ケニアで議会が襲撃される暴動事件が起きている。5名が亡くなったとされていたが最新情報では23名が亡くなったそうだ。
ルト氏は「自分は庶民の味方」と宣伝し2022年に大統領に就任した。しかしその国家財政は行き詰まっており新しい資金源の獲得に東奔西走していたようである。結果的に金策は行き詰まり「増税か福祉予算の削減か」という難しい選択を迫られている。
自動車とパンの増税提案は撤回されたそうだが国民は大統領の退陣を求めている。
ケニア・タンザニアはアフリカの中でも治安が安定した地域とみなされている。最近ではアメリカ合衆国に代わってハイチへの警官部隊派遣などを申し出るほどの余裕を見せていた。その一方でデフォルト懸念も消えず2023年には公務員給与遅配が起きていた。対策としてIMFに援助を求めていたが緊縮財政の推進を求められている。ケニアはインフラ資金を求め一帯一路に協力したものの最近では返済が滞っているものと考えられている。つまり中国に頼りが行き詰まった結果IMFに頼ったことになる。
ケニヤッタ大統領は退任前に大統領選挙で争ったオディンガ氏を後継候補に指名した。2017年の両氏の大統領選挙は泥沼の闘争となり混乱していたが「エスタブリッシュメントが利権を保持するためにはオディンガ氏の方がふさわしい」という政治的判断だったのだろう。ルト氏はこれを「権力者一族の国家私物化」と批判していた。
しかしながら中国に対する返済は滞っており国家財政は逼迫した状態だった。ルト氏はファイナンスを求めIMFに接近するがIMFは融資の条件として緊縮財政を求める傾向がある。2023年には公務員給与の遅配が起こり「デフォルト」が懸念される状態になっている。
ルト大統領は国民の期待に応えるために新しい投資を必要としている。中国からはこれ以上借りることはできずIMFも財政健全化を求めてくる。そこで今度は西側に接近しはじめた。外交で成果を出したい岸田総理はケニアと食糧援助の協定を結んでいる。また、バイデン大統領も「民主主義を守るというアメリカの理想を世界が支持している」と見せたい。ルト大統領はアメリカに代わってハイチに警官隊(メディアによって準軍事組織などと書いているところもある)派遣を行うと宣言した。バイデン政権はこれを大喜びで歓迎し米・ケニア関係を非NATO地域の同盟国に格上げしている。
結果的に見ればこれは全てルト大統領の「金策」だったわけだが、ついにこれでは首が回らなくなってしまった。ルト氏が掲げた弱者救済のためには原資が必要だがそれが十分に得られる見込みはない。ついに「増税」に訴えざるを得なくなった。
増税提案はパン、食用油、自動車、金融取引などに及んだそうだ。特にパンにかかる16%の増税はいわば「ケニア版消費税」のようなもので貧困な人々に大きな不満をもたらす。そもそもウクライナの戦争などの影響で食糧価格が値上がりしていることが岸田総理の支援の理由になっているのだから国民が16%の増税に怒るのは当たり前である。
ただ「増税撤回」となると今度はルト大統領が約束していた貧困対策が疎かになる。つまり福祉予算に大きな穴が空いてしまうのである。ロイターの英語版が詳細に伝えている。
国民が「約束が違う」と考えても何の不思議もない。
庶民の味方であると訴えて大統領に就任したルト氏だが「金策」の結果ついに首が回らなくなった。暴徒には毅然と対応すると表明しているそうだが、しばらく状況は不安定化しそうだ。当初死者5名などと言われていたが共同通信は23人の死者がでたと伝えている。