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トランプ氏が勝ったらどの株を買うべき? ロイターが勝ち組・負け組を分析

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テレビ討論でバイデン氏の劣勢とトランプ氏の優勢が伝えられている。ロイターは早速トランプ氏が勝ったときに上がるであろう推奨銘柄を出している。さすがにどちらかに肩入れするわけにもいかないので「情報BOX:米大統領選の注目銘柄、結果が左右「勝ち組・負け組」」としているが実質的にはトランプ株ガイドだ。

英語ではBusiness Insiderが記事を出していた。こちらはWhat a Trump 2.0 presidency would mean for the stock marketとなっていてトランプ氏の勝利を前提にしている。ロイターの推奨株だけを紹介しても良かったのだがBusiness Insiderの記事も合わせて紹介したのには理由がある。かなりトーンが異なっているのである。

最後にNRIの予想も読んでみた。こちらはトランプ氏のもたらす悪影響を市場は軽視していると言っている。

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すでに最高裁判所が連邦政府の規制を制限する判断を下しているがトランプ氏になればますます金融規制は緩やかなものになるだろう。アメリカ市民にとっては悲報だが投資家にとっては嬉しい変化だろう。またM&Aを手掛ける企業も仕事がやりやすくなるという。

またトランプ政権下では化石燃料系の企業(石油と天然ガス)が勝ち組になる。

さらに関税が拡大されればアメリカに中国からの競合製品が入ってこなくなることから自動車メーカーや鉄鋼メーカーには追い風となる。おそらくアメリカ市民は格安の製品が手に入れられなくなり打撃う受けるがアメリカ企業は大儲けである。またアメリカの半導体企業も支援が期待できるかもしれない。

政府が共和党主導になると薬価が下がりにくくなり製薬メーカーや医療保険の会社が儲かるそうだ。ただしこれもアメリカ市民にとっては医療費の高騰につながる。

しかし、これだけを紹介してしまうと後で批判を浴びかねないのでBusiness Insiderの記事もご紹介しておく。彼らの「予言」は少し悲観的だ。前回の記事でトランプ・ラリーとトランプ・ショックについてお伝えしたが、インフレ・金利・米ドルにネガティブな影響が出るとしており「トランプ・ショック派」のようである。

なぜBusiness Insiderはトランプ・ショックを予想するのだろう。それはトランプ氏が二期目でありもう有権者におもねる必要がなくなるからだ。財政拡大を通じて「有権者に施しをする」必要がなくなりひたすら貿易戦争とインフレが引き起こされるという将来をBusiness Insiderは予想している。一部FRBに介入して利下げを迫るのではないかと言われているが、Business Insiderを読む限りはFRBはさらなる利上げを余儀なくされるであろうと予想するのみであり介入については何も書いていない。

「米ドルにネガティブな影響」が出るのだから当然ドル安であり日本にとってはいいことなのではないかと思ったのだがBusiness Insiderはドル高になると書いている。貿易戦争によって世界経済が停滞すると安定資産ドルに人気が集まるであろうというのだ。

これは輸出企業にとっては逆風になる。ロイターは影響を受けるのは農産物であるが「当然政府が補助するであろう」といっているが、おそらくBusiness Insiderはそうは書いていない。

ではこれらのトランプ・ショックが株価を押し下げるのかということになるのだが、Business Insider記事は「AIバブルのお陰で2024年と2025年の株式市場は楽観的だ」と分析している。

NRIの記事もトランプ・ショックを予想する。トランプ氏が与える悪いインパクトが軽視されていると警鐘を鳴らしたあとで時間的な変化を予想している。Business Insiderが今年と来年の好調な株価を予想しているのと同じようにトランプ政権は末期になるとアメリカの経済が悪化するのではないかという見立てだ。

トランプ前大統領再選の場合の市場の反応についての相反する見方は、時間軸の違いによって説明できるだろう。トランプ再選の場合の経済政策は、追加関税など保護主義的な政策が貿易の縮小を招き経済を悪化させることで「株安」、財政悪化による通貨の信認低下のもとでドル安政策によって「ドル安」となりやすいだろう。

もちろんこれはすべてアナリストの見解にすぎないため実際に予想が当たるか外れるかはわからないのだが、少なくともトランプ氏が当選した場合に何が起きるのかを考えるうえでの参考資料となる。

さて最後に日本に対する影響について考える。トランプ氏の政策が貿易戦争を引き起こすならば日本の製造業にとっては逆風となる。トランプ氏はおそらく中国と日本を区別していないため日本の輸出品についても厳しい目を向けるだろう。またこの結果(当面は)ドル高になると仮定するならば日本にとって厳しい状況があと数年は続く。そしてその後にドル安になったとしてもそれは世界経済の悪化を伴うあまり良くないドル安ということになる。

日銀の金融政策はアメリカの従属変数に過ぎない。東洋経済の記事は次のような日銀OBの話を紹介している。トランプ政権でインフレは沈静化しないのだから「日銀OBの祈り」が天に通じることはない。ただしNRIの予想が正しければ祈りはやがて天に通じるということになる。

残された選択肢は、唯一の現実的な対応でもあるが、「アメリカ経済の減速とインフレ沈静化をひたすら祈る」(別の日銀OB)というものだ。

もちろん「これらの予想を見る限りは」という限定条件がつくが、少なくとも暫くの間の投資家はAIバブルで好調なアメリカ株とそれなりに利益が得られる米国債を買えばいい。長期債はすでにトランプ後を織り込んで値上がりが始まっているそうだ。

日本株の一部はアメリカのAIバブルに牽引され好調を維持するかもしれない。実際には一部の半導体株がアメリカに牽引されて値上がりしているだけなのだろうがそれでもNHKは「日本企業が国際的に信任されている」という証券会社のセールストークを右から左にそのまま垂れ流している。ただそれだけでは後で批判されると怖いと思ったのか最後の方に「一方で、今後の懸念材料として、欧米などで金利が高止まりする中、世界経済が急速に減速することがリスク要因だと指摘しました。」と書いている。

NHKの記事を鵜呑みにするのはやめたほうが良さそうだ。あくまでも全体的なトーンは軽快なものにしつつ自分たちの逃げ道もきちんと確保されている。これではとても情報機関とは言えない。単なるお役所仕事である。

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