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パーテーションの中で4日間放置 アメリカの残酷な働き方事情

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テレビ朝日がウェルズ・ファーゴの職員がパーテーションの中で亡くなっていた事件を伝えている。アメリカの残酷な働き方事情がわかる。仲間が職場から消えても誰も気が付かないのだ。

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たまたまXで「机に伏したまま4日近く誰も気付かず 銀行の事務所で従業員が死亡」というテレビ朝日の記事を見つけた。NBCABCPeopleなどの記事を読んでみた。亡くなったのはアリゾナ州マリコパ郡にあるウェルズ・ファーゴ銀行の60歳の女性社員で役職などは不明だ。金曜日に出勤記録があったが火曜日まで発見されなかった。人々は誰も彼女の異変に気が付かなかったが「臭い」は感知していた。下水管が壊れていると思っていたそうだが、誰も「修理すべきだ」などとは言わなかったようだ。銀行側は3階の人通りの少ないところで働いていたと説明しているという。

仮に日本でこのような出来事が起きるとXなどで「職場の管理責任」が問われることになるだろう。経営者がでてきて謝罪をするがSNSでは「経営者は何をやっているんだ」「現場の上司は何をしているのか」などという批判が巻き起こるに違いない。

ところがアメリカではそうなっていないようなのだ。背景には日本とアメリカの職場環境の違いがある。

アメリカでは自分が自由にできるパーソナルスペースの大きさ=職場における待遇という考え方がある。役員は個室を割り当てられるがマネージャークラスだとキュービクルが与えられる。このパーテーションに囲われた空間をキュービクルといい外から見えなくなっていることが多い。なお日本ではキュービクルというと「大型の変圧装置」を指すようで検索してもパーテーションで区切られた空間についての記事が見つからない。

Redditにはこれについて扱ったスレッドがある。清掃作業員と警備員は何をやっていたのだろう?とする声がある一方で、自分も気が付かれないかもしれないという人もいた。そもそも「従業員どうしがお互いに存在確認をしない」ことに対する違和感を訴える人はいない。むしろ「異常を発見するのは清掃作業員や警備員の仕事」だが近年ではリモートワークが増えて経費削減のためにオフィスの維持にお金をかけなくなっているなどということが話し合われていた。

日本人は学校の掃除を自分たちで行う。だがアメリカ合衆国にはそのような習慣はない。学校が清掃作業員を雇って教室の掃除を行うのが一般的である。つまり職場や学校を自分たちの手でメンテナンスすると言う考え方が最初からないのだなと改めて気付かされる。

日本人がこのニュースを見ると「そんなことが有るはずはない」と感じるだろうが、アメリカ人は意外と「こういうこともあり得るんだろうな」と考えているのかもしれない。良い意味では「自由が極限まで尊重される理想的な個人主義の社会」だが、悪い言えば「ある日突然職場から仲間が消え去っても誰も気にもとめない社会なのだ」と考えられる。

日本人のSNSでの声高な批判を見るたびに「閉鎖的で重苦しい社会だな」と感じる。だが社会への関心が薄れる中でかろうじて残った社会への関心である。アメリカにはおそらくそのような考え方は残っていない。個人主義も良し悪しである。

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