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バイデン大統領とトランプ前大統領の罵り合いは高齢化の影響なのか

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今回のテーマはともすると「炎上」を伴いかねない危険なものだ。バイデン氏の高齢化問題について扱う。だがこの問題はアメリカ外交を語る上では避けて通れないテーマだと思う。相手との交渉のためには「相手が何を理解しているか」を認知することが重要だが現在の大統領候補は二人ともこの能力に欠けている可能性がある。

これまで「アメリカの外交に陰り」などと書いていたが信頼しなかった人も多かったと思う。今回「バイデン氏の衰え」について報道が進んだことで日本人もようやく「あれ、何かおかしいのでは?」と感じることになりそうだ。

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第一回ディベートではバイデン氏の衰えが目立ったという評価が一般的だった。当初日本のメディアはこの問題をあまり語りたがらなかったが「あの」ニューヨークタイムズが社説でバイデン氏の撤退を要求したことで一気に火がついた。アメリカにはほとんど全国紙がないが日本のメディアはニューヨークタイムスとワシントンポストを全国紙同様と捉え世論を形成するために大きな影響を持っていると考えたがる。

だが、バイデン氏はその後の支持者との集会でいつもの元気を取り戻した。憤懣やる方なしといった風情で吠えに吠えている。トランプ氏に反論していることから認知能力には問題はないようである。あまりの落差に「何か注射でもしたのではないか」と根拠なく指摘する人までいる。

しかしながら「そもそも高齢になると対話が苦手になり一方的に自分が興味があることだけを話すようになる」と考えると「注射」を導入しなくてもこの現象が説明できる。

そもそもトランプ前大統領も自分の言いたいことだけを一方的に捲し立てていた。事実誤認も多く相手の質問にも答えていない。だが彼は挑戦者なのでこれでもよかった。さらに言えばトランプ氏は元々「そういうキャラ」の人だ。ファクトを重視しないのだから認知など関係ない。

一方のバイデン氏はトランプ氏の主張を理解した上で反論を瞬時に組み立てなければならない。つまり、衰えているのは認知力全般ではなく瞬発性のコミュニケーション能力ということになりポジション的には非常に不利である。バイデン氏にとっても一方的に吠えている方が楽なのだろう。

バイデン氏の無表情ぶりは菅義偉前総理大臣と共通する。バイデン大統領は元々議会政治家でありオバマ大統領を裏で支える裏方だった。菅義偉氏も元々裏方として自分の表情を押し殺してきたが、安倍総理の退陣で表方として表情をださなければならなくなった。元々裏にいた人が高齢になって表に出てきたので対応が難しかったのだろう。

都築:7年8カ月も官房長官をやっていたのだから、話し方の癖はなかなか抜けないでしょう。ただそれ以前に、菅首相の政治的なリソース(資源)は、情報と人事を握っていることです。言い換えれば、インテリジェンスの出身なんですね。国家の情報収集や分析、人事の差配などは見えないところでやるものなので、言葉は重要視されません。むしろ周りに気付かれてはいけないものであり、「国民に向けて語りかける」という方法とは180度違う政治手法です。

菅氏の認知能力は未だ衰えていない。「菅政権時代の成果」や「今後菅氏が誰をニューリーダーとして期待するか」と聞かれるとスイッチが入ったかのように語り始める。この一連の変化は目の前で起きており注射する余裕などないことがわかる。興味があることと興味のないことに対する反応落差が極めて大きい。結果的に切り替えがものすごく不自然になる。

もちろん高齢者が全てこうなるというわけではない。これまで穏やかな対話を心がけてきた人たちのコミュニケーション能力はさほど衰えない。またこれまで好き放題に語ってきた人(小泉純一郎氏など)は全く衰えを見せていない。

今回のテーマはともすると高齢者の揶揄につながりかねない微妙な問題だがアメリカの外交を考える上では極めて重要だ。対話能力に欠ける人が大統領になってしまうと自分の考えに固執しオリジナルの戦略を押し通そうとする。それが今までの彼らのやり方だからである。

現在の民主党はバイデン大統領に代わる新しい候補を模索していると言われているが、本人が降りると言わない限り立候補を諦めさせることはできないだろうと言われている。また憲法の修正25条の規定により大統領の認知能力に問題がある場合は副大統領が任務を代行することができる。しかし、新しいスピーチを見る限りバイデン氏は対話ができなくなっているだけで認知能力には問題がなく、これを使うのは難しそうである。

トランプ氏には追い風が吹いている。最高裁判所の判断によりエンロン事件をきっかけにして作られた法律によってトランプ氏と議会襲撃を受けた人たちを裁くのが難しくなる。「制限」と表現されていることから完全に否定されたわけではないようだが多くの裁判がやり直しになる可能性があるそうだ。当然トランプ前大統領の弁護団も同じ主張をするだろう。また週明けの月曜日には大統領免責についての最高裁判断が出るものと期待されている。有罪評決を受けても人気にさほど衰えがなくそのほかの裁判も継続が難しくなっている。

いずれにせよこの調子だとお互いの陣営が直接対決しないままで支持者を巻き込んでお互いに罵り合うという風景がしばらく続くのかもしれない。アメリカの外交能力に不難を感じる人はますます増えてゆくことだろう。

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