メキシコのロペスオブラドール大統領は任期の終わりに差し掛かりつつある。憲法改正が悲願だったがついにそれを実現した。裁判官を選挙で選ぶ憲法改正案が下院と上院で可決されたが、どうやら国民投票はないようでこれで憲法改正が成立しそうだ。野党支持者たちは国会に乱入し、アメリカ合衆国やカナダも批判している。
円の利上げが予想されていることもあり、円安・ペソ高を前提とするキャリー・トレードの条件も崩れつつある。
この司法改革によってメキシコの次期政権はますますポピュリズム色の強いものになる。このため市場ではメキシコ経済への信頼が失われつつあるそうだ。当然この傾向もペソ安につながるだろう。
ロペスオブラドール大統領の司法改革は一部市民の反発を買い議会乱入が起きている。上院で可決されるかは微妙だったそうだがすでに可決されたと伝わっている。
CNNは上院で承認すれば「改憲案が成立」する(つまり日本のような国民投票はなさそうだ)と書いており……
改憲案が成立した場合、裁判所の判事は全て選挙で選ばれることになる。そうなればメキシコは国際的な常識から外れた異端になると専門家は指摘している。
デモ隊が議会に乱入、司法改革の改憲案に抗議 メキシコ(CNN)
REUTERSは「上院が承認した」と書いているので
格付け会社ムーディーズは、メキシコの議会上院が11日に承認した司法制度改革について、同国の信用格付けに重大な影響を与える可能性があると指摘した。
メキシコ司法改革、信用格付けに重大な影響も=ムーディーズ(REUTERS)
これで「裁判官の民選」が決まったと読み取れる。
CNNはあくまでも「民主主義の基礎」である三権分立が崩されることを問題視しているがREUTERSは経済専門紙らしく「市場がメキシコを信頼しなくなる」ことを問題視している。
メキシコは長い間地方の政治家が地域のギャングたちを政治的に利用してきた。しかしギャングたちは麻薬の輸出などで力をつけてゆき政治家を凌駕している。この麻薬戦争によって多くの死者が出ているがメキシコ政府はそれをコントロールできていない。
そればかりかトランプ氏は「自分が大統領になればメキシコに踏み込んで麻薬戦争に勝利する」と息巻いている。
それでもメキシコ経済が破綻しなかったのはアメリカに近くアメリカよりも労働力が安いというメリットが大きかったからだろう。だが、トランプ氏は懲罰関税を利用してこれを是正すると言っている。アメリカにはインフレ圧力となるがメキシコの通貨価値も暴落するだろう。
ロペスオブラドール大統領の路線はすでにシェインバウム新大統領に引き継がれることがわかっている。民衆からの高い支持を背景に司法の抵抗力も弱め政治支配は盤石になったと考えられるのだが「国家統治」という意味では実効支配力を失いつつあるのかもしれない。
日銀は近々利上げするのではないかと言う予想もあり円を利用したキャリー・トレードのポジションにも巻き戻しが予想される。JETROは2024年8月初旬(日米で株価が暴落していた時期である)に「通貨ペソが2023年1月以来の最安値に、キャリートレード巻き戻しの影響も」と書いているが、今回の司法改革もメキシコ経済への信頼性を既存しペソの価値に影響を与えることになるのではないか。
当然、これはキャリー・トレード通貨としての円の需要減少につながるのだから円高の要因ということになる。メキシコの司法改革など日本にはあまり影響がなさそうだが、意外と密接につながっているのだなあと感じる。