フランスで総選挙が行われた。制度は非常に複雑だが初回の選挙ではルペン氏率いる国民連合が快勝している。一方のマクロン氏の連合は過半数近い選挙区で決選投票に進めなかった。つまりマクロン氏の連合が全戦全勝にでもならない限りは過半数を維持できず政権を失うかあるいはフランスの政治全体が不安定化することを意味している。
有権者は今回の結果を見て決選投票で誰に投票するかを決める。最終的な結果が出るのは7月7日になる。各政党はそれぞれ「頭の体操」をしながら支持者たちにどこに投票すべきかを呼びかけている。
フランスの複雑な選挙制度についてはSNSのXでいろいろな情報が飛び交っていた。だがあまりにも複雑すぎて「なんかよくわからない」というのが正直なところだ。POLITICOのまとめによると次のとおり。
今回は選挙制度に関する記事と選挙結果のライブアップデートの記事を参考にした。
- French legislative election: Protests kick off in Paris after far right win in first round(Politico Europe)
- French election: Your guide to a vote that is set to shake the EU and NATO(Politico Europe)
- 選挙区は577(577/2=288.5)
- 最初の選挙で過半数獲得の候補者がいればそこで確定
- 過半数獲得者がいなければ2回目に進み上位2名と登録有権者の12.5%以上の支持を得た候補者で決選投票。
- つまり投票率が高ければ2回目の投票に進む「第三の候補」が増えることになる。
- 最終的に1名が当選。
理論的には4人目の候補者がいてもよさそうだが大抵は2名か3名の闘いになるようだ。
最後の投票所が締め切られたのが夜の8時だったそうだがその直後にイプソスの初期推定が出た。事前に予想されていた通り国民連合が1/3の投票を獲得した。マクロン氏の連合は第三位だった。EU議会選挙よりも躍進したようだ。
- 極右政党「国民連合(RN)」が34%
- 新人民戦線と呼ばれる左派連合は得票率28.1%
- フランスのエマニュエル・マクロン大統領の中道連合は得票率20.3%
選挙の仕組み上「第三の候補」がどれくらい残るかが重要でありそのためには投票率が高くなければならない。前回の選挙よりもずっと投票率は高かったそうだ。
さらにイプソスは次のように書いている。過半数が289とすると連合はすべての候補者が勝たないと過半数が維持できないのだが普通に考えてそんなことは起こりそうにない。
- 極右の国民連合は390~430選挙区
- 左派連合は370~410選挙区
- フランスのエマニュエル・マクロン大統領を中心とする連合が290~330選挙区
第一回投票の結果は「パニック」に近いものように感じられる。
まずマクロン大統領は賭けに負けた。アタル首相は極右には投票しないように左派に呼びかけている。メランション党首(左派のリーダー)は左派が選挙区で第一位でなければ選挙区から撤退しろといっている。つまり勝ち目がないならマクロン氏の連合に協力したほうがマシということになる。つまり改革右派+左派という連合が成立する可能性がある。
極右の首相候補バルデラ氏は「過半数を獲得できなければ首相にならない」といっている。改革右派+左派のこの協力がうまくいかなければ「どの政党も組閣ができない」ことになる。フランス政界は混乱しEU/NATOにも影響が及ぶだろう。
POLITICOはル・モンド(保守系の有力紙)がルペン氏の政党に投票するように呼びかけていると書いている。バルデラ氏の政策は心配かもしれないが(マクロン氏の連合が負けた以上は)左派のメランション氏が躍進しマクロン氏の政党と連立政権を組むよりは極右の政党のほうがマシだと考えているようだ。つまりル・モンドは「右派というより左派嫌い」ということになる。
隣の芝生は青いという。東京都知事選挙のように50名以上の候補者が乱立したり、バイデン・トランプという極端な選択肢しかないのであれば「フランス式」がいいのではないかと思っていた。だが結果的には「どの政党を応援するか」ではなく「どっちを勝たせたくないか」で目まぐるしく損得勘定を働かせなければならなくなってしまう。時間は限られており有権者は一週間で判断氏なければならない。
結局のところ、理想の選挙制度などないのだと感じる。
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