立憲民主党の代表選挙が終わった。予想されていたとおりに野田佳彦氏が新しい代表になった。野田氏の新体制はかなり露骨なものだ。与党攻撃を表の顔にして裏では政策と党運営から左派を排除する。これに不満が噴出すると枝野幸男氏を「最高顧問」に祭り上げた。
この動きはいわゆる「蓮舫ショック」から始まった一種の反動だ。おそらくこれまでの立憲民主党は一旦崩壊に向かうだろう。個人的にリスクを取って立憲民主党を立ち上げた創業者(ファウンダー)から政党を簒奪した形になってしまいそうだからだ。
代表戦のあとの「ノーサイド」を謳っていた野田佳彦氏は代表就任後のインタビューでかなり慎重な姿勢を見せていた。政策は自分で決めずに新しいシャドーキャビネットで決めると言っていたので「党内の分裂を避けるために挙党一致体制を敷くのではないか」と思われのだが、その予想は外れた。党内から左派勢力を一掃する動きだったのだ。
- それは表立っては言えないよな
と感じた。
第一に東京・横浜を中心とする都市型市民運動はすでに党内闘争に敗れている。この原因となったのが蓮舫ショックだった。「内輪化」する左派運動が無党派層の取り込みに失敗した結果だったが立憲民主党は「共産党が悪い」と他人のせいにした。
左派の残党は社会党系の「サンクチュアリ」に支えられる枝野ファウンダーだった。結果的に彼らもまた代表選挙を勝ち残ることはなかった。
野田佳彦氏は代表代行として長妻昭氏と辻元清美氏を起用している。自民党攻撃の急先鋒だ。代表代行と言う格を与えることで自民党攻撃に凄みをもたせようとしているのだろう。これが表の顔である。
だが、政策と党運営の実務は小川淳也氏と重徳和彦氏に担わせる。どちらも元自治・総務官僚だ。野田体制は労働組合系や市民運動系を排除して官僚出身者を中核にすえるというエスタブリッシュメント色の強い顔ぶれになった。
両面から評価することができる。仮に頭脳明晰な元官僚が政策面から野田氏を支えることになれば「政策立案能力なき政党」から脱却できる。このアプローチは国民民主党の玉木雄一郎氏が得意としている戦略だ。だが彼の場合は人柄の冷たさや何処か庶民をバカにした態度などが無党派から離反されている。何よりも彼らの主張には官僚特有のわかりにくさがあり一般市民に浸透しにくい。
あくまでも感覚的な表現で恐縮だが
- どうも庶民の味方気取りが鼻につく
人たちなのである。
味方を気取りつつも「自分たちは庶民ではない」という態度がチラつく。これはかつてアメリカの民主党が中間層から離反されたときの状況に似ている。中間層は理想主義的な民主党を「偽善者の党」と感じるようになり共和党に流れた。逆に共和党のエスタブリッシュメントがハリス支持を明確にするなどの逆流も起きている。
結局問題になるのは誰が今の立憲民主党を支えているかである。おそらく現在の立憲民主党に期待しているのは既得権から切り離された人たちである。彼らが「なんだ立憲民主党も単なるエスタブリッシュ政党になってしまったのか」と気がついてしまうと既存顧客の野田氏離れが始まるだろう。
- 所詮、立憲民主党は我々の代表ではない
と気がついてしまうからだ。
むしろ既存の立憲民主党支持者は「私達の立憲民主党は終わった」と腹をくくるべきなのかもしれない。
すでに不穏な報道がいくつか出ている。日本テレビの「「こんなのノーサイドじゃない」立憲・野田新代表の“刷新感”体制に党内から不満の声」には不穏な一説がある。ただ「テレビだから大げさに表現しているのだろう」と思った。
サンクチュアリには約30人の議員が所属しているにもかかわらず、人事が発表・承認された両院議員総会に来ていた所属議員は少なく、拍手もまばらだった。その雰囲気を察してか、新人事の発表は新役員の挨拶もなくわずか5分ほどで終了し、あまりの短さに会場がどよめいたほどだ。
「こんなのノーサイドじゃない」立憲・野田新代表の“刷新感”体制に党内から不満の声
だがNHKも同じ様な声を拾っている。
これに対し、出席者からは「党内に有為な人材がたくさんいるのに、野田新代表は、主要な役職を自分の陣営から起用している」とか「応援しにくい内容の人事だ」など、疑問や不満の声が相次ぎました。一方で「党内融和を図るべきだ」という指摘も出ました。
立民 幹事長に小川淳也氏 政調会長に重徳和彦氏【詳しく】
立憲民主党は「場外活動」を得意にしている議員がたくさんいてXが主戦場になっている。今後排除された側が中から野田批判を繰り返すと考えられる。都知事選で「市民運動左派特有のワチャワチャ感」に嫌悪感を感じた人たちは、今後、場外乱闘と市民感覚の排除に心を痛めることになるのだろう。
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