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「今度の総選挙で46%が投票先を決めきれていない」のもっともな理由

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政治ブログたるもの「有権者が投票先を決めきれていない」のであれば決められるように情報を提供するのが正しい姿勢であり社会正義だ。

と意気込んで始めてみたもの「調べれば調べるほどどこにも投票したくなくなる」という状況になっている。

共同通信の調査によると小選挙区では46.6%が投票先を決めきれておらず比例でも33.2%が迷っているそうだ。結局「ありのまま」を伝えようとすると「みんな迷っている」と書かざるを得なくなる。

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どの党の政治家も信用できない

まず、日本人はどのような選挙結果を望んでいるのか。本来ならば政策集(マニフェスト)が各政党から送られてくるべきだ。これをカタログギフト目録のように読みながら「今回はこれにしようかしら?」となるのが理想だろう。

だがどの政党も実は「経済成長が望めず社会保障費が現役世代を圧迫する」という現実を変えることができない。総選挙のあとに政権を取った政党はおそらくどこも増税議論を行うことになるためカタログが作れない。選挙に不利だからだ。

自民党に至っては「みんなが考えを固める前に選挙を終わらせよう」などと考えており状況が混乱している。

実は有権者もこの事がよくわかっている。どっちみち政治家は嘘をつく。彼らが嘘をつかないのは政権から転落しかねないときだけだ。野党も政権を取れば同じことをやるだろう。だからどっちも勝たないほうがいい。

共同通信は次のように書いている。

  • 与党と野党の勢力が伯仲する」が50.7%で最多だった。

ただこの決め方だと「みんなが与党に投票しそうになったら野党に投票する」ことが求められる。みんなの動向がわからない上に選挙が始まると選挙報道が減ってしまうので自分がどう行動していいかが決められなくなる。

ただし、次の選挙は政権交代に関係がない参議院選挙である。有権者の「政権を取ると何をしでかすかわからないからうかうかと野党に入れられない」という疑念は払拭されるかも知れない。

自公党首は「言っていることとやっていること」が違う

有権者に考えさせないために選挙を急いだ石破総理だがこの数日でさえ発言がブレている。当初「政策活動費を使うことはある」と主張していた。ところがあまりにも批判が大きかったために「やっぱり使わない」といい始めた。すると野党はそれをどうやって証明するのだ?と問いただす。結果的に用途は公開できないので「総理は発言がブレている」と批判される。

共同通信の調査では次のような支持率になっている。ご祝儀相場期間は長く続かなかったようだ。

  • 衆院選トレンド調査で、石破内閣の支持率は42.0%、不支持率は36.7%だった。

公明党は「自分たちは政治と金の問題に距離を置く」と言っていた。だが地方の事情を考慮するとも発言している。今回の討論会では「独自の基準を設けた」などと説明している。だがよく聞いてみると「石井代表を選挙で勝たせるために隣の自民党候補を独自支援する」という。つまり「地方の石井さん」と「中央の石井さん」を便利に使い分けている。選挙に勝ちたいという気持ちはわかる。ここは正直になったほうがいいだろう。

誰がどこの政党なのかよくわからない

例を挙げればきりがないので直前に報道が出ているものだけを挙げた。自分の選挙区については「自分で調べてください」としか言いようがない。自民党と名乗れない自民党の人がいる。福岡9区の例でわかるように公認だけが問題になっているわけでもない。

福島3区

この選挙区は福島3区と4区が統合されてできた新しい選挙区だ。菅家氏が小選挙区に残るはずだったが裏金議員のレッテルを貼られては戦えないとして撤退した。比例名簿に載るはずだった上杉謙太郎氏は比例名簿を辞退した。このまま撤退かと思われたが無所属で立候補するそうだ。実質的に自民党支援者のために活動するとしておりおそらく受かれば追加公認されるだろう。

和歌山2区

和歌山2区は世耕弘成さんと二階俊博氏の子息が対決する。二階俊博氏の子息が自民党候補で世耕弘成さんが無所属ということになっている。だが世耕弘成さんは元自民党の実力者だ。本間奈々さんは世耕弘成陣営につくそうだ。本間奈々さんは「高市さん潰し」をしようとしていた二階さんを許せないとの趣旨の発言をしている。つまり反高市のために世耕弘成さんと手を組んだというロジックのようだ。

山田宏参議院議員は高市早苗氏を支援するために「自民党と書くな」という草の根運動に対して「それは真逆だ」と情報発信している。

ただ石破さんが勝ってしまうと高市さんの将来にはプラスに働かないだろう。もはやこうなると「真の保守」とはなにかがよくわからなくなり、誰に投票するのがいいのかもよくわからなくなる。ネトウヨというべきか真の保守というべきかは悩ましいが、とにかくこの界隈の人はかなり迷うことになるだろう。

東京9区

東京9区では自民党に復党したばかりの菅原一秀さんが無所属で出馬する。裏金疑惑で公認が得られなかった今村さんが撤退した。現職の支部長だった。そもそもなぜ菅原さんが離党したのかも含めて(党本部が説明責任を逃れるためだろうが)よくわからなくなっている。

福岡9区

福岡9区からは大家敏志参議院議員が撤退した。参議院の議席が減ることを警戒した党本部に公認される見込みがなく麻生太郎氏の機嫌も損ねていた。大家敏志氏は涙の撤退宣言だった。この選挙区の前職は民主党系の緒方林太郎氏だ。無所属での選挙は最後としているそうだが次にどの政党に入るかは明言しなかった。

