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石破総理「裏金議員への対応が決まらず」の深刻度

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石破総理、森山幹事長、小泉選挙対策本部長が集まって裏金議員問題への対応を協議したが結論が出なかった。強行突破を画策する森山幹事長と石破・小泉氏という改革派が激突している構図に見える。

今回の裏金議員への処遇は意外と大変なことになるのかもしれないと感じる。だがその原因は「え、そんなことで」という意外なものだ。

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報道特集が裏金と不倫で離党した宮沢元議員を追跡取材していた。支援者が次のように言っている。

「駄目なものは駄目。悪いことしちゃったら私はやりました、それから説明責任を果たしますというふうにして、自分の責任も明確にしていけば、僕はある程度はモヤモヤも晴れると思うんですけども」

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こういう発想はないなと感じた。支援者は裏金を「ダメなものはダメ」で「悪いこと」と言っている。だがおそらく何がダメなのかは説明できないだろう。そしてそのことで「モヤモヤしている」そうだ。

自民党は「自民党こそ正義で正解」と漠然と考える有権者に支えられてきた政党なのかもしれない。親戚や近所の集まりなどで「俺はずっと自民党なんだ」と自慢するような人たちだ。

日本人が「世間様に顔向けできない」「バツが悪い」という感情を重要視していることがわかる。だから「ダメなことやっている」候補者を応援し続けるのは「どこか居心地が悪い」のである。おそらく「裏金は世間からいけないことと言われている」と信じ込んでいる。

つまり「裏金」は絶対悪ではなく相対悪なのだ。

ここから何がわかるのか。

裏金についていくら自民党が総括したところで「世間がそれを許してくれない限り自分のもやもやは晴れないのだから応援できない」ということになる。

そもそも自民党は裏金について総括していない。

安倍派議員たちは自然発生的にいつの間にか始まったと言っている。原因がわかっていないので動機も掴めず問題は原理的に総括はできない。さらに支援者は「裏金はとにかくいけないことと(世間が)思っている」と信じている。世間の風向きが変わらない限り自民党を支援しないということになる。支援者を説得しても効果はない。問題は「世間」だ。

自分が自民党がいいと思えば投票すればいいではないかと思うのだが日本人はそう考えない。

森山氏、小泉氏、石破氏はこの問題についてどう考えているのか。

森山氏はとにかく総選挙を早く済ませてダメージを最小限に抑えたい。地方組織の混乱を懸念している。

和歌山2区では世耕弘成氏が立候補を表明した。二階俊博氏の次男との間で保守分裂選挙になる。選挙に強い議員の公認問題がこじれるとかろうじてまとめてきた過去の公認問題が噴出し各地で分裂選挙が起きかねない。比例で重複させないという案も出ているそうだが「自民党の比例の票が減る」と懸念する人もいる。

実は森山氏は参議院の鹿児島県の公認問題を抱えている。尾辻秀久氏の引退に伴う新人選びが難航しており1名に絞りきれていないのである。

時事通信はこう表現する。

自民内では27日投開票予定の衆院選を目前に、非公認とすれば地方組織などが混乱するとの懸念が強い。森山裕幹事長は党本部で記者団に「選挙は当選第一主義だ。政治資金問題は党で調査し処分も下してきた」と強調。7日までに行われる各都道府県連からの公認申請に基づき、「裏金議員」も公認する考えを示唆した。

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自民党の公認は未来が約束されたプラチナカードとして価値が上がっており各地で争奪戦が起きている。そして森山氏はその事情を(自身も当事者として)よくわかっている。

二大政党制を作るためとして既存政党を優遇してきた選挙制度が今や完全に裏目に出ている。

石破総理は「難しい問題に直面しても対処できるのは自民党だけ」と主張する。だが、スケジュール的に残りの一週間で安倍派への再聴取を済ませ(再聴取自体は決まった)その結果「公認しない」という結論が出ても各都道府県連は調整ができない。石破氏と小泉氏がこれをどれだけ理解しているかは未知数だが少なくとも党務を取り仕切る森山幹事長は「それは不可能」と考えている。

にも関わらず「公認問題」が未だに議論されているのは、地方の支援者に「なんとなくもやもやした割り切れなさ」が残っているからなのかもしれない。だがその感情はあくまでも情緒的なものなので合理的にそれを取り除くことはできない。

更に報道特集が取材した様な情緒的な支援者がどの程度いるのかや彼らが最終的に何を選ぶのかが全くわからない。世論調査のアンケートに「私はもやもやしています」という選択肢はない。世論調査は有権者が合理的な選択を行うという前提で組み立てられている。

今回の裏金公認でどんな結論が出るかはわからないが応援隊長の小泉進次郎氏と石破茂総理はどこか割り切れないものを感じており「私を信じてください」という情緒的な言葉にも力は入らないだろう。

裏金問題は日本人特有の言語化して表現するのが苦手という問題が背景にあり意外と深刻化しているのだなと感じた。自民党は意外と今回の選挙で苦戦するのかもしれない。

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