今朝のNHKは少し異様だった。番組を中断して北朝鮮で地震があったことを伝えた。地震で特別番組になるはずはないのだが、そのような異議はでない。誰もが核実験を想起するからだ。その後、政府はそれを核実験だと認定した。
その上でNHKは「日本はアメリカと韓国と緊密に連携している」ということを強調しつつ、北朝鮮を非難しする広島・長崎の市民の反応を伝えた。
TwitterではNHKが騒いでいるのにタイムラインは静かだというコメントがあったが、これは間違っているだろう。政府は「盤石な日米同盟のもと」半島情勢はアンダーコントロールだという絵が作りたかったのだろう。
国内に動揺が広がれば、安倍政権が弱腰だという印象を与えかねない。これは彼らの支持母体の離反を招く。あくまでも日米同盟が盤石であり、中国と北朝鮮に対峙しているという印象が作りたいのではないだろうか。
CNN、BBC、ウォールストリートジャーナルなどは、日本のメディアと違って広島・長崎との比較を載せている。広島は15キロトン、長崎は21キロトンなのだそうだ。今回の実験は10キロトンと推定されるので、広島や長崎よりもやや小さいくらいの被害を与えることができる。もちろん実戦配備されている核兵器はそれ以上の威力を持っているのだが、北朝鮮のそれも地方都市を破滅させるには十分な威力を持っていると考えて良さそうだ。
北朝鮮の動きは予め観測されていたらしい。NHKは予め知っていて、事前には報道せず、発射後即座に特別番組を流したのだろう。曖昧な期間が続けば、噂が混乱を生じさせかねない。この意図は成功したといってよいだろう。「北朝鮮は困った国」くらいの印象しか残らなかった。
国連のサンクションは効果がなかった。と同時に日米韓の「緊密な連携」も効果がなかった。日本人は同調圧力に弱いので「各国が北朝鮮を非難している」といっているのだが、それもたいした意味はない。どこかの国が支援しているのは明らかだ。
今後の焦点は北朝鮮がミサイルと核を組み合わせることができるかにかかっているとのことである。2〜3年でアメリカ本土に到達可能なミサイルが開発できるだろうという識者もいるのだが、実際に組み合わせられるかどうかということは実はよくわかっていないようだ。
日本のネットではロイターの「核搭載ミサイル発射可能に」というヘッドラインが強調されているが、これは国営放送の言い分で、実際の能力がどれほどのものか実はよくわかっていない。実際にわかったとしても国民への情報開示はないだろう。
北朝鮮は核弾頭を開発し、移動可能なミサイルも持っている。現在の日本の防衛は「予め敵基地の動きが補足できて、発射までに準備ができる」ことが前提になっている。相手が「撃つぞ」と脅してから時間があり、その間に外交交渉をしつつ、防衛体制を取るというイメージだ。だから「突然ミサイルが飛んでくる」などという事態は想定されていない訳だし、どこから飛んでくるかわからないミサイルを予測不能な指導者が撃つというような事態は想定されていない。
安倍政権は、日米が緊密に連携すれば敵は自ずとひるむだろうという前提に立っている。ところがこの前提にはもはや説得力がない。北朝鮮はもう制御不可能だ。副首相が突然粛正されたり、外交官が亡命したりしている。何をしても不思議ではない。
日本には「国連中心主義は破綻した」という人は多いが、日米同盟があてにならないという人はいない。世界一強い国と組んでいるのだから大丈夫だという気持ちがあるのだろうし、実際にどうすべきかというアイディアもないのだろう。だが、実際はアメリカは何もできていない。中国と断絶しろなどという人もいるが、交渉ルートが完全になくなってしまう。
軍事評論家やアナリストという人たちも、国内の動揺を押さえつつ、日米同盟のプロモーターになっているので、言い分は信頼できないかもしれない。実は策がないかもしれないのだ。
日本はさまざまなオプションを話し合う時期に来ている。それは独自で核開発をするか、非核三原則を放棄してアメリカの核を持ち込むかという選択肢を含んでいる。オバマ大統領は韓国に核を持ちこんでもよいという約束をしたようだ。
NHKがやったように、広島・長崎の被害者という自己認識の裏で、アメリカの核の傘に頼ることはできない。
また、半島で内戦や核戦争が起れば日本への混乱が必至だ。国民を煽って軍事支出だけ増やして企業に利益を誘導した上で「何も起らない」などといえる時期はすぎているのではないだろうか。