毎日新聞・読売新聞などが情勢調査を行った。朝日新聞がまだ情勢調査を出していないようなので今回は加えてJNNの情勢調査を読んだ。
自民党は苦戦するが与党はかろうじて過半数を維持するだろうと見られている。立憲民主党は過半数維持はできないが議席を伸ばすと見られ、維新はやや議席を減らすだろうとの予測も出ている。
ただ、どちらが勝っても何らかの増税議論が行われる。経済成長の提案がなく代わりに支援策が盛り込まれているためである。当然追加の財源が必要になるのだ。
毎日新聞と読売新聞が媒体が情勢調査を行った。お気付きの通り表現に明確な違いがある。
普段の報道ぶりから日米同盟推進の読売新聞は自民党が政権を維持することを望んでおりリベラルびいきの毎日新聞は政権が変化することを望んでいるものと類推できる。
となると読売新聞はタイトルを通じて「このままでは自民とが不利になるぞ」と主張しており、毎日新聞は「このままでは情勢は変わらないぞ」と主張していることになる。どちらも最終的には「まだ決めかねている有権者がたくさんいる」と結んでいるのだから「ぜひ選挙に行って情勢を変えてください」とお願いしているということだ。
Xでは「マスコミによる印象操作か!」とか「世論誘導だ!」などという批判が出ている。「いっさいわからないようにすべき」という人もいるがそれは「選挙は闇鍋状態のほうが好ましい」と言っているのと同じである。またリベラル系の人は読売新聞だけを見ていて毎日新聞は無視している。確かにYahoo!ニュースでは読売新聞のほうが目立つ。
読売新聞も毎日新聞も「マスコミは不偏不党であるべき」という建前は維持しているがやはりそれは建前に過ぎない。だがさすがに「どっちの政党を支援してください」とまでは言えない。それでもXの人たちはそこに印象操作の可能性を感じ取り過敏に反応する。
JNNは「毎日新聞系列」という印象があるが独自に情勢調査をやっている。こちらは「自民 単独過半数割れの可能性、野党共闘進まず“一騎打ち”減で「批判票」分散? JNN序盤情勢調査【Nスタ解説】」と言っている。やはり何らかの変化は望んでいる(つまりリベラル色が強い)のだが、リベラルとしての期待が強かったために「野党共闘が進んでいない=野党は何やっているんだ」という苛立ちが滲む。
JNNの見立ては仮に有権者が自民党政権の継続を望まなかったとしても野党共闘が進んでいない情勢では勢力を逆転するのは難しいだろうというもの。蓮舫ショックで無党派市民の獲得に失敗した立憲民主党がブルーオーシャンの開拓を諦めてレッドオーシャンである穏健保守を取りにいったことの弊害だろう。現在のリベラル政党は「ガチの反米」か「現状維持を望む穏健保守か」という選択肢しか持っていない。
ただ一有権者の立場に立つと「この結果を見て投票行動を変える」のは難しいだろうと感じる。どちらが優勢になっても何らかの増税議論が待っているからだ。Yahoo!ニュースではクオリティメディアの政策議論よりもスポーツ紙の「増税議論」のほうに関心が集まっている。増税議論にSNSの「マジか!」という反応をくっつけただけで内容がないと見ることもできるが、おそらくこちらのほうが生活者実感には近いのではないか。主権者ではなく傍観者・部外者として選挙を眺めているのだ。
別のエントリーで触れるが政策議論が盛り上がらないのにはそれなりの理由がある。有権者には主権者意識がなく新聞も不偏不党原則に縛られて有権者に特定の政党への投票を呼びかけるような露骨なことは行っていない。各紙とも「投票行動を決めていない有権者が多数いて情勢は変化する可能性がある」としているが、現在の情勢では明確な勝者がないままでなんとなくダラダラと今の状況が続くのだろうという気がする。