今日はなぜ日本が中国から舐められるのかについて考えてみたい。中国は尖閣諸島近くに表れて領海を侵犯している。名目は中国の領海で魚釣りをすることだそうだ。
舐められる理由の一つに日本が軍隊を持っていないことが挙げられる。領海を防衛するために、武力攻撃ができないのだ。しかし、仮に日本が武力による攻撃ができたとしても問題はなにも解決しないだろう。日本側が状況をエスカレートさせれば、中国には攻める理由ができる。それを抑えるのは、日本軍ではなく米軍である。つまり、日本は自分の武力攻撃の責任が取れないのだ。責任が取れないのだから、日本には自由意志はない。
中国は多分様子を見ながら日本の領海に侵入している。もし日本が何かをしかけてきたらラッキーだ。中国が日本(そして背後にいるアメリカ)を攻撃する理由ができるからだ。成功するかは分からないが、失う物は何もない。現在、この地域の秩序はアメリカが守って。チャレンジに成功すれば、太平洋への出口を確保できる。
日本人は中長期的なビジョンを持つのが苦手だ。場当たり的なリアクションに終始する。緊張をエスカレーションさせたら次にどうして良いか分からない。100%安全だと考えないと行動しないのでなし崩し的に既成事実を積み重ねることもできる。ビジョンがないのはリーダーシップがないからだ。
現状認識もまともにできないようだ。もうじき中国軍が大挙して攻めてくるなどという人がいるが、中国軍が攻めて来るだけのベネフィットが日本にはない。外国を侵略支配するのには(それが一部地域であっても)かなりのコストが必要だ。例えば武力攻撃してアメリカから沖縄を奪還するということは考えられなくはないが、そのためのコストを考えると、とても見合うとは思えない。それよりも、じわじわと海域を拡大したほうがよい。日本人が戦争をコスト&ベネフィットで考えられないのは、防衛戦略をアメリカにフリーライドしている(あるいはフリーライドを期待している)からだろう。
こうした場合に有効なのがTit for Tatと呼ばれる戦略だ。しかし、日本人は中期的な戦略を意識しないので「アメリカと韓国に相談する」位のことしか言えない。本らになら、やられたことだけをやり返して、あとはじたばたしないほうがよいはずだ。日本の成長戦略には領土拡大や領海拡大は含まれないので、コストに見合うベネフィットがないからだ。
安倍政権の国防政策には一貫性がない。一方では「アメリカが作った憲法は嫌だ」といいつつ、他方ではアメリカ軍が日本を守ってくれることを期待している。靖国問題で中国を挑発しているのに、中国が攻めて来たら「抗議する」位のことしか言えない。中国の大使は「あの辺では魚がよく取れますから」とうそぶいたそうだ。中国は安倍政権がたんにリアクションしているだけということを知っているのだ。
今すぐに尖閣諸島に人員を配置して監視を強めるというようなことができるはずだが、それはやらない。代わりに尖閣諸島にミサイルを配備すると言っている。もし、尖閣のミサイルが中国艦船を沈めたら「先制攻撃された」と騒ぎ立てることになる。中国は艦船を犠牲にして問題(現在は領土問題はないことになっている)を作りだすことに成功するのだ。ミサイルを導入すれば、安倍政権を支持している企業に仕事を回すことができるという計算があるのだと思うのだが、それをどう使うかということにはあまり関心がないのではないだろうか。
平和国家というブランドについての関心もない。これだけ紛争の防止が問題になっているのだから「日本は平和主義の守護者ですよ」というブランドは有効に活用できる。にも関わらず広島と長崎のスピーチをコピペで済ませて、オバマ大統領が「核の先制使用をやめたい」という提案に反対した。裏で別のことを画策してもよいとは思うが、表立ってブランドを毀損して何のトクがあるのかよく分からない。資産を有効に利用しようというずる賢い視点がない。
最後の要因はアメリカだろう。先日バイデン副大統領が「日本の憲法はアメリカ人が書いた」といって、日本の右派を大喜びさせた。しかし、文脈を読むと日本の憲法はアメリカが書いたから核武装はできないという意味になっている。アメリカ人は本音では「日本の再軍備鵜を抑えるために憲法を押し付け」たと考えている。建前では否定されている瓶のふたと呼ばれる議論だが、本音ではそれを信じているアメリカ人は多いのだろう。
右派の論客は、日本は基地を提供することでアメリカの役に立っていると言っている。彼らはアメリカが日本を抑止するために駐留しているという現実を知っていて、見ない振りをしようとしているのである。
実際には日本は独自に憲法改正して武装できてしまう。そのためにアメリカの高官は日本の憲法が民主主義と日本の繁栄に寄与しているという物語を語り続ける必要があった。トランプとの対立に夢中になっていたとはいえ「我々は日本を押さえつけているのだ、分かったか」と言い放ったのは、アメリカが極東地域を支配するする意欲を失いつつあると思えて仕方がない。バイデン副大統領の意識の中では、日本はまだアメリカに占領されているのだろう。
しかし、アメリカの同盟国の一部はアメリカから離反している。トルコはこのところロシアに急接近している。日本にも同じことが置きかねないことを理解していないのだ。
バイデン副大統領の論に従えば、日本が独自武装するとアメリカの庇護を失うだろうことになるばかりか、制裁の対象にすらなりかねない。確かに、戦略的には一つの選択肢だが、日本のリーダーがその後を考えているのか極めて怪しい。そもそも、日米同盟というのはその程度のものだということは、外から見ているとよく分かるのではないだろうか。