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セブンアイホールディングスの買収騒動 日本企業はバーゲンセール状態

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アリマンタシオン・クシュ・タールという聞き慣れない名前の会社がセブンアイホールディングスを買収するらしい。そんなニュースが流れてきた。日本の魂であるコンビニを外国に売り渡すなと言う感情的な反応がある一方で「経営資産を活かすことができていない日本企業を欲しがる外国企業は多いだろう」と指摘する人もいる。いずれにせよ国家安全保障と言う観点では防衛が難しい。この問題を解決するためには普通科教育を充実させ世界に通用する経営者を育てなければならないが、安倍政権下で進んだ「大学改革」によりそれも難しくなっている。政治的に思い切った政策転換がなければ、今後もこのような動きは増えてゆくかもしれない。

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アリマンタシオン・クシュ・タールという聞き慣れない会社の名前がニュースに登場しアナウンサーたちは発音に苦労していた。フランス語で栄養(アリマンタシオン)と夜ふかし(クシュ・タール)という意味のようだがこれが正しいのかはよくわからない。なんとなくケベックの会社だからフランス語なんだろうなあなどということがわかるのみである。

コンビニは人々にとって身近な存在だけに「日本の魂を売り渡すな」という感情的な反応が見られる。FLASHがSNSの声を拾っている。

もちろん経済誌はもう少し冷静な分析をしている。東洋経済Bloombergの記事を読んでみた。日本の経営者は企業価値を成長させることができていない。最近は会議の投資家から注目されることも増えたがまだまだポテンシャルが過小評価されている。さらに日本政府は密かに方針を転換させていてM&Aが起こりやすくなっている。このため日本の企業にはバーゲンセール状態になっているところが多い。

東洋経済の記事は具体的に「買収されるかもしれない」企業を例示したうえで「社長の友達を経営陣に加えるしかなくのではないか」と情緒的に記事を着地させている。一方でBloombergは「経営者は真剣に企業価値の向上に務めるべきで「あったら良いな」ばかりを追求するような生ぬるいやり方ではグローバルスタンダードに太刀打ちできなくなるだろうと厳しめの評価だ。

日本はもともと終身雇用の下で正社員は経営幹部候補という時代が長かった。この従業員を巻き込んだ成長欲求が日本企業成長の秘密だったと言って良い。

この一体性は数十年の間に形骸化し経営と従業員の分離が進んでいる。経営参加意欲を失った従業員は企業を成長させるインセンティブを失いつつある。とりあえず今の仕事が確保されているなら適当に副業でもしながら私生活を優先させたいと言う人も増えているだろうし、非正規雇用と経営陣の板挟みになって苦労している中間管理職も増えているはずだ。極端なケースでは正社員採用の1年めから中間管理職状態になる人もいる。

行動経済成長期には企業派遣型のMBAブームもあったが海外で最先端の知識を手に入れても経営者に受け入れてもらえないと言う時代が長かった。

本来ならば、まずは普通科教育を充実させ、大学の4年間でアカデミックな語学と教養を身に着けたうえで、経営知識やITなどの専門教育を受けるというパスが作られるべきだった。

だが、安倍政権の頃からアカデミズムいじめがはじまり日本の大学は一部のエリート養成校を除いて専門学校化してもかまわないという極端な議論がまかり通っていた。

結果的に現場の士気は失われ、現場と経営層は意思疎通ができなくなり、さらに経営者が最新の知識を得られないといういびつな状態が生まれた。

ところが日本政府はこの頃から密かに「成長にキャッチアップできない企業は潰れても構わない」という方針に転じている。外国から「株価市場主義」のモノ言う株主が参入している。今回の買収提案ではこの日本政府の密かな方針転換が盛んに語られている。

今回、もう一つわかったことがある。それは日本のみならずアジアの文化が意外と欧米で評価されているという側面だ。BBCが次のように書いている。

日本のコンビニは訪問客の間でブームを起こしている。海外ではコンビニとは、主に急いでチョコレートやポテトチップスを買うための店だが、日本のセブンイレブンは、おにぎりやサンドイッチ、調理済みのパスタ、フライドチキンや肉まんなど、多くの食べ物を売る。

コンビニ大手「セブンイレブン」、なぜ買収の対象に?(BBC)

欧米では日本の「ANIME」が定着しその中には必ずコンビニが出てくる。欧米の観光客はANIME体験のために日本のコンビニを訪れるがそのサービスのあまりの充実ぶりに驚き「SNSで紹介しなくては」と言う気持ちになるのかもしれない。コンビニエンスストアはアメリカ発症のビジネスだが日本で改良され今ではアジア各地に広がっている。

例えばサブスクサービス(Amazon PrimeやNetflix)を見ているとアジア発信のリアリティ番組が人気を集めている。例えば韓国ドラマを通じて韓国料理に対する認識もアップデートされておりアジアの食品やサービスに対する認識は大きく代わっている。日本人経営者もこうした新しい価値に早く気がつくべきだが仲間内に閉じこもっている日本の経営者が見出すのは難しい。

日本では「コンビニが外資に買われるとアメリカのようなつまらないサービスにお逆戻りするのではないか」という予想があるが実は日本人のほうがコンビニの魅力に気がついていないのかもしれない。

さらにコンビニが郵便局に変わる生活インフラになっていることもよくわかった。このため経済安全保障の観点からコンビニ買収を議論すべきであるという議論も活発化しそうだ。アメリカ合衆国では単なる商店が生活インフラになるなどと考える人はいないが日本では当たり前に実現しており感謝して拝む人などいない。こうした新しいビジネスモデルはアフリカなど生活インフラがこれから発展する国でビジネスチャンスがあるかもしれない。

1日中コンビニを一回も見ないという日本人は殆どいないだろうが「コンビニはありがたいなあ」などと拝む人はいない。だが「コンビニが買収されるかもしれない」となった瞬間に様々なコンビニ議論が繰り広げられ我々の生活に欠かせない生活基盤になっていることがわかる。非常に興味深いことだ。

と同時に日本人がこれまで企業の成長に取り組んでこなかった現実も突きつけられることになった。少年野球から甲子園に行くパスがなければ大谷翔平を生み出すことはできない。分厚い選手層の中からごくたまに世界的に通用するスターがでてくる。だが、今の日本政府は少年野球を充実させることは考えず「どうしたら大谷翔平を人工的に増殖させることができるか」ばかりを議論している。

このアプローチでは日本の経営環境は砂漠化するばかりだろう。

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Comments

“セブンアイホールディングスの買収騒動 日本企業はバーゲンセール状態” への2件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    「日本の経営者は企業価値を成長させることができていない」という言葉を聞いて、堀江貴文氏がのニッポン放送買収計画を思い出しました。放送局のポテンシャルから考えてみたら、過小評価されていて株価が安かったことが、あの計画を実行させたんだろうなと思いました。
    ちなみに、彼は出身地である福岡県のラジオ局「CROSS FM」を買収し、会長に就任したようですね。プレジデントオンラインに記事が載っていました。ポテンシャルがあって伸びしろがあるのに、サラリーマン経営がそれを台無しにしているという風に主張しており、今回の件と共通しているように感じました。

    1. 日本人が相手だとあらゆる手段で潰しにかかるわけですが、相手が外国人の物言う株主だと何も言えなくなってしまうんですよね。