日経新聞が「アメリカの金融所得は日本の40倍」という記事を出している。非常に興味深いことにこの記事に対して心理的に反発する人たちが出てきた。金融リテラシがなくどこから手を付けていいかわからないのだろう。
日経新聞が「米金融所得が過去最高540兆円 日本の40倍、消費下支え」という記事を出している。SNSのXではグラフが出回っていて「日経新聞のグラフの扱い方はデタラメである」との批判が付いていた。日本人の情報リテラシはかなり落ちている。
まず何らかのニュースに接すると「感情的ないらだち」が先に立つ。ところがこれが合理化されることはなく「いらだち」を抱えたままであら捜しが始まる。今回はグラフの作り方が良くないと考える人がいてそれがあっという間に広まったのだろう。
もちろん日経新聞側にも意図はある。8月の初頭に株価が大きく崩れた。株は怖いと考える人が増えたにちがいない。そのため「株は怖くない」「もっと株式投資を」というキャンペーンが密かに始まっている。
例えばこの記事は「今回損をしたのは信用取引をしているギャンブラーだけでまともな投資家はバーゲンセールだと感じたようだ」と読み取れる内容になっている。
金融資産の日米格差も証券会社が株を売るためによく用いられる題材だ。調べただけでも野村ウェルスタイルとニッセイ基礎研究所の記事が見つかった。どちらも「日本人は安全志向が強すぎて資産を拡大するチャンスを失っている」というメッセージングになっている。日経新聞の今回の記事も「この手のキャンペーン」だと思えばすんなりと意図が理解できる。なにもグラフの作り方でケチを付けなくてもいいのにと感じる。
もちろんこうした一方的なキャンペーンには問題も多い。
現在世界はQT(金融引き締め)局面に入っている。過去のQTは景気後退を伴うことが多く世界の金融市場は疑心暗鬼に陥っている。23日はジャクソンホールで議長スピーチが行なわれまた日本では日銀総裁の国会招致が予定されている。ジャクソンホールはアメリカの経済事情であり、日銀総裁の発言も英語のファイナンスニュースの見出しに載って海外投資家がどう判断するかが重要である。
つまり日本人から見れば「いきなり降って湧いたような混乱」が起きてそれに巻き込まれる可能性が高い。日経新聞や地上波だけを見ていても投資に必要な情報がつかめない。証券会社は取引量さえ確保できればお客さんがトクをしようがソンをしようがさほど気にしない。
証券会社を「相場屋」と呼びギャンブル扱いしてきた高齢の投資家は極端な安全志向から脱却できていない。一方でFXが借金になるとは思わなかったというプレイヤーも増えている。副業感覚で結局ギャンブルに手を染めているのだが普段は気が付かないのだろう。
自分で情報を撮って穏健な意思決定をする人は増えず、意思決定をしようにも日本とは全く別のところで物語が展開している。報道に偽装した売り込み記事も実は多い。
このためこれから投資を勉強しようとしても「どこから手を付けていいかわからない」というような人が多いのではないかと考えられる。