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エムポックス(旧サル痘)の2回目の流行が始まる

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国連が8月14日に2022年依頼となるエムポックスの緊急事態宣言を出した。聞き慣れない病気だがもともとはサル痘(モンキーポックス)と呼ばれていた。コンゴ民主共和国(コンゴ・キンシャサ)で流行が始まり国連が緊急事態宣言を出していたが、スウェーデンやフィリピンなどで確認されたことでニュースの取り扱いが増えている。どんな病気で誰が心配する必要があるのかなどを簡単にまとめることにした。

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エムポックスは天然痘と同じ仲間のウィルスだ。厚生労働省は次のようにまとめている。天然痘よりも広がりにくくセックスなどの濃厚接触が必要であるとされる。つまり「心当たりがない」人が不必要に騒ぐ必要はない。これが新型コロナなどと違っている点だ。

エムポックスウイルスは、オルソポックスウイルス属に分類されるDNAウイルスです。オルソポックスウイルス属にはそのほかに天然痘(痘そう)ウイルスなどが含まれますが、エムポックスウイルスと天然痘ウイルスは別のウイルスです。

エムポックスに関するQ&A(厚生労働省)

以前にも欧米で拡散したことがあり問題になっていた。

忽那医師はグレード1と呼ばれるタイプだと書いている。忽那さんによると一般人が感染する可能性は高くないそうだが「性的に活発な男性」の間で広がる可能性があるとされている。そしてグレード1は依然のタイプよりも毒性が強い。

忽那医師の説明を読むと同性愛者の間で広る病気なのかというイメージを持つ。

Wikipediaには前回のエムポックス流行に起因する同性愛者差別をまとめたエントリーがあった。また読売新聞にも同性愛者で「身に覚えがある人」にワクチンを接種することを決めたと言う記事が残っていた。サルしかかからないウィルスに感染するという差別的なイメージが付く可能性がもあり名前がエムポックスに変更されたと記憶している。

REUTERSの解明に関する記事を読むと改名理由は2つだった。

人をサル扱いする比喩は人種差別の文脈でよく用いられる。「サルの病気」に人間が罹患するというイメージが付くと同性愛者に対する偏見が助長されかねない。

WHOには既存の疾病に適切な新たな名称を付ける責務と権限がある。WHOの技術委員会が密室で名称選定することがほとんどだが、WHOは今回、選定過程を公開することを決めた。提案数は最初は少なかったが、今や研究者や現場の医師のほか、現状でサル痘感染が男性の同性愛者に多いとされることを背景に、同性愛の権利擁護者などから多く寄せられている。

WHOにサル痘の新名称提案続々、「烙印押す名前」にはしないと言明

また実際にはサルだけの病気ではないのに病名により誤解が生じかねない。科学的な理由に加え風評被害の拡大にも懸念があったことになる。

サル痘の名称を巡ってはWHOに対し、サルが自然界の宿主ではないとして名称が誤解を招くことが批判され、名称変更の圧力が高まっている。有力科学者のグループは今年6月、名称は「中立で、差別的でなく、烙印を押すようものであってもならない」とし、名称が差別に使われることに懸念を表明する意見書を出した。

WHOにサル痘の新名称提案続々、「烙印押す名前」にはしないと言明

ところがNHKは「今回は免疫の弱い子どもたちの間でも蔓延しているようだ」と指摘している。前回の印象とは違う広がり方をする可能性も否定はできないということになる。

アジアではフィリピンで感染者が確認されているが、バックグラウンドは不明である。

エムポックスの流行を抑えるためには蔓延地域にワクチンを重点配布する必要がある。しかしコンゴ民主共和国は資金が不足している上に衛生基盤も貧弱だ。このため当地のワクチンの配布は思うように進んでこなかった。

このBloombergの記事を読むとなぜ先進国がコンゴ民主共和国にワクチンを差し出さないのかとの疑問が生じる。自分たちの国で流行が起きたときのために備蓄を崩したくないと考える傾向にあるのかもしれない。だが「備えがあるのになぜ出さない?」と批判されることを恐れて自国ファーストの本音はなかなか聞こえてこない。

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