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菅義偉さん曰く「自民党崩壊の危機はとりあえず逃れた」が、本当の危機はこれから

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岸田総理の総裁選撤退を受けて菅義偉前総理大臣が神奈川新聞に対して「自民党崩壊の危機はとりあえず逃れた」と語ったそうだ。だが、おそらく崩壊の危機は今後訪れるものと思われる。内輪の論理で派閥連合型の総理大臣を選ぶと自民党は総選挙に負けるだろう。だが、思い切ってリーダーに権限を委譲するような体制は作れそうにない。言い換えるならば小泉純一郎氏のような型破りなリーダーが出てきにくい体質になってしまっているのである。

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改めて岸田総理の不人気の理由について考えてみたい。

あえて1つだけを挙げるとするならばそれは「スルーされる怒りといらだち」だろう。国民は負担軽減と現状維持を求めている。ジワジワと沈むのは構わないが負担が増えたり今までの生活を変えるのは嫌なのだ。

岸田内閣で最初に聞こえてきたのは防衛増税の負担増のニュースだった。また、マイナンバーカードも国民の不満や不安について顧みられることはなく押し付けられたと言う苦い印象がある。特に選挙で重要な中高齢者は岸田政権の「変化」に困惑している。

岸田総理は「丁寧な説明」という。だが国民からのフィードバックを無視して主張を繰り返すことを岸田内閣は「丁寧な説明」と言っている。無視される不快感ほど人をイラつかせるものはない。

ではなぜ岸田総理はなぜ国民の期待に応えられなかったのか。それは岸田政権が安倍派、麻生派、茂木派(旧竹下派)、岸田派に支えられた連合政権だったからだ。調整の結果柔軟性は失われており国民の期待に応える余地がなかった。

今世論調査をやると国民の一番人気は石破茂氏と小泉進次郎氏である。この2名の何が評価されているのかは分析しない。だが、国民を意識するならば、最低この二人は出馬すべきだろう。だが、石破茂氏は推薦人20名を集めるのに苦労しているようだ。石破氏は党内バランスに配慮せず「やりたいことをやりたい」総理大臣候補だ。議員たちは石破氏がリーダーになると自分たちの意見が尊重されなくなると恐れている可能性がある。石破氏が出られず議員たちの利益を最大限に活かせる総裁が選ばれる可能性が高い。

派閥を意識した動きは加速している。林芳正官房長官は岸田派メンバーと会合を開いた。二階派だった小林鷹之氏は安倍派議員の復権を訴えている。支持基盤が崩壊したため安倍派の若手からの支持を期待しているのかもしれないが小林氏の「若い改革者」というイメージは損なわれる。

茂木敏充幹事長は14日に麻生太郎氏とステーキ会食を行っている。茂木氏は何故か国民に全く人気がない。おそらく茂木氏は麻生氏に近づきすぎた。守旧派の抵抗勢力とみなされている。

今の自民党は議員同士の互助会的な組織になっている。このためトップダウン型のリーダーを嫌がり党内利害調整型のリーダーを選ぶ傾向にある。変人と若手が台頭しにくい構造がある。

田崎史郎氏によると管さんは石破さんを推すつもりはないようだ。だがあえてここで石破茂氏を推すと「石破さんは管派」になる。菅氏が誰か特定の候補を推すと石破茂氏を嫌っている麻生太郎氏は無理にでも対立候補を立てようとするだろう。結果的に「長老同士の対立」構図ができてしまう。

菅義偉氏は「脱派閥で出たい人が総裁選に出ればいい」という態度を貫抜く可能性が高い。神奈川新聞はこう書いている。

現職の撤退表明で総裁選は候補乱立の気配が漂うが「政策や志を同じくする者同士はまとまったほうが良い」と調整を示唆。その一方で「派閥がなくなって出たい人が自由にチャレンジできる環境が望ましい」とも付言した。

「自民党崩壊危機はとりあえず逃れた」 菅氏、首相の総裁選不出馬受け心境

すると皮肉なことに「何をやるかわからない」石破氏に支援者が集まらない可能性がある。長老のエンドースメントなしに「思い切ったチャレンジャー」が出てきにくい。エントリーを分けて分析するが茂木氏も実は実務派のネゴシエータという知られていない一面があるが、どうしても「麻生さんに支援された」と紹介されることのほうが多い。

自分たちの利益を最大化したい小粒の議員と前に出たがる長老と言う組み合わせを背景にしてどうしても国民の要請が後回しにされてしまうのである。ここに岸田総理(表向きは後継者を指名していないが裏ではどう動くかわからない)「国民の意思が無視されて長老主導で新しい総理大臣が作られた」ということになってしまう。

内輪の論理で総理大臣が決まることは自民党政権では珍しくない。その典型が談合で決まった森喜朗氏である。森氏はその後、失言を繰り返し短命で終わった。,森氏は内輪の調整は得意だったが国民とのコミュニケーションが全く取れない残念な総理大臣だった。結局この調整型の弊害は東京オリンピックにまで悪影響を与えている。

森内閣で失敗した自民党は、結果的に「変人」小泉純一郎総理大臣の思い切った改革姿勢に救われる。だが、現在の自民党には自民党の破壊を訴えてでも前に進もうとするリーダーがおらず小泉さんのような変人はそもそも好まれない。

すると、菅氏が危惧するように今回の総裁選が終わりの始まりになってしまう可能性があるのだ。

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