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悲しき社会実験 北朝鮮が恐れる資本主義の繁栄

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テレビでは1日中「北朝鮮が韓国との通路を爆破し緊張が高まっている」という報道を流していた。これを見て朝鮮半島でも戦争が起きるのではないかと考える人も出てきそうだなと感じる。だが韓国のメディア報道は極めて抑制的だ。BBCも同じトーンで伝えており経済的にある程度成長した韓国と人民が疲弊しきっている北朝鮮の落差を実感せざるを得ない。ノーベル経済学賞の成果を引用するまでもなく「国民を搾取する経済は衰退する」のである。

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朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国が分離したときの国力は北朝鮮優位だった。北部は鉱業資源・工業資本に恵まれた国で南部は農村地帯だったからだ。また南部は軍事独裁体制が敷かれており民主主義は限定的だった。日本の長い植民地支配では民主主義の伝統は育たずアメリカも民主化よりも赤化対策のための治安の維持を優先していた。韓国が飛躍的に成長するのは88年民主化のあとだ。国民が民主主義を自ら獲得したという実績があるため今でも韓国の国民は民主主義の維持に熱心である。また同じ国民条件で民主化導入の前と後に経済成長に差があるのだから「民主主義が優れた制度である」事もわかる。

経済格差が明確に開いているため韓国メディアの報道は抑制的だ。中央日報は無人機偵察に際して「確かに韓国軍が無人機を飛ばした可能性は否定できないが休戦協定に違反して国際世論を刺激しても意味はない」と分析している。BBCもむしろ朝鮮労働党が体制維持のために強い敵を必要としているのだろうと分析する。

北朝鮮当局が最も恐れているのはおそらくこの理解不能の「豊かさ」だろう。だから韓国の民間人が盛んに飛ばしているとされるビラの影響力は無視できない。すでに自分たちの暮らしに疑問を持っている北朝鮮の人民が真実に気がついてしまう可能性がある。韓国のドラマが闇市場で流通しているとも言われているが、所持が見つかった人たちは公開処刑のような裁判で見せしめ的に重罪が課される。

本来ならば韓国に対して「ビラを飛ばさないでください」とお願いしたいところなのだろうがそんなみっともないことはできない。このため「お願い」は次のような表現となる。アメリカを雑種犬の飼い主に見立て「犬が吠えるのは飼い主の責任だ」と言いがかりをつけている。

朝鮮労働党中央委員会のキム・ヨジョン副部長は14日夜に発表した談話で、「我々は平壌(ピョンヤン)への無人機事件の主犯が大韓民国軍部のクズどもであることを明確に知っている」としたうえで、「核保有国の主権が、米国人が手なずけた雑種犬によって侵害されたとすれば、それらを育てた飼い主が責任を取らなければならない」とし、韓国と米国を同時に非難した。これに先立ち、北朝鮮は13日、北朝鮮軍事当局が軍事境界線一帯の前方部隊に「完全射撃準備態勢」を整えるよう指示した事実も公開した。

北朝鮮、3日連続で「無人機ビラ」談話発表…「米国に韓国を制止するよう要求」(ハンギョレ新聞)

ロシアは北朝鮮の行動を「Active Aggression」と言っているそうだが「受動攻撃性の間違いではないか」と言う気がする。ロシアは北朝鮮監視の国連パネルの継続に反対し北朝鮮を擁護し続けている。ミサイル技術の獲得や武器工場としての後方支援を期待していると考えられているそうだ。

となると国際機関としてはロシアの暴走を止めたくなる。ロシアのウクライナ侵攻以降にはその空気が醸成されたが状況が変化しつつある。

イスラエルがレバノン南部の国連部隊(UNIFIL)を攻撃した。グテーレス事務総長やフランス・イタリア・スペインがこれを非難している。

グテーレス事務総長は戦争犯罪の可能性があると指摘しているのだがUNIFILは安全保障理事会の決済のもとに派遣されており現在の国連中心の集団安全体制に対する挑戦となる。

バイデン政権は「非人道的な行為を継続すれば武器支援が継続できない可能性がある」と指摘した。このバイデン政権の声明も日本では意味があることのように伝えられているが共和党優位の議会で「イスラエルの非人道性」が協議されることはないだろう。

ロシアのパネル差し止めに関しては日本・アメリカ・韓国が主導した監視団体が立ち上げられる予定になっている。トランプ氏が出てくる前に既成事実を作っておくべきだという気持ちもあったのかも知れない。また国連中心の集団安全保障活動は行き詰まっていて集団自衛体制に移行しつつある。戦争抑止の集団安全保障とエスカレートする可能性がある集団自衛体制では大きく性質やコストが異なる。

北朝鮮は140万人の若者が朝鮮労働党の理念に賛同し軍隊入りを希望していると宣伝している。我々西側世界の常識から見れば経済成長は「結果」であり統治の正統性を示すための手段ではない。韓国人が経済成長を目指すのは自分や家族の生活がより良くなりたいと願っているからで「国民の力」や「共に民主党」を支援しているからではないのだが、おそらく朝鮮労働党にはそれは理解できないのだろう。

これは対岸の繁栄ぶりが理解できない在北京の中国共産党にも言えることだ。彼らは本質的に経済成長が何によってもたらされるのかが理解できないのである。

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