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ハリケーン・ミルトンの虚偽情報拡散の裏にはやはりあのSNS

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BBCがハリケーン・ミルトンに関する虚偽情報の拡散経路について調べている。背景にはやはりあのSNSの存在があった。トランプ氏はこの虚偽情報を再拡散し民主党攻撃に利用している。虚偽を含む情報拡散を容認する背景には苦しい経営事情とオーナーの政治的姿勢がありそうだ。

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BBCがハリケーン・ミルトンの虚偽情報について書いている。中には取るに足らないものもあるそうだが「連邦政府が資金を移民に横流ししている」というものもありトランプ陣営に利用されている。

大統領選挙も終盤を迎える。世論調査の内容は拮抗しておりトランプ氏にやや不利な状況だ。そこでトランプ氏は移民攻撃を加速し新しい有権者を引きつけようとしている。彼の新作は「コロラド州オーロラ市はヴェネズエラギャングに支配されている」というもの。かねてよりそう主張していたがわざわざ現地に乗り込んだようだ。「ハイチ移民がペットを食っている」発言の後には複数の脅迫があった。オーロラ市の人々は市民生活が混乱しかねないと恐れているという。

本日の別の投稿では「玉木雄一郎氏は代表を降りるべきだ」と書いた。そんな大げさなと思う人もいるだろう。

だが党勢拡大を狙った分断構図を作るのは極めて危険だ。妬みやそねみから他者を攻撃したい人は少なくない。政治家の不用意な発言はこうした人達に「エサ」を与えることになりかねないのだ。

政治的に停滞している日本では政治的な分断が何をもたらすかはあまり知られていないが一度分断が作られてしまうと修復は極めて難しい。

虚偽を拡散しているプラットフォームは皆さんのご想像の通りXである。

拡散された偽情報のほとんどは、Xで青いチェックマークが付いたアカウントが発信していた。青いチェックがついているだけでなく、陰謀論をたびたび拡散してきた実績のあるアカウントだ。ハリケーン「ミルトン」の偽情報を今秋拡散した複数のアカウントは、以前にも、選挙から政治的暴力、新型コロナウイルスのパンデミック、戦争に至るまで、実際に起きた出来事をやらせだとほのめかす投稿を共有していた。

【解説】ハリケーン「ミルトン」の偽情報はどのようにSNSを席巻したのか(BBC)

Xで最近「Xで食ってゆく」という趣旨のプロモーションを見かけた。「SNSでそう簡単に収益が偉えるのだろうか?」と思ったのだが、こういう理屈だったわけだ。

ただし、X側にも事情がある。ある調査によると企業価値がかなり急速に落ちているようだ。イーロン・マスク氏の方針転換により過激な政治情報が拡散し広告主が撤退している。

マスク氏がどの様な理由でXを現在のような状況にしたのかはよくわからない。アパルトヘイトが行き詰まり白人が凋落した結果経済的に振るわなくなった南アフリカの状況を見ているという個人的な背景があるのかも知れないし、EV規制をほのめかすトランプ氏を抑えたいというビジネス的な動機もあるかも知れない。だが結果的にXの価値は下落していて虚偽情報は放置されている。

日本でもレプリコンワクチンを巡る主張が拡散したそうだ。実際に「接種者お断り」という張り紙を出したところもあったそうだが、後に発信者は情報を削除しているとのこと。Meiji Seika ファルマもX上で対抗するそうだが正確な情報よりも不確かな情報のほうが流通しやすい傾向がある。簡単に情報発信できてしまうため「悪貨が良貨を駆逐する」事になりかねない。

なお、ハリス氏はVOGUEの表紙を飾り詳細なインタビューも受けている。VOGUEは日本で言うところの「ファッション雑誌」だが内容は極めて政治的である。ハリス氏の人物像・政治への取り組み・政策などが網羅されており計算され尽くした記事構成になっている。編集長のアナ・ウィンター氏は民主党支持者だそうだが、カジュアルなイメージを全面に押し出した副大統領就任時の表紙は批判の対象になっているそうだ。これを踏まえて今回の表紙はオーセンティックな(言い換えればやや男性的な)衣装が採用された。

またアリゾナ州では「大統領なった暁には共和党を含んだ顧問団を結成する」と約束し大統領選挙前から「自分はみんなの大統領になる」と強調している。これは「反ユダヤ的な人を政権から排除する」として排除の論理を振りかざすトランプ氏とは対象的な姿勢である。

このようにアメリカの主要メディアでは嘘を振りまくトランプ氏と戦うハリス氏という徹底的なイメージ戦略が取られており普通に考えるとハリス氏の優位は揺るがないように思える。

だが世論調査の結果ではハリス氏ややリードのまま接戦という状況になっている。つまり既存メディアがどんなに頑張ってもそれを信頼しない人たちがアメリカには増えているのだ。

もちろん分断は政治家だけが作り出したものではない。だがいったん分断が生じてしまうとそれを修復するのは容易ではない。人々は自分が信じたいことだけを信じればいいと考え異なる考え方に耳を傾けなくなる。

そして「聞きたいことだけを聞きたい」人がビジネスチャンスになることもまた確かである。良質な広告メディアが失われ極端な言論に侵食されることになってしまう。

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