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イスラエルがまたしても「もうじきイランが攻めてくる」と主張

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独自報道を連発しているアクシオスがまたまた「8月15日を前にイランが攻めてくるかもしれない」と報道し、これが盛んに引用報道されている。内容を見るとイスラエルにとって都合がいい内容になっていて結果的にイスラエルはアメリカの支援獲得に成功した。バイデン政権はどんなに批判を展開しようが最終的にイスラエル支援を通じて国内の有権者にアピールしなければならないということがよくわかっているのである。一方のイランは意外なことに外交を通じて周囲の状況を固めつつある。

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イランが8月15日を待たずにイスラエルに攻めてくると主張したのはガラント国防大臣だ。オースティン国防長官に支援を直訴した。この報道が出るとアメリカ合衆国は潜水艦空母を差し向けた。すわ戦争という事になりイスラエルの通貨と株価が下落している。

だが、この報道どおりに戦争が起きるかどうかはまだわからない。アクシオスもさすがに断定はせずイランの内部にも異なる意見があると紹介している。キーマンは新しく大統領に就任した「穏健派」のペゼシュキアン大統領である。複数の国の大使経験があり外交を通じてアメリカ・イスラエルを国際的に包囲しようとしている。中国の王毅外務大臣ドイツのショルツ首相と会談したとする記事がそれぞれ見つかった。中国はイランの主権を尊重し安全防衛政策を支持すると伝達した。ドイツはペゼシュキアン大統領に思いとどまるように説得したそうだ。

バゲリ外務大臣代行も「合法的に断固とした」手段でイスラエルを罰するとしている。必ずしも軍事的な手段を排除するものではないのだろうし、イランにも主戦論者はいるのだろうが、国際社会できちんと状況を作ってから行動しようとしていることがわかる。

アメリカが作ってきた「絶対悪としてのイラン」の姿はそこには見られない。

そもそも8月15日前のイランの攻撃にはどのような意味があるのだろうか。

実はアメリカが主導する停戦交渉の再開期限になっている。おそらくネタニヤフ首相はバイデン大統領の意向に従った和平提案に乗るつもりはない。パレスチナ国家との併存が前提になっており受け入れられないからだ。トランプ大統領が登場するのをダラダラと待ちながら有利な状況でガザを攻撃し続けたい。だが、自分たちから断りをいれるのは避けたい。そこで「イランが攻撃を仕掛けてくる」からそれどころではないといいたいのだろう。

ハマスの側も今回の和平提案に乗るつもりはないようだ。以前にバイデン大統領が和平提案を行っており「あれは今どうなっているんですか?」との立場だ。バイデン大統領はネタニヤフ首相の説得に失敗している。そこでその約束を反故にし新しい約束を取り付けたい。ハマスはそもそも交渉の責任者をイスラエルに殺されている上に一方的な譲歩になる新和平交渉に乗っても全く意味がない。ハマスにはハマスなりの理屈がある。

アクシオスは「バイデン政権はレガシーを作ることができるか?」との論調で今回の記事を書いている。このあたりは意外としたたかだ。つまり単にトランプ政権の誕生を待つだけでなく民主党の支持者が多く読んでいるであろうリベラル系の媒体に期待をもたせる書き方になっている。

だが実際にはバイデン大統領が主導する和平交渉は頓挫している。さらにイランの新しい大統領の戦略も冷静でしたたかなものでありアメリカ・イスラエル包囲網を作るための努力をしている。

日本のメディアはCNN、ニューヨーク・タイムズ、ABCなどリベラルな媒体からアメリカのストーリーに沿った報道を行うことが多い。アメリカ的な史観でみるとイランは絶対悪であり悪魔のような存在なのだからいつ奇襲攻撃を仕掛けてきてもおかしくないような印象を持つ。

だが実際に丹念に記事を拾うと必ずしもそのような状況にはなっていない。そればかりかアメリカ側が外交的に押し込まれていると言う傾向も見て取れるのだ。

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