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争点つぶし なぜ自民党総裁選はわかりにくいのか

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自民党の総裁選挙が始まった。各候補とも街に繰り出し「自分が総裁になれば素晴らしい日本が実現する」と宣言している。また、テレビ局まわりをして未来の日本について語っていた。これらの活動はこれまで通り自民党を支援する理由を探す高齢の有権者にはプラスに働くだろう。岸田政権を支援できない理由は「周りの評判が悪いから」だ。政権が変わればこの障壁も取り除かれる。

と同時に刷新感ではなく日本社会の刷新を求める有権者は失望するのだろうと感じる。アメリカの大統領選挙の争点は明確だが実は自民党の総裁選挙には明確なポジションの違いがないからだ。むしろ本当の争点になりそうな問題はあらかじめ潰されている。その一つの例が「夫婦別姓」問題だ。

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菅義偉氏は1年で降ろされたことを恨んでいると田崎史郎氏が解説する。会えば挨拶はするが食事をともにしたことはないそうだ。そんな菅氏は小泉支援を明確に打ち出し主流派への復帰を虎視眈々と狙っている。一方の麻生太郎氏は予備選をつぶしあいと考え本戦でまとめて「兵を動かす」ことで影響力を維持したい考えである。河野太郎陣営と上川陽子陣営との関わりが深い。

そんな菅氏が野田聖子陣営をブロックしたということは広く知られるようになった。伊藤惇夫氏によれば「菅バリア」だそうだ。だがその理由は語られていない。

野田聖子氏は夫婦別姓と女性の活躍を掲げる候補者になるはずだった。では、そんな野田氏が出て一番困るのは誰だろうか。高市早苗氏は困らない。彼女は夫婦別姓には反対の立場である。むしろ対立軸が作られ自分の政策が打ち出しやすくなる。そう考えると、野田氏が出て一番困るのは「改革派」の小泉進次郎氏なのだ。「対立軸は潰して取り込む」というのは古くからの伝統的な議会支配の手法である。

こう考えると野田氏が出馬できなかった理由が見えてくる。

小泉氏は子供の親になって母のありがたみが分かった。これからは国民一人ひとりが生きやすくなるような日本を作ると誓った。個人的には夫婦別姓には賛成だとも言っている。しかし、夫婦別姓に関しては「党議拘束はかけず速やかに結論を出す」と主張するにとどまる。

TBSはこのところ盛んに「夫婦別姓をブロックしているのは自民党のある支持母体だ」というキャンペーンを行っている。現在の自民党に夫婦別姓慎重派が多いのはこの「ある団体」に依存している議員が多いからである。報道特集のプレゼンテーションでは統一教会の関与も語られている。統一教会との関係が深かった安倍派はなくなったが影響力は排除できなかった。むしろ悪性新生物のように「手術をした結果、取り除けず体内に散らばった」状態だ。

TBSは30年間問題は解決しなかったと言っている。小泉氏は「自分は個人的には夫婦別姓賛成派である」としたうえで「この問題については議員によって意見が様々であろう」と主張する。ここから「30年かけた問題を小泉氏が解決するだろう」という推論と期待が生まれる。これが普通の考え方である。

だが、国会審議を行った結果として夫婦別姓問題が否決されると「30年かけてダラダラと議論してきたが結論は出た=もう議論しない」ということになりかねない。もう問題は解決した。だからそれは過去の問題だというわけである。

しかし、この結果を受けて30年間議論してきた人たちが諦めるだろうか。おそらく夫婦別姓推進派はますます「自民党は改革に後ろ向きの政党だ」と主張するようになるだろう。

確かに積極的夫婦別姓派は少数者かもしれない。だが、うっすらとした改革期待を抱いていた無党派の支援者たちは「小泉進次郎氏は改革派だと思っていたがどうやら違っていたようだ」と気がついてしまうことになる。

これは岸田総理が支持を失った理由に重なる。なんとなくみんなの話を聞いてくれそうな人が実はそうではなかったとわかったことが岸田内閣の支持離れにつながっている。

この問題について憶測も含めて考えると「菅義偉氏の恨み」が起点になっている。主流派復帰を狙う菅義偉氏は「選挙の顔を立てることができれば望みが達成できる」と気がついた。そこで必要なのが「有権者から見れば改革派に見えるが実は全く中身がない」総理・総裁候補である。むしろ「なんちゃって改革派」であることが露呈する様な障害はあらかじめ排除されている。

だが、菅義偉氏は「自分が主流派になったあと」のことは考えていないかもしれない。一部には小泉進次郎氏が総理大臣になれば菅義偉氏が院政を敷くのではないかと考える人がいる。仮に菅義偉氏が小泉進次郎政権成立後も議員として残ってくればそれもありえるかもしれない。が「これが最後の戦いだった」と満足して降りてしまう可能性もある。そうなると全く中身がない「なんちゃって改革派」が派閥がなくなり流動化した状態で取り残されることになる。

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