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フラグ立ちまくりの小林鷹之氏が総裁選出馬宣言

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ポスト岸田レースの挙手一番手は49歳の若手小林鷹之氏だった。開成・東大・ハーバードのエリートコースに乗った、元ボート部主将の186cmのイケメン。専門は経済安全保障で有力者たちの覚えもめでたい。

この小林氏が次の総理大臣になればいいのにと本気でそう思った。自民党の崩壊が加速するだろう。

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小林さんにはいくつものフラグが立っている。1人でよく集めたなと言うほど手持ちカードが多く感心させられる。人々が特に気にするのがギャップだ。当初の期待が高いほ裏切られたときの落胆が大きい。当初の期待と実相がかけ離れている方がドラマとしてはおもしろいのだ。

第一に朝日新聞が政治と金の問題について「正直良くわからない」との発言を拾っている。一方で安倍派の復帰については前向きな発言を繰り返した。これが野党の攻撃材料になっている。そもそも大した反省などしていない安倍派議員の期待を集めている。小林さんのポジションは明らかだ。自分たちで決めたことは最低限実行すると言っている。だが自民党が自分たちで決めたのは「過去は調べません」に過ぎない。

次のフラグは統一教会カードだ。鈴木エイト氏の質問に「プライバシーがあるから調べようとは思わない」と回答している。この理屈に従えば選挙陣営に国家転覆を狙うテロリストが紛れ込んでいても「調べない」と主張していることになる。とても国家の安全保障など語る資格はない。

  • ―地元のことについて伺いたい。小林氏の有力な支援者の中に複数の統一教会の関係者、地区の幹部がいることを確認している。その認識があるかどうか。地元の有力な支援者に統一教会関係者が複数いる状態で、統一教会に対して厳しい対応を取れるのか。
  • 「厳しい対応を取る岸田総理の方針を私も堅持するので、そこはそういうことで受け止めていただきたい。私自身の後援会、それぞれの人が私人で、一人一人のプライバシーにおそらく関わる話。一人一人の思想信条に、あなたは何を信じていますかとか、一人一人聞くことは、やっぱりそこは限界があることは認識いただきたい」
<詳報>小林鷹之氏は何を語った? 裏金、旧統一教会、改憲、選択的夫婦別姓への見解は 自民総裁選出馬を表明(東京新聞)

この2つはなぜフラグになるのだろうか。

自民党の政策集団・選挙互助会としての派閥の形骸化は時間をかけて進んでいた。そしてその弊害は「すべてを個人の問題にして組織(派閥と政党)は責任を取らない」という形で自民党内に蔓延している。会社でいえば「営業成績を上げる社員は良い社員でそのための手法は問わない」ことになる。違法行為を通じて営業成績をあげても本部は責任を取らないのだから徐々に会社として信頼されなくなる。小林新社長候補は「私が社長になっても社員の管理はいたしません」と宣言している。社員たちはこの発言を歓迎するだろうがこれは崩壊に至る一歩である。

3番目のフラグは大蔵省出身者カードである。現役世代はおそらく「世代が近いから自分たちの痛みをわかってくれるだろう」と小林氏を支援するかもしれない。CMキャラクターを決めるときに「ユーザーに近いプロファイルの人を選ぶ」のは視聴者が属性を見て自動的に敵味方を決めると期待されているからである。だが小林さんは元財務官僚である。そして、東京新聞の記者応答を見る限り税や社会保障については何も語っていない。現役世代は勝手に「減税路線だろう」と思い込むだろうが結局は財務省の路線にしたがって財政再建に傾く可能性が高い。

最後のフラグは「見た目の演出」である。地元八千代市をジョギングしているところを撮影させた。この爽やかな演出が斎藤元彦兵庫県知事に似ている。小林さんは「目上の人たちにも好かれる人望」で知られているそうだ。仮に部下にも優しい人であれば特に問題にはならない。しかし仮に二面性があり「実は自分をよく見せるあまり部下に厳しい」人だった場合には行政が混乱する可能性がある。たがかジョギングだけで「ナルシシストだ」などと言うつもりはないが十分に資質はありそうだとの期待が高まる。

さて今回は報道よりも報道のあとのXでの反応のほうが面白かった。日本人はかなり不安耐性が低く「自民党のような確実な政党がなくなると困る」と考えている人たちが多いようだ。しかしながら岸田総理の政治姿勢はどうも頼りない。もともと彼はリベラル(保守派から見れば「弱腰でふにゃふにゃしている」の言い換えに過ぎない)であり頼りない。一方の小林さんは高学歴・大蔵省入省のエリートであり小泉進次郎氏よりも発言がしっかりしている。このことから「小林さんなら状況を変えてくれるのでは?」と信じ込みたがっているようだ。

このことから小林さんの欠点はまずは無視されることになるのではないかと思う。不安が強いぶんだけ刷新感があるなにかにしがみつきたい。だが、国民の多くは「どうせ総理大臣が変わっても状況は変わらないだろう」と見ている。新生自民党はこの冷ややかな視線の中でどう変わったのかを見せなければならない。意外とイメージでなんとかできるような問題ではなくなっているのだ。

共同通信社が17~19日に実施した全国緊急電話世論調査によると、岸田文雄首相(自民党総裁)の退陣が、派閥政治資金パーティー裏金事件からの「信頼回復のきっかけにはならない」との回答が78.0%に上った。

首相退陣も信頼回復せず、78% 総裁選は石破氏25%、世論調査(共同)

斎藤元彦知事の場合は知事が問題を起こしてから自民党と維新がざわつき始めた。特に維新のダメージは大きい。すでに共犯者扱いされており今後は兵庫県での躍進は見込めないかもしれない。期待が高かった分だけ落胆のインパクトも大きかった。

小林氏は「この人が総理大臣になったら最も面白いのになあ」という候補者でありしがみつき願望の強い既得権維持を希望する人たちの期待の星になっている。と同時に「これ以上過去の統一教会や政治と金の問題は扱いませんよ」と宣言しないと候補者として浮かび上がることができないと言う今の自民党の状態がもっともよく分かる候補者でもある。

メディアは「自民党は生まれ変わる」という小林氏の主張を流し続けている。しばらくはどんどん期待を煽るべきだろう。

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