どのような服を着ればよいのかというマンガを立ち読みした。その本が言っていることは実に単純だ。ユニクロに行き細身のパンツを買う。そしてそれにあうようなトップスを選ぶ。最後に気軽に着れるソフトジャケット(これも細身)を選ぶとよいのだという。確かにこのように選ぶとそれなりにこぎれいに見える。だが、最新のファッション雑誌(Mens’s non-noやFine Boys)にはこういうスタイルは掲載されていない。つまり、流行っているスタイルと一般的に受け入れられるファッションとは違うのだ。
最近のファッショントレンドを簡単にまとめてみた。ちなみにマンガのファッションは2に当たる。起点になっているのはアルマーニやベルサーチなどに代表されるファッションだ。背広から芯を抜いて全体に「ふんわり見える」のが特徴になっている。次にそのスタイルが細身になった。マンガでも採用されているのだが、Pinterestなどでもこのような写真がたくさん流通している。これが「スタイルがよく」見えるのだ。錯視を利用して縦のラインを作っている。
ところがアパレル業界では次のスタイルを模索し始める。だんだんボトムが上がってくる。実はこの状態が一番男性の裸に近い。2を基準にすると足が短く見える。すると重心が揺れ始める。数年前はシルエットが2つ提案されていたはずである。重心を上げてVの字に見せるか、重心を下げてAの字に見せるかという