一部で囁かれていたFRBの緊急利下げが行われないことがわかった。前回までの緊急利下げは金融システム自身の不安定化・テロ・新型コロナ禍など原因になっているので今回はそうではなかったという判断なのだろう。逆に慌てて利下げしてしまうと「やはりFRBはハードランディングを予想しているのだ」と言われかねない。このため恐る恐るではあるが、徐々に資金がハイテク株に戻り始めている。
Reutersによると緊急利下げは30年で8回起こっている。いずれも株だけでなく金融システム全体に大きなインパクトを与えた。ところが今回の株安はアメリカの雇用統計の変調に日銀総裁の不用意な発言が重なって起きたものである。個人投資家の参入やアルゴリズムなどさまざまな要因が重なり思わぬ変動が起きたのかもしれないが、システム全体が変調したわけではない。
8月はジャクソンホール会議が行なわれ、さまざまな議論が取り交わされることになっている。ここで慌てて利下げをしてしまうと「やはりFRBは景気後退を意識していてそれを隠しているのだ」などと言われかねない。
金融システム全体が不調になったというわけではないうえにいつまでも資金を債権や現金で遊ばせておくわけにはいかない。恐る恐るではあるがハイテク株に資金が戻り始めているそうだ。ややバブルの懸念があるがそれでも株価が上がっている以上はお祭りに参加しなければならないということなのかもしれない。またハイテクと医薬関係以上に成長が見込める企業がなかなか見つからない裏返しとも言える。小型の割安株が良い、配当が多く見込める企業が良いなどと言われつつも、やはり安定した成長が見込める企業以上の魅力はないということだ。
日銀文学と言われる日本銀行のわかりにくい表現手法の危険性もわかった。結局は内田副総裁の「金融市場が不安定化している時には利上げはしません」発言がアジアの株式市場の持ち直しに貢献したわけだが、日銀内部では実は1%程度の利上げを行うべきだとする意見があるという。ひとまず混乱をやり過ごした感のある日本銀行だが今後も混乱の原因になるのかもしれない。