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早くも見えた限界 ハリス副大統領が「24時間交渉しています」と主張 

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アメリカ合衆国の政治について見ている。一連の投稿でトランプ氏の支持者の一部がトランプ氏をプロキシーにしてアメリカの民主主義を停止させようとしていると書いた。

こう書くと民主党にぜひ頑張ってもらわなければと言う気持ちになる。では民主党のハリス副大統領にはどの程度期待して良いものなのだろうか。

パレスチナ問題の解決について聞かれたハリス副大統領が「自分たちも一生懸命やっているのだ」と反論した。だが一生懸命にやっても結果が出なければ何にもならない。単にハリス氏もきれいごとばかりなのかと失望されて終わりになってしまう可能性がある。

トランプ氏との討論会が3回予定されているようだが、仮に彼女が「一生懸命やっています」と防衛に終止すればトランプ氏の勝ちになってしまうだろう。

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アメリカでは「トランプ氏を独裁者」にという主張が見られるようになった。トランプ支持者といってもその内容は多種多様だ。新右翼と呼ばれる人たちはトランプ氏は利用できる自分つだと考えている。一方でオバマ政権下の「きれいごと」に失望しトランプ支持に向かった中間層もいる。彼らはどちらかと言えば扇動される側かもしれない。

対する民主党は「正しいアメリカ=民主主義」を守れと主張。その代表格が地方検事出身のハリス副大統領だ。極端な主張を展開するちょっとヘンな(weired)トランプ陣営からアメリカの正義を守ると言っている。

彼女は検事出身だ。検事には依って立つ正解が必要である。ではハリス氏は正解のない問題にどう対応するのか。このあたりは未知数である。

民主党のラリーにはパレスチナ支持の左派も参加している。彼らが騒ぎ出しハリス副大統領の演説が中断された。ハリス氏はこれをうけて24時間一生懸命に外交努力をしていますと訴えたそうだ。24時間努力しても結果的に成果が上がらなければなんの意味もないが民主党としては頑張っていますとしか言いようがない。

米民主党の大統領候補、ハリス副大統領が9日にアリゾナ州グレンデールで開催した選挙集会で、パレスチナ支持の抗議者が演説を遮る場面があった。ハリス氏はバイデン大統領と「24時間体制」でイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意の仲介に当たっていることを明らかにし、「今こそ人質合意を実現すべき時だ」と訴えた。

ハリス氏、「今こそ」ガザ停戦の時 抗議で演説中断後に発言

騒ぎがこの程度で収まったのはこれが身内の集会だからだ。トランプ氏との演説で同じような主張を繰り返せればおそらく視聴者たちはハリス氏を見限るだろう。

バイデン外交は行き詰まりを見せている。おそらくそれほど奇抜な手は思いつかなかったのだろう。

今日のニュースでもイスラエルがガザ地区の学校を攻撃し90人から100人の市民が犠牲になっていると言う。バイデン大統領はかなり強い口調でネタニヤフ首相の戦争を止めるように主張している。だがイスラエル側は逆に「バイデン大統領が乱暴な口調でイスラエルに命令をしている」とリークしている。苛立ちを募らせる感情的な老人という風評を作ろうとしているのかもしれないとさえ思える。

ウクライナでも懸念すべき動きが出てきた。ウクライナがロシアに越境しロシア領を占拠している。プーチン大統領はこれまでロシア領の占拠を許したことはなく政権への打撃になりそうである。だが、これまでの例を見ると市民蜂起に直結するとは考えにくくロシア側が強硬な姿勢に転じる可能性もある。

ホワイト・ハウスは関与を否定しているが、アメリカの武器が使われている。バイデン政権が容認したかあるいは制限を無視されていると見たほうが良さそうだが、今はどちらなのかはわからない。

ウクライナ側にも事情はある。トランプ政権では頭越しに領土交渉が始まりかねない。このため「何をしでかすかわからない」と不確実性を増したうえで領土交渉を行なわなければならない。読売新聞は「領土交渉の材料を作ろうしている」のではないかと書いているが、実際には「何を狙っているかわからない」という状況を作り出すことのほうが重要である。不確実性が高いほうが高症状は遊離だからだ。

そもそもプーチン大統領が突然ウクライナを奇襲したもの「不確実性」を高める動きだろう。またトランプ候補を支持する人たちも「きれいごと」にうんざりしていてまともなやり方では自分たちの既得権益を守れないと考えている。

このように民主党政権が掲げる「民主主義と言う正しさの希求」は各地で追い詰められた人たちが不確実な状況を作り出す動機を与えている。

アメリカが強かった時代には「民主主義は素晴らしい」と言っていればよかった。正義の傘の下でそれぞれが自由に私利を追求できるのがアメリカ合衆国の良いところだ。だが相対的にアメリカ合衆国の地位が低下するとこれが単なる空虚なきれいごとに聞こえかねない。

ハリス氏はプロンプターを見ないと発言ができないと疑われており、特に経済と外交・安全保障が懸念材料とされている。オバマ大統領にも似たような傾向があったが少なくとも彼は演説を暗記していた。

民主主義と言う大義名分が失われたアメリカにおいて有効な戦術もまた不確実性戦略ということになる。ニクソン大統領時代の「狂人戦略」のようなものだ。トランプ氏は何をしでかすかわからないと不確実性を高めつつ国益を追求すると言うやり方を好む。これは外交安全保障だけでなく内政でも多用される。

その意味ではハリス・トランプは1つの現象の両極だ。東西冷戦の二極化から多極化を経た無極化の時代を象徴している。安全保障の無極化は経済の安定性も損なう。この間ずっと観察しているようにトランプ政権では時系列的にドルの価値が乱高下し「ボラティリティの高い状態」が作られるものと予想されている。

不確実性を嫌い日米同盟とG7主導の自由主義経済の恩恵に心理的に頼ってきた日本にとっては難しい状況が生まれつつある。我々日本人は親米・反米を越えてこの状況に心の準備を始めるべきタイミングに来ている。

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