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「全面戦争だ」「宣戦布告だ」イランが弾道ミサイルでイスラエルを攻撃

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第二次世界大戦後に戦争を経験していない日本人の戦争観は第二次世界大戦で止まっているようだ。Xには戦線布告という言葉が溢れていた。また外務大臣もアメリカの表現を引用し「中東地域における全面戦争に拡大することへの深刻な懸念」を共有した。一体何がどうなっているのかと感じる。

一方で金融市場は今回の緊張の高まりにさほど大きく反応しなかった。むしろ石破総理大臣と植田日銀総裁が直接会ったことで「しばらく今の状況が急速に変わることはない」と理解したようである。ドル円は円安基調に戻っている。

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まず事実関係から見てゆこう。

イランは弾道ミサイルでイスラエルの軍事施設をピンポイント攻撃したと見られている。最新鋭のファタを使ったと主張しているがソ連の技術を元に北朝鮮の技術支援を受けたシャハブ3が使われたのではないかとCNNは分析している。

これまでの国家ではない組織(ハマスとヒズボラ)とイスラエルの間の交戦からイランの弾道ミサイル攻撃に格上げされたことになる。

実は「宣戦布告」はかなり重要なファクターでだ。いい加減に取り扱ってはならない。

イランは報復は一旦終了したと言っている。つまりこれはイスラエルからの攻撃に対するリアクションであって戦争ではないというスタンス。ただし戦争の準備はできていると言っている。「来るなら来い」というわけだ。イランはこのところイスラエルに押され気味になっている。大統領がヘリコプター事故でなくなってから良いことがない。ハメネイ師は安全なところに退避している。

イランはアメリカが戦争に介入することを恐れている。アメリカではなくイスラエルに対する攻撃であることを強調するためにアメリカに事前通告を行なわず事後に報告した。この時点でアメリカの介入を牽制する発言を行っている。

ではアメリカ合衆国はなぜ「全面戦争の危険性がある」と言っているのだろうか。本当のところはよくわからない。

実際にイスラエルと周辺領域の間の衝突はすでに「弾道ミサイルを使った」レベルまで格上げされている。だが「全面戦争になる危険性がある」ということはつまりまだ「全面戦争のようなひどい状態に放っていない」という意味合いになる。

アメリカ合衆国は明らかにイスラエルの暴走を止めることができていない。戦線はなし崩し的に広がっており、アメリカは今回の防衛でもイランのミサイルを迎撃している。バイデン政権はイスラエル防衛に対して「全面支援する」と約束しているが、どの程度予算が必要になるかはよくわからない。

一方でレバノンへの侵攻については「事前に相談はなかった」と言っている。防衛に対しては緊密に連携しつつ侵攻については知らないとは考えにくいが、アメリカ合衆国はこの2つを別物として扱おうとしている。

軍隊どうしが砲弾を交わし死者を出すことが「戦争」であるとするならば、防衛も攻撃にも区別はない。だが、アメリカ合衆国はこれを2つの異なる戦争に分解している。実際には同じものを「防衛」と「侵攻」という2つの虚構にわけているということだ。

その後に「この状態はバイデン政権の失敗によるものではなく」「今後起こるかもしれない最悪の全面戦争」の前段階だと説明している。つまりすでに起きている問題を相対的に低めるために最悪の結果を持ち出していることになる。実はこれも虚構なのだ。

アメリカ合衆国はイスラエルを支援しないという選択肢はないが、日本にはアメリアと違う意味付けを「目の前で起きている戦争」に与えるという選択肢はない・

日米地位協定が憲法の上位にあると揶揄されるほどの軍事的属国状態にあるためである。石破総理は日米地位協定の改訂と同盟の対等化を政治目標にしているとされるがアメリカ合衆国はこの要望をスルーする方針だ。

アメリカは取引の材料には使うだろうが日本の期待に応えても何らメリットはない。石破総理は党内基盤が弱く国民からも消極的支持しか受けていないため「ペットプロジェクト」を推進する自由度は得られない可能性が高い。

