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君主制復活を目指すアメリカの新右翼をTBSが紹介

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BS-TBSに「新報道1930」という番組がある。地上波では扱わないような良くも悪くもエッジが効いた内容を多く扱っていてYouTubeでも見ることができる。この番組が「アメリカの新右翼は君主制を目指している」という主張を扱っている。ローマ共和国がローマ帝国になったようにアメリカも議会に縛られない強いリーダーが必要だというのだ。

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番組はアメリカの大統領選挙全般について扱ったもの。まずは民主党の副大統領候補になったウォルズ氏について「普通のおじさん」と紹介している。その後に「共和党の中に君主制を目指す新右翼と呼ばれる人がいる」との主張を紹介していた。

解説者は日本のアメリカ学会の重鎮たちだ。このため「これはほぼ陰謀論だ」と解説する。問題は「数年前ならメインストリームで取り上げられることがなかった陰謀論がメインストリーム化しつつある」という点にある。解説者たちはほぼ陰謀論とはしつつもだからといって無視して良い動きとは見ていない。このあたりのニュアンスはぜひ番組を見ていただきたい。

民主党がアメリカを破壊しようとしていると考える人達がいる。民主党は「多様性」と言っているが、一部の共和党員はこれを伝統的なアメリカの破壊であると考える。このため一部の州では聖書教育が復活し「聖書の教えこそがアメリカの法治主義の原点だ」と主張する人たちがでてきた。パリオリンピックのオープニングセレモニーに反発したのも彼らである。自分たちの故地であるヨーロッパでキリスト教離れが起きているのが許せなかったのだろう。

トランプ氏もおそらく日々彼らの主張を聞かされているのではないかと思う。就任一日目は独裁者になると宣言している。また、キリスト教徒の集会では今回選挙で投票すればもう選挙にいかなくて言いと主張しその後で慌てて「今後4年は」などと言い換えている。バンス副大統領候補もトランプ氏は最後の大統領になるという趣旨の発言を行っている。独裁をほのめかしつつ様子を見ている(サウンディングしている)と言った感じなのだろう。

では新右翼たちは本気で「トランプ皇帝」を目指しているのか。どうやらそうではないようだ。

新右翼はまともなやり方では多様性推進(彼らから見ればアメリカの破壊)を止められない。しかし民主主義侵攻が強いアメリカではまともな政治リーダーのもとで強いリーダーシップが作れない。そこで破壊神トランプ氏をプロキシー(表向きの顔)として利用し、その裏で自分たちの政策を実現しようとしている。そしてその後継者としてバンス氏をトランプ氏に売り込んでいる。トランプ陣営はバンス氏をトランプ氏の後継者として宣伝している。

バンス氏は最近までハイテク業界で働いており強い資金源を持っているとされる。トランプ氏は独裁移行のための道具に過ぎない。また皇帝と言っても世襲の皇帝ではない。ローマ帝国のような民選に頼らない選挙皇帝のような存在だ。

最高裁判所判事はすでに保守派が主流になっている。だが議会から民主党勢力を排除するのは難しい。そこで大統領に巨大な権限を集めて独裁化したい。

さらにワシントンDCの人材を保守で埋め尽くすという計画も持っている。つまり、司法・立法・行政を掌握しようとしているのだ。

ヘリテージ財団(特に極端な団体というわけではなくアメリカの国益に沿って共和党の政策に影響を与えてきた)などが2年程度の時間をかけて保守人材を人選しリスト化しているという点についても紹介されていた。これは陰謀論ではなくヘリテージ財団がきちんと主張している。ただしトランプ氏は表向きはこの提案から距離をおいている。

大統領がワシントンDCの人材を選定すると権限移行にはかなりの時間がかかる。そこであらかじめ人選を済ませておこうと言う計画でプロジェクト2025と言われている。

このプレゼンテーションは「そもそも民主主義の伝統が根付いたこのような極端な思想がはびこっているのか」については分析していない。背景には民主党的な清潔さの裏にある私利私欲の追求や白人中心の国家が失われるという人口動態の変化など様々な要因があるのだろう。

アメリカ合衆国は民主主義の守護者として第二次世界大戦後の世界秩序を牽引してきた。しかしながらその民主主義への信頼が(おそらくは様々な理由で)崩壊しつつある。日米同盟に頼りたい日本人はこの傾向を極小評価するだろうが、実際のアメリカ政治は重要な転換点にある。

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