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ボリビアでクーデター未遂 背景は先住民と既得権益の争い

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ボリビアでクーデター未遂事件が起きたが無事に鎮圧された。だがその内容を見ても何が起きているのかがよくわからない。本来大統領選挙に出馬資格がない人が出馬を表明しておりそれを未然に防ぐために軍人が蜂起したことになっている。意味不明だ。

背景を調べてゆくと先住民と既得権益の争いがあるようだ。この象徴が天然ガスである。ボリビアガス紛争と呼ばれるそうだ。

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今回のクーデター未遂についてBBCは次のように書いている。この文章を読んで意味がわかる人は皆無だろう。そもそも出馬資格がない人の出馬を阻止する必要などないはずだ。

ズニガ氏は24日にテレビ出演した際、モラレス氏が来年の大統領選に再出馬すれば同氏を逮捕すると発言。ズニガ氏はその後、軍司令官を解任された。ボリビアの裁判所は昨年、大統領を計2期以上務めることを禁止する判決を下しており、モラレス氏には立候補資格はない。

ボリビアは天然資源に恵まれた国だがそれをうまく活用できていなかった。先住民の人口が極めて多い国なのだが経済の実権は都市生活者と白人が握っていた。

ドイツ移民の子孫であるウゴ・バンセル・スアレス大統領はスクール・オブ・ジ・アメリカス(中南米の指導者に民衆鎮圧の方法を教えるアメリカの学校)を卒業し独裁を続けた。最後には肺癌で副大統領に権力を移行している。

次の大統領は権限委譲を受けたスペイン系移民の子孫であるホルヘ・キロガ・ラミレス大統領。大統領職を全うした。のちに大統領選に再出馬するがモラレス大統領に敗退している。

これを引き継いだのがゴンサロ・サンチェス・デ・ロサダ大統領だ。任期途中にボリビアガス紛争が過激化した。サンチェス・デ・ロサダ大統領は暴動を鎮圧できず辞任に追い込まれ亡命した。名前からスペイン系と思われる。

カルロス・メサ・ヒスベルト大統領はボリビアガス紛争の鎮圧を試みなおかつ太平洋戦争で失われ今はチリ領になっている土地の奪還を目指すと表明したが国民の支持を得られなかった。結局彼も辞任してしまいしばらくは最高裁判所議長のエドゥアルド・ロドリゲス・ベルツェ氏が大統領を代行していた。カルロス・メサ・ヒスベルト氏は2019年に再びモラレス大統領に挑戦した。この時には選挙不正が疑われモラレス大統領の退任につながった。モラレス大統領の後継は上院議長のアニェス氏だった。2020年に行われた選挙にも挑戦するが今度はモラレス氏が支援するアルセ氏に敗れている。この人も白人系の大統領だった。

1980年代まで軍政だったボリビアはその後ウゴ・バンセル・スアレス大統領の独裁体制に移行する。ウゴ・バンセル・スアレス大統領が死亡すると状況が不安定化しボリビア・ガス紛争が起きた。結局白人系の大統領はこの問題を解決できず先住民系社会主義者のモラレス氏が大統領になり政情が安定した。

しかしながら既得権を脅かされる形になった白人と都市生活者は反発を強めてゆく。また左派特有の憲法秩序に反する杜撰な国家経営も問題になり選挙不正が囁かれた。結果的に大統領多選(この時点で4選していたそうだ)が裁判所により期に禁止された。モラレス大統領は同じ社会主義政権であるメキシコに亡命している。

2019年のモラレス政権に対するデモに関する記事(日経新聞)を読むと有権者の感情はかなり複雑だったようだ。もともとは白人支配が強かったため、先住民はモラレス大統領に感謝している。

国の多くを山岳が占めるボリビアは産業が育たず、天然資源に依存する。しかし、資源から得られた富を独占したのは植民地時代の支配階級だった白人だ。人口の4割を占める先住民系の多くは教育も受けられず、代々貧困の連鎖を強いられた。

一方でなかなか恩恵が得られない人たちのフラストレーションも溜まり他の反米社会主義政権と手を組む姿勢にも危機感を感じている。先住民系はこれまでのような白人中心の国にも戻ってほしくはないがかといって憲法秩序を破壊しつつ暴走気味で「いつかはベネズエラのようになるかもしれない」モラレス政権にも危機感を募らせていたようである。

今回のクーデター未遂は前述したようにモラレス大統領の再出馬を警戒したホセ・ズニガ司令官が「前大統領が出馬を表明すれば逮捕する」と警告。これを嫌ったアルセ大統領がホセ・ズニガ司令官を解任した。ズニガ氏ら軍幹部はこれを覆そうとしてアルセ大統領の転覆を図ったが動きを事前に察知していたアルセ大統領が軍を鎮圧したという流れになっている。ズニガ司令官は「アルセ大統領が支持率向上を狙い自作自演で我々を逮捕した」と主張しているそうだ。

理論上はアルセ氏の再選も考えられるはずだがモラレス氏も大統領選挙出馬に意欲を見せている。アルセ氏はもともとモラレス氏の側近として知られるが今2名の関係がどうなっているのかはよくわからない。

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