自民党は自民党の北九州市議の三原朝利氏を支援すればいいのではないかと思うのだが「空白区になる」と憤っている。実は三原朝利氏が武内市長を支援したとして除名しているそうだ。ただし武内氏の背景には自民党最高顧問の麻生太郎氏がいる。一体誰が自民党で誰が何党なのかよくわからない状態になっている。

このように各選挙区で「自民党の名前がついていない自民党の候補者」がいる上に、自民党の中にも「石破自民党を快く思わない支援者」がいて何がなんだかよくわからない状況になっている。

進まない野党連携

立憲民主党の野田代表は広範な野党連携を夢見る小沢一郎氏の支援を受けたこともあり未だに野党連携を進めると言っている。だがその野党の中には共産党は入っていない。共産党は安全保障政策の転換に強硬に反対しており選挙協力は限定的なものになりそうだ。

一方の維新は「自公過半数を割り込めば政権入りが視野に入ってきた」と思っているのだろう。「嘘がつけない」馬場代表の発言が揺れている。

日本維新の会の馬場伸幸代表は12日、時事通信などのインタビューに応じ、衆院選で自民、公明両党が過半数割れした場合、政権への協力に含みを持たせた。「各党がどの程度の議席を預かるかが(政権の)枠組みを決める最大のポイントだ」と指摘した。

政権との協力は議席数次第 馬場伸幸日本維新の会代表―衆院選【各党インタビュー】

つまり、有権者が「自民党を牽制するために野党に票を入れた結果維新が政権入りする」という望まない結果が生まれてくる可能性がある。また高市支持の人は自民党に投票すれば石破政権の長期政権に道を開きかねず、かといって負けさせてしまうと高市派の代わりに維新が大きな顔をしかねないという状況に陥る可能性がある。

「選挙事情をよく見れば見るほどどこに入れていいかわからなくなる」という状況になっている。

ワットアバウトイズム(お前こそどうなんだ主義)

フジテレビの番組で橋下徹氏が与党を支援するために取った奇策がわっとアバウトイズムだった。野党(維新も含め)は自民党を批判するが、あんたたちはどうなんですか?とやったのだ。

案の定、各野党は「私は使わないけど前任者のことはわからないなあ」といい始めた。組織的に隠蔽しているのか属人的でいい加減なお金の使う方をしているのかは不明だが、どこも大体似たようなことをやっている。そして、相手の事情がわかっていながら形ばかりの攻撃をしているわけだ。

橋下徹さんの作戦勝ちといったところだろう。

さらにれいわ新選組の大石晃子さんにもスキャンダルがある。攻撃は強いが防御は弱いといった感じで大げさな手振りを加えながら「私と自民党は全く違う」と叫んでいた。

ただ、橋下徹さんと大石晃子さんは過去に名誉毀損の訴訟で対峙したことがあり橋下徹さんは完全に中立の立場にはない。これを知っていてあの番組を見た人も多いはずで「一体何を見せられているんだろうか?」と感じたのではないか。

有権者の政治参加を抑制する意味のわからないネット選挙規則

日本の公職選挙法と選挙報道はかなり独特だ。選挙になるとテレビが選挙情勢を伝えなくなる。また独自に「この候補を応援します」はOKだが各陣営の声をインターネットに転載・転機すると公職選挙法に触れる可能性が出てくる。ただそのルールは「総務省はインターネットによる有権者の参加をなんとしてでも諦めさせようとしている」と思われても仕方ないほど複雑なもので、読んでも何が書いてあるのかよくわからない。

例えば当ブログがある政党を支援していたとする。その場合にはメールアドレスを記載しなければならないそうだ。「だったら選挙について扱うのはやめておこう」となるのが関の山である。ちなみに落選運動は選挙運動ではないのではと思ったのだが「当選を得させないための活動」と書かれている。

選挙運動又は当選を得させないための活動に使用する文書図画を掲載するウェブサイト等には、電子メールアドレス等※を表示することが義務づけられます(改正公職選挙法第142条の3第3項、第142条の5第1項)。

(1)インターネット等を利用する方法による選挙運動の解禁等(総務省)

ただしメールアドレスではなくフォームの掲示でも構わないと言うことにはなっている。

 ※ 電子メールアドレス等とは、電子メールアドレスその他のインターネット等を利用する方法によりその者に連絡をする際に必要となる情報をいいます。具体例としては、電子メールアドレスの他、返信用フォームのURL、ツイッターのユーザー名が挙げられます。

(1)インターネット等を利用する方法による選挙運動の解禁等(総務省)

また、意外と知られていないが一般人が選挙運動のメールを転送すると罪に問われる。ところがここにSNSが含まれていない。

 電子メールを利用する方法※による選挙運動用文書図画については、候補者・政党等に限って頒布することができるようになります(改正公職選挙法第142条の4第1項)。候補者・政党等以外の一般有権者は引き続き禁止されています。
 違反した者は、2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処することとされており(公職選挙法第243条第1項第3号)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項・第2項)。

(1)インターネット等を利用する方法による選挙運動の解禁等(総務省)

確かに総務省は頑張ってできるだけ具体的に書こうとしてるのだが、そもそもルールを決めた当時と今では状況が変わっている。またXも虚偽投稿が野放しになっており日本のアカウントと海外のアカウントが区別できない。結果的に「正しい情報」が抑制され「間違った・いい加減な・お金儲け目的の」投稿が増える構造になっている。

公示日前日に「まだ決められない」という人が46.6%いるのだが、選挙期間中に得られる情報は限られることになる。公職選挙法は有権者の政治参加を阻害する要因になっており、誰がどこの政党を代表し選挙後にどうなるかわからないという「闇鍋」状態だ。

こうした状況を踏まえて「冷笑型有権者」だけを批判されても「そうは言っても」という気持ちにしかならない。

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