領選挙前になるだろう」とする記事を出している。リベラル系のメディアなのでバイデン政権に有利な誘導をしていると思える。だが、どうも様子がおかしい。

どうやら「イスラエルは制御できない」という認識があり「オクトーバーサプライズをお見舞いされかねない」と不安視しつつも何もできないという状態になっているようだ。

つまり「どうか何事も起こりませんように」と祈るような内容で、CNNなどのリベラル系メディアが無力感を感じているように思える。そんな中ハマスのシンワル氏が殺害された。イスラエルはまたしても交渉相手を殺してしまったのだ。

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CNNが「イスラエルによるイランへの報復攻撃、大統領選前か 米当局者が予測」という記事を出している。メディアの立ち位置としては本来なら大統領選挙でハリス陣営が有利になるように誘導すべきだがどうもそうなっていない。英語版はもう少し分量が多いが基本的には「どうしよう、どうしよう」としか書いていない。

まず記事は「大統領選挙前にサプライズがあることを覚悟しろ」と言っている。船長がもうすぐ氷山に衝突するから安全姿勢を取れと言っているように聞こえる。

 イランが行った大規模なミサイル攻撃に対するイスラエルの報復攻撃をめぐり、米当局者は、米大統領選の投票日である来月5日よりも前に攻撃が実行される可能性があるとみていることがわかった。情報筋が明らかにした。米国民は投票日を控え、中東情勢の不安定さの増大を目撃することになりそうだ。

イスラエルによるイランへの報復攻撃、大統領選前か 米当局者が予測(CNN)

この文章の意味もわからない。おそらくネタニヤフ首相は自分の行動が大統領選挙にどんな影響を与えるかがよくわかっていて行動しているという意味なのだろうが「ネタニヤフ首相は行動を通じて大統領選挙に介入している」とは書けないために持って回った表現で「敏感になっている」とか「同調している」などの曖昧な記述になっている。「介入」と言ってしまうと親イスラエル系の人たちから反ユダヤ的と言われかねないという気持ちがあるのかも知れない。

それでも、情報筋によれば、イスラエルのネタニヤフ首相は、イスラエルの行動が米国に及ぼす政治的な影響に非常に敏感になっているようだ。米政府高官はネタニヤフ氏について、米政界に深く同調している人物とみなしている。

イスラエルによるイランへの報復攻撃、大統領選前か 米当局者が予測

次のセクションは「大統領と副大統領は選挙への影響を恐れていて今回の書簡にコミットしてない」という意味になる。本来なら抑止力が足りないと批判的に書きたいだろう。ところがこれは「トランプ氏の言い分を支援している」事になってしまうのでそれが書けない。英語版は更にこのあとにこのジレンマについて延々と記述している。

書簡は米国とイスラエルとの政治的な緊張関係を示しているものの、大統領や副大統領の署名はなく、左派からの圧力にかかわらず、バイデン氏もハリス氏もイスラエルへの援助を打ち切るとは公に表明はしていない。書簡で求めた人道物資増加について期限は大統領選後だ。書簡が公表された同じ週に、イランの攻撃から国を守るための先進的な米国の防空システムがイスラエルに到着していた。

イスラエルによるイランへの報復攻撃、大統領選前か 米当局者が予測

EUはすでにアメリカの煮えきらない態度を批判している。大統領選挙が終わるまで時間を引き伸ばすだけの内容でありそもそも大統領と副大統領は署名を避けている。またカタールも「ガザ停戦は膠着状態」になっているとしている。

事態は更に悪化している。最新情報ではハマスの新最高司令官シンワル氏が殺害されたという。

CNNは最新の分析記事でシンワル氏が殺害されたことでハマスが総崩れになり和平が実現し人質が戻ってくるのでは?と希望的観測を持っている。だが同じ記事に「だが交渉しようにも誰と話をするのだ?」と書いている。つまり交渉相手がいなくなったことで事態が泥沼化するであろうということがわかっていながら断定することはできないのだ。

もちろん

  • アメリカ合衆国は世界中で争いを放置してきた!
  • 実はアメリカこそすべての悪の巣窟だ!

という人もいる。

だが、アメリカが事態を持て余しているというのが実相である。

なお、イスラエルも大統領と副大統領がコミットメントを避けていることがよくわかっている。このため「アメリカに言われて人道的支援をやっていますよ」とリベラル系が読んでいるアクシオス経由でアメリカに伝えている。こうした言い訳を交えつつやりたいことはやってしまうのが今のイスラエルである。

イスラエルはシンワル氏を殺害しレバノンのUNIFILにも発砲を加えた。シンワル氏がいなくなればハマス排除の目的は達成したことになるが、これまでの経緯を見るとおそらく攻撃はやめないだろう。

ヒズボラもハマスも「自分たちはイデオロギーである」と言っている。つまり周辺のパレスチナ地域からアラブ人を一掃するまでイスラエルは一度始めた戦いをやめられないのだ。結果的に国連が主導する集団安全保障体制をアメリカ合衆国を巻き込みつつ破壊している。

現在のガザ・レバノン情勢には「これ」と言った落とし所がない。バイデン政権もそれを支援するリベラル系メディアもお手上げといった感じだ。さらに言えば国連が主導してきた「主権国家の安心を守る」機能も破綻の危機にある。

我々に今できることはありのままを認識することだけである。現在の状況で解決策を見つけるのは難しい。

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