YouTubeでイスラエルのデモのニュースを見かけた。「ちょっと前の映像」だろうと思ったのだが、実は数時間前のものだった。まだデモは収まっていないようだ。アルジャジーラによるとテルアビブで50万人+全土で25万人という規模だそうである。イスラエルの人口は東京都の人口よりも少ない程度なのでその大きさと国民の反発具合がわかる。
アルジャジーラが熱心にデモの様子を伝える一方でアメリカのメディアはこのニュースを積極的に伝えていない。無視するわけにもいかないのだろうが民主党の失敗につながる報道は極力避けたいのだろう。
イスラエル国民が反発を募らせているにも関わらずアメリカはネタニヤフ首相を制御できていない。ネタニヤフ首相は目的に合わせてアメリカメディアを使い分けている。国益と自分の政治的ポジションを守るためにはもはや「アメリカ大統領との強いパイプ」にばかり頼るわけには行かないのである。
アルジャジーラがイスラエルのデモの様子を熱心に報道している。アラブ寄りのメディアとしては「イスラエル国民も実は停戦を望んでいる」と強調したいのかもしれない。デモの怒りの矛先はネタニヤフ政権に向いていて、すぐさま停戦して人質解放交渉をすべきだと訴えている。
デモの背景にはこのデモを利用してネタニヤフ政権を打倒したい野党の存在もあるだろう。だが東京都よりも人口が少ない国で75万人の動員というのはかなりの数といえる。10月7日から始まったガザ戦争の落とし所が見えない中でイスラエルでも戦争疲れが起きていることがわかる。
この問題は実はアメリカの大統領選挙にも大きな影響を与える。
第一にバイデン政権が外交的に問題解決ができていないとわかる。これを受け継ぐ形になるハリス氏はもともと外交と経済が弱点とされており、戦争を終わらせることは難しいだろう。イスラエルの状況混乱は共和党の攻撃材料になる。
次に支援を巡る問題も出てくる。アメリカがイスラエルを支援するのは「イスラエル国家を存続させる」ためである。だが、実際にはイスラエル人の多くが戦争の終結を望んでいる。これでは「一体なにのために誰を支援するのか?」ということになってしまう。特に多様性を重要視する民主党支持者の中にはパレスチナ人に同情する人も多い。つまり、共和党よりも民主党にネガティブなインパクトが強い。
リベラル系のABCニュースを連日見ているとまずトランプ氏の乱暴な発言が伝えられ、その後でハリス氏の動向が伝える構成が増えている。かなりあからさまな偏向報道ともいえるしそれだけトランプ再選への焦りが強いともいえる。
まず、乱暴なトランプ氏の言動を伝える。次に中間層の味方であるハリス氏を対比している。ハリス氏が寄付を集めているというような報道も混ぜ込まれている。そのうえでチェイニー氏のような共和党の重鎮がハリス氏への投票を明言するなど「風はハリス氏に吹いている」という演出になっている。
CNNというリベラルメディアの討論がバイデン氏の大統領選撤退につながりトランプ氏の台頭を勢いづけたことはトラウマになっているのだろう。公正な報道機関という最低限の体裁は維持しつつも「これ以上の惨劇は見たくない」と言う気持ちが強いのかもしれない。
日本のメディアはどちらかと言えばリベラルなアメリカの報道を好む傾向がある。このためアメリカのニュースが伝えないイスラエルの状況はなかなか日本には伝わってこない。とはいえさすがにバイデン政権の意向をそのまま右から左に流すこともできなくなりつつある。
バイデン大統領が「最後の合意案であり9割がたゴール」と宣伝してきた合意案は発表延期が決まった。
バイデン大統領サイドの宣伝に対しネタニヤフ首相は保守系FOXニュースを使い「そんな事実はない」と反論していた。ネタニヤフ首相は英語に堪能であるばかりかメディアの使い分けもできてしまうのである。アクシオスを使いインサイダー情報を流しホワイトハウスの一方的な主張に飲み込まれないようにしつつ、CNNを使って民主党支持者たちに説明を氏FOXニュースを使って反論する。
ABCのディベートまでに成果が宣伝できないのであれば「むしろない方が良い」と考えられているのかもしれない。
民主党政権は英語を駆使してアメリカメディアを使い分けるネタニヤフ首相にいいようにあしらわれている。日本ではトランプ氏との個人的な関係構築ができる総理大臣が好ましいなどと言われることがあるがイスラエルの状況を見ていると「ちゃんちゃらおかしい」という気がする。メディアの特性を使い分けてここまでやらないと自国権益と政治家としてのポジションを守ることはできないのだ。
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