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日本語は母音の少ない言語なのか

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よく「日本語は母音が少ない」と言われる。果たしてそれは本当なのだろうか。結論から言うと世界の560程度の言語のうち、母音の数が5〜6程度のものは287あるそうだ。つまり日本語の母音の数は平均的ということが言える。日本人が母音の数が少ないと感じるのは、日本人の考える外国語が英語だからだろう。英語には複雑な母音体系がある。

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さて、世界でもっとも母音の数が少ない言語はいくつの母音を持っているのだろうか。ロシア南部のコーカサス地方にはコーカサス諸語と呼ばれる言語群がある。3つの語族があり40程度の言語が話されているという。トルコ語ともインドヨーロッパ語とも違う「言語島」が形成されている。

その中にアブハズ語という言語がある。グルジアの北西部に突き出した形で存在するがグルジア人とは別の民族だ。複雑な子音体系があるが、母音として意識されるのは2つだけなのだそうだ。広い母音と狭い母音だそうである。ただし、半母音のような形(つまり子音+母音として)他の母音も表れる。しかし、文字として母音認定されるのは2つだけだ。

韓国語には陽母音と陰母音の区別がある。こちらは文法上の役割を持っている。動詞の語幹に陽母音があれば続く語尾も陽母音になる。トルコ語には母音調和という現象がある。このように母音を2グループ(広い、狭い・前、後)に分けるということは世界各地で行われている。アブハズ語もいろいろな母音を調音できるのだが文字として意識されるのは2種類だけなのかもしれない。

母音が少ない言語の多くは3つである。琉球語には「あいう」の3つの音しかない。子音の数も日本語と同じ程度のはずなので、母音がないと音が足りないということはないようだ。代わりにグロッタルストップを使った母音とそうでない母音の対立のある方言があり、かならずしも日本人に発音が優しい言語というわけでもなさそうである。母音の複雑な言語はアフリカやヨーロッパに多く、人類が各地に進出する過程で母音の単純化が起った。オーストラリアやアメリカ大陸には母音の単純な言語がいくつもある。

面白いことにアフリカにもマダガスカルに母音が単純な言語があり、人類が遠くにゆくほど母音が単純化するというセオリーに外れているように見える。ところがマダガスカル語(マラガシー)は台湾あたりに起源を持つ太平洋系の言語である。つまり、いったんアフリカを離れた人類が長い歴史を経てまたアフリカ近海に戻ってきたのだ。

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