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ウクライナは何をしたいのか 戸惑うCNNとザポリージャ原発の火災

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CNNが「ロシア領侵入、ウクライナ軍上層部が賭けに出た理由」という記事を書いている。いよいよゼレンスキー大統領の意図がわかったのかと意気込んで読んでみたのだが最初の数行でずっこけた。日本のスポーツ紙ならクリック目当てのタイトルを付けても罪悪感を感じたりはしないだろう。だが、CNNの記者はかなり気がとがめたらしい。クリック目当てのタイトルで実際の意図はわかっていないと告白している。

地域情勢が不透明化しているということがわかる。CNNはバイデン陣営・ハリス陣営にも詳しい。仮にアメリカがこの自体に対してなにか説明していればそう書いているはずだ。ここから、この一連の動きをアメリカがコントロールしていないことがわかる。ついに防衛からの逸脱が始まったのだ。

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乏しい軍事資源をロシアへの越境攻撃に大量投入するというウクライナの決断(ニュースの見出しを狙ったものだが、これまでのところ戦略上の目的は不明だ)は、ウクライナにとって窮余の策とも、国民を鼓舞する動きとも取れる。おそらく、この戦争の新たな局面を予告しているのだろう。

ロシア領侵入、ウクライナ軍上層部が賭けに出た理由

コラムはまず正規軍のロシア侵攻を賭けであるとしている。そしてこの件をモニターしている人たちから公然と批判が上がっていたと書く。さらにシルスキー司令官の決定を「ソ連式の古びた考え方」と断定し欧米主導の現代的な防衛戦争からの逸脱であると批判している。

CNNはウクライナのこの無謀な賭けが欧米の支援を難しいものにする可能性については触れている。一方で民主党よりのメディアらしくアメリカ合衆国(特にバイデン政権)のあやふやな支援策とトランプ大統領の可能性がウクライナを心理的に追い詰めている可能性については全く触れていない。また欧米の支援がウクライナに終わりの見えない「防衛」を強いているという現実も無視している。

CNNはとにかく、ウクライナはアメリカとNATOの指導にしたがって「正しい」戦争を継続すべきでありソ連式の肉弾戦に突入すべきではないとの立場を貫いている。

ゼレンスキー大統領が不確実性を増すことで交渉を有利に進めようとしているのは間違いがない。気になるのはその狙いである。欧米メディアはロシアーウクライナーヨーロッパを結ぶ天然ガスパイプラインのハブであるスジャの掌握の持つ戦略的なインパクトを気にしているようだ。

皮肉なことに今回の件でプーチン大統領の正当性に意味が生まれてしまう。プーチン大統領の主張に従うとキエフ当局(ウクライナのこと)はロシアの転覆を狙うテロリストである。そのテロリストがついに本性を表してロシアに攻めてきたと主張できる。クルスクからは民間人避難も始まっている。

ウクライナが不確実性を増そうとしている中で起きたのがザポリージャ(ザポロジェ)原発の火災だった。これまではロシアが一方的に不確実性を高めておりウクライナはそれを防衛しているという図式の理解が一般的だった。だが、今回のクルスク侵攻でその図式が成り立たなくなりつつある。つまりお互いが事態をエスカレーションさせることで国際社会の注目を集めようとしているということになる。「幸いなことに」火災は沈下したようだが、そもそも注目を集めようと火を付けてみせた可能性は誰にも否定できない。ロシアは「ヨーロッパがゼレンスキー大統領を支援し続ければ環境破壊も起こりかねない」と示すことができる。

バイデン政権が終わりに近づく中、ロシア・ウクライナ双方に事態をエスカレートさせる動機が生まれている。ウクライナはイスラエルがやっているように事態をエスカレートさせてアメリカの支援を確かなものにしたい。またロシアもこの戦争がヨーロッパに直接悪影響を与えると示したい。

これはオーストリアなどロシアの天然ガスに依存する国にとっての経済危機であるばかりでなく第二のチェルノブイリ事故を通じてヨーロッパの環境に打撃を与えることになる。

CNNはバイデン政権がウクライナをコントロールできなくなっているのではないかという可能性も想起しているのだろう。だが、大統領選挙を控える中そのようなことは書けない。しかし彼らが直視しようがしまいが事態は確実に悪化しつつあり結果的に欧米はこの戦争に更に深くコミットすることになるだろう。

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