首相の指示に従ったら携帯電話料金が値上がりしたという記事を見た。まず注目したのは日本人が集団圧力をかけて価格に働きかけようとしているという点だ。これは「アーティストのチケットが望む値段で手に入らないから政府で規制しろ」という動きが出た時に観察した。こうした社会主義的なソリューションは需要と供給を歪め最終的に市場を破壊するのだが、短期的にはコントロール可能なように見えるために選好されるのだろう。
結論から言うと携帯電話料金は劇的に下がるだろうと思う。価格というのは需要と供給で決まるからだ。
携帯電話料金が高いのは人々がメジャーキャリア3社のスマホを欲しがるからだ。これはジャニーズファンがSMAPと嵐のコンサートにばかり行きたがるのに似ている。
スマホはこれまで新規顧客導入のための政策価格での提供が行われていた。これが牽制状態となっていて誰も撤退できなかったというのが現状だったのだろう。首相が調停することでこの牽制状態がなくなり、本来の価格に戻ったのだ。
つまりこのことについて政府を恨むのはお門違いだ。みんな高い価格でもDocomo、au、ソフトバンクのスマホが欲しいのだ。キャリアはもはや政策価格で市場に売り込む必要はなくなったのに抜けられなかっただけだったのだ。
さて、ここで問題になるのは「なぜみんな高いキャリアを選びたがるのか」という点だ。これはスマホが顕示的な消費だからだろう。同じようなことはバブル時代の服にも見られた。こぞってブランドものの服を着ていたが、それは安い服を自由に組み合わせてそれなりに見せるという知恵がなかったからなのだ。今ではユニクロを着ている層までもがArmaniを着ていた異様な時代だった。
この消費傾向が改まるためには一世代もかかった。ブランドもの愛好者の下の世代はユニクロを受け入れたが、これは「ユニクロしか買えない」わけではない。ユニクロでもそこそこに見せるためのリテラシーを獲得したのだ。
現在のキャリアはブランドのようなものだ。すでに市場には格安スマホサービスがあるので、徐々にそちらに移行するものと思われる。いったん格安スマホへの移行が顕在化すると、その動きは不可逆的に進むだろう。日本のブランドが軒並み衰退していったことからも、それは容易に予想できる。