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東京都のヤバさを可視化した石丸伸二氏

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東京都知事選挙が終わり石丸伸二氏が2位に躍進した。YouTubeでの知名度は抜群だったが、広がりはリアルに及び東京都知事選挙では有効投票の1/4近くにあたる150万票を獲得したそうだ。たかがお騒がせ系1市長などと言われていたが選挙戦は大成功だったと言ってよいだろう。石丸氏は岸田総理の対抗馬としての意欲を燃やしており今後も破壊神として活躍しそうである。

ただし石丸氏の成功を手放しで喜ぶわけにもいかない。学校に例えるとかつての優良進学校がやる気のない学区二番手の中堅校に転落していると表現できる。東京は一番校ではないか?と考える人もいるかも知れない。だが仮にこれがこの地域の一番校だったとするといよいよ日本は終わっていることになる。

状況を詳しく見てゆこう。

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地方の県立高校には高校学区制度がある。そもそも県立校のほうが私立校より格上とされており、中でも学区の一番高は「名門」と呼ばれる。そしてその下に学区一番校に入れなかった子たちが集まる高校がある。二番校の中には「頑張って大学進学を目指そう」という学校もあれば「どうせ俺達は一番校には入れなかったんだよなあ」と腐ってしまう生徒で溢れた学校もある。

学区二番校にもそれなりにキラキラした人はいて学校行事もそれなりに盛り上がったりする。だが「そんなのくだらない」「壊れてなくなってしまえばいいのに」という人が増えると一気に学校全体の雰囲気が沈滞する。

石丸氏を支援しているのはこの「どうせ俺達は」系だろう。自分たちもキラキラしたいがどうしていいかわからない。そこで「手札が全部入れ替わらないとゲームに勝てない」と考えてしまうのかもしれない。

石丸伸二氏のYouTubeの過激な発言から「この人だったら現状をすべてリシャッフルしてくれるかもしれない」と期待した人が多かったのではないか。YouTubeの登録者は29万人もいる。彼らが最も検索したワードが街頭演説だったそうだ。蓮舫陣営が失敗した無党派の取り込みに石丸氏は成功した。なんだかよくわからないが実際に見てみたいという人が多かったのだ。

つまり「もうリシャッフルしかない」と考えている人はおそらく有効得票率の1/4の150万人以上いたのだろう。彼らがすべて投票に行ったとも考えにくいからだ。

学校で例えて過激に表現すると「文化祭など燃えてなくなってしまえばいい」ということだ。建設的に政策を建てようとしていた「論理系」の人たちを安野貴博さんが可視化したと考えるとその人口比は1:10ということになる。論理系が15万人もいる都市というのも日本では東京だけなのではないかと思うがそれでも「燃えてなくなれ」の1/10程度なのだ。

東京都は「地域1位校ではないか」と思う人もいるかも知れない。確かに日本には東京以上の都市はない。だがそれは2024年に台湾と韓国に1人あたりのGDPで抜かれることが決定している国の1番校にすぎない。

つまり今回の選挙の結果は現状維持を望む人たちと「もう全部シャッフルして札を配り直してもらえないと勝てない」と考えている人たちが作った結果と言って良い。彼らは同じ現象の両極なのだろう。いずれにせよこんな状態では「頑張って学校を盛り上げよう」という気持ちは作りにくいだろう。東京都という高校も日本も今後もますます停滞しそうである。

更に今回もう一つわかったことがある。

石丸伸二氏はドトール創業者などの経済界から支援を受けていたと言われている。自民党は製造業・建設業・大手商社などの産業界からの支援を受けている。石丸氏を支援している企業家はこうした企業からは一つ格下に見られる傾向が強い飲食宿泊などの「サービス系」のようだ。「札の配り直し」を全面に押し出す背後で企業(「右派などといわれるが内容はよくわからない」)との関係を強めてゆくということも考えられる。

つまり「やる気を失っている社会」に一定の支援が投下されれば扇動は容易ということになる。

日本にもトランプ氏のような「非政治家的な政治家」が台頭してくるのだろうなあという予想が容易にできてしまう。それがいいことなのか悪いことなのかはわからないが、日本は国全体がアメリカでいうラスト・ベルトになっているということがわかる。

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