だが、地位協定の再交渉について、ある米政府当局者は「われわれは興味も意欲もない」と断言。アジア版NATOに関しても「実現不可能だ」とけんもほろろだ。

地位協定改定、取り合わぬ姿勢 石破氏の外相・防衛相人選に安堵―米

おそらく日本人が恐れているのは中東戦争の再来だろう。石油の供給が滞ると日本には石油が入ってこなくなり「オイルショック」が起きている。日本人が漠然と恐れているのは「全面戦争=オイルショック」という図式だろう。

だが今回の「全面戦争」はおそらく政治的な表現であって中東戦争の再来という意味合いはない。

さらに今回の戦争と中東戦争には大きな違いがある。中東戦争はイスラエルと周辺のアラブ・スンニ派との間の争いだった。当時のイランは革命直後で戦争に参加する余裕はなかった。

現在の戦争は「イスラエルと周辺軍事勢力の争い」と「散発的なミサイル交戦」に分解されている。そして周辺軍事勢力との争いも防衛と侵略に分解できる。

  • イスラエル本土をテロ組織の攻撃から守る防衛
  • イスラエルが越境した侵略
  • イスラエルとイランの間の実質的な交戦

は一体のものだがそれぞれを分解してなおかつ「全面戦争」と対比したうえで相対的な意味付けを低く見せている。それぞれの勢力がこれらを「防衛」と呼びつつも泥沼化している現実から目を背けて「外交努力によって全面戦争は避けられる」と言い続けているというのが現状だ。

なお、イスラエルはイランに対しての報復を予定していてエネルギー関連施設を狙っているようだ。ネタニヤフ首相はハマスとヒズボラなど「テロ組織」無力化のためにガザ地区とレバノン南部を制圧する考え。だが、実際にはイランの体制を挑発し攻撃を仕掛けさせている。

アメリカ合衆国はイスラエルが外に伸長する「過剰防衛」支援には消極的だが、イランを引き込めば「イランに対する防衛」に応じなければならなくなる。またイランが過激化すればネタニヤフ首相の支持率が上がる傾向があり「一石二鳥」といえる。ただしイスラエルの経済状況は悪化し、なおかつ周辺地域に多くの民間人の死者が出る。

こうした事情を知りつつもバイデン政権は国内の政治事情からイスラエルを継続支援せざるを得ない。このためバイデン政権は「最悪なことはまだ起きていない」と「全面戦争」という言葉を使っているのではないかと思う。

では市場関係者はこれをどう受け止めたか。

この攻撃激化を受けて石油先物は1ドル上昇したが「暴騰」にはなっていない。株価もややリスク回避傾向が見られたそうだが暴落することはなかった。

ドル円は円安基調に戻った。高市トレードの期待が巻き戻されていた。石破総理総裁の「利上げに消極的」という発言はスルーされていたが植田総裁と実際に会って会談し「利上げができる環境が整っていない」と「石破総理個人的に」表明したことで投資家はやっと信頼したようだ。植田総裁もアコードを尊重すると言っている。

植田総裁からは日銀の金融政策について、極めて緩和的な状態で日本経済をしっかり支えているということ、経済・物価が日銀の見通し通りに動いていけば金融緩和の度合いを調整するが「本当にそうか見極めるための時間は十分にあると考えており、丁寧にみていく」ということを石破首相に伝えた。

日銀総裁と石破首相が会談、引き続き政府・日銀の緊密な連携で一致

アメリカの雇用統計も順調に推移し「急速な利下げは難しいのではないか」という空気も広がっている。

つまり、中東戦争拡大の危険はそれほど広がっていないことがわかる。

ただし10月はそもそも投資家たちが疑心暗鬼に陥る傾向が強いとされておりちょっとしたニュースで市場が過敏に反応する傾向があるそうだ。「中東戦争」以外にも様々な混乱要因があり予断を許さない状況が続く。

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