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生きたまま2つに引き裂かれる立憲民主党

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立憲民主党の記事はどっちみち読まれないためしばらく放置してきたが、かなり悲惨なことになっているようだ。どうやら「旧自民党系」と「旧社会党系」の対立になっている。そもそも立憲民主党の代表選挙には誰も関心がないがその対立点も国民生活とは何ら関係がない。むしろ55年体制の決着を今つけようとしていると言う時代錯誤的なものにとどまっている。

どうしていつもこうなってしまうのだろうという気はするが「立憲民主党だから仕方がない」のかもしれない。若手には危機意識が強いようだが、そもそも政策を打ち出す以前にスタート地点に立てないかもしれない。

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まず最初に見つけたのは「小沢一郎氏が野田佳彦氏を支援している」という記事だった。では野田佳彦氏はどんな政策を訴えているのかと思い記事を読んでみたのだが2つのことしか言っていない。

  • 自分は再び総理大臣を目指す
  • 共産党とは政権は組めない

では、対立候補である枝野幸男氏はどうだろう。更に悲惨だった。政策の話が全く出てこない。

  • 「人間中心の経済」で政権を取って自分が総理大臣になる

枝野氏は早くから出馬に意欲を見せており学生運動・社会党出身の赤松広隆氏に出馬の意向を示していた。引退している赤松氏が枝野氏を支援しているかどうかはよくわからないのだが今でも「サンクチュアリ」と呼ばれる社会党系の人たちに影響力があるものと見られている。

赤松氏と小沢一郎氏も一ヶ月ほど前に会談を行っており(結果的に何が話し合われたのかはよくわからないが)結果的に、赤松氏とサンクチュアリが推している枝野氏と、とにかく政権交代にこだわる小沢氏が推す野田佳彦氏という対立軸ができていることがわかる。

枝野氏の政策ははっきりとしていない。ただ「社会党的な左派リベラル」的な価値観を全面に打ち出し「人間中心の経済」などと言っている。

今立憲民主党で話し合われているのは55年体制的な価値観の違いを背景にした疑似政権交代ごっこだ。だそれは単なる政治的遺物でしかなく、令和の有権者には意味がわからないものだろう。

大きなテーマになっているのが共産党との立ち位置だ。蓮舫ショックがかなり尾を引いていることがわかる。蓮舫氏が共産党・市民団体系と手を組んだとき「無党派を集めなければ負けるだろう」と感じた。しかし、共産党・市民団体系は内向きな閉鎖空間を作り(部外者から見るとかなり「キモい」のだ)無党派を排除した。

立憲民主党は「市民の政党」を謳っている。だがその背景には社会党・共産党系に分かれた労働組合や市民運動の対立がありその実情は極めて内向きである。一般市民の参加を拒絶し毛色の違う左派どうしで憎しみ合っている。一般人にはわからないが群れの中にいる人達は臭いの違いを感じ取るのかもしれない。

おそらく立憲民主党では蓮舫ショックがトラウマになっている。しかしまともな総括はできないので「きっと共産党が悪いんだろう」ということにしてしまったようである。立憲民主党の中にも外にもまともなリベラル・左派論壇がないことは悲劇的である。

若手の危機感は非常に強いようだ。20名の推薦人はハードルが高いとしているがその声が聞き届けられることはなさそうだ。江田憲司、吉田晴美、泉健太氏が推薦人確保に苦労していて3人とも立候補できる可能性は低いと見られている。市民どころかインサイダーまで排除されかけている悲惨な状態だ。

自民党政権はアメリカが作り出した経済成長スキームにフリーライドしている政権だった。この言い方が気に入らないのであればグライダーのように滑空しているとかヨットのように帆に風を受けて滑っているでも構わない。要するに自力で動くことができない。立憲民主党は浮遊政党の自民党を批判で成り立っている。

つまり自民党が行き詰まってもその代わりになる政策を出せる政党はないということになる。立憲民主党が55年体制ごっこの代表戦を行うのは仕方のないことなのかもしれない。

このフリーライド(グライダー・ヨット)という無意味さが結実したのが岸田総理の意味不明の「新しい資本主義」だった。人に優しい経済を謳っていたが政権発足時から今に至るまで一体中身がなんだったのかが全くわからない。枝野氏の主張もそれに似ていて「人間中心の経済」という中身がよくわからないものにとどまっている。

自由民主党は「人に優しい」が行き詰まった結果、自己目的化した憲法改正に執着するようになっている。一方で立憲民主党は総括できなかった55年体制の総括が始まった。もともとイデオロギーが違う人達が集まった政党なのでまともに論争を行えば生きたまま2つに引き裂かれることになりかねない。

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