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ゾーリンゲン刺殺事件の実行犯はシリア難民

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ゾーリンゲンの刺殺事件で容疑者が捕まった。自首だったそうだが、容疑者は26歳のシリア人の難民だった。時事通信は先に捕まった少年らはキルギス系の可能性があると書いている。州当局とヨーロッパの報道機関はかなり抑制的に対応をしているが、おそらく今後ドイツでは難民に対する風当たりが強まるだろう。この件とは直接関係がないが旧東ドイツ地域では選挙も予定されていて移民排斥を訴えるAfDの台頭が予想されている。

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当初は「孤立した少年による愉快犯」だと感じた。だが、調べてみると事件報道がかなり錯綜しているということに気がついた。とにかく当局の発表が神経質でありマスコミの報道も抑制的だった。

まず15歳の容疑者が捕まったが「事前に事件を知っていた」だけだった。なぜ知っていただけで拘束されるのだろう?と感じてしまう。次に難民施設に捜索が入り一人が連行された。当然この人が実行犯かと思われたのだが、実は実行犯ではなかった。後ろ姿が映っていヨーロッパ系でないことは明らかだ。

最終的に実行犯は自首をしたという。26歳のシリア人で難民として入国したばかりだったそうだ。時事通信は先に捕まった少年はキルギス系の可能性があると書いている。

だが国籍に対する扱い方はメディアによって大きく異なっている。非ヨーロッパ系のアルジャジーラは26歳のシリア人だとはっきり書いている。ビルドとシュピーゲルを引用しているのでドイツではすでに報道されているものと見られる。

一方のBBCは26歳とは書いているがシリア人とは書いていない。注意して読むと記事の後半に「当局はシリア人と確認している」と控えめに付け加えている。まるでこれは事件の本質ではありませんと言いたげだ。

BBCの懸念はよく分かる。イギリスでは刺殺事件をきっかけに反移民暴動が起きていた。後に犯人はイギリス生まれであることがわかったが虚偽のニュースサイトに扇動された少年を含む多くの暴動犯が逮捕されている。軽率な報道によってドイツやイギリスで反移民暴動が起きかねない。

このニュースは2つの方向に「転ぶ」可能性がある。

ISが「パレスチナに対する復讐である」と犯行声明を出していることから「ドイツがイスラエルに加担するとドイツ国内の治安が悪化する」という世論が誘発されかねない。

一方で「難民を無条件に受け入れるのは危険だから難民はすべて国外に追い出すべき」と言う世論が誘発される可能性もある。

このニュースとは直接関係がないが時事通信は東ドイツ地域で9月に州議会選挙が行なわれると報じている。時事通信はナチス・ドイツを彷彿とさせるメッセージが公然と飛び交っていることを問題視しているのだが、移民排斥を訴えるAfDがさらに躍進する危険性も高く今回の事件よってドイツ全土に移民排斥の機運が高まる可能性も否定できない。

もちろん事件そのものはは非常にショッキングなものだ。650年の伝統があるゾーリンゲンの平和なお祭りが一転して悲劇に変わった。しかし、それにも増してヨーロッパの報道がイスラエル支援や移民排斥運動を巡ってかなり神経を尖らせていることがわかる。

一方の日本の報道にはお気楽そのものである。おそらく何ら悪気はないのだろうがシリア難民がパレスチナ問題の報復としてテロを起こしたと読み取れるような報道になっている。

日本人にとってはまだまだ対岸の火事ということだ。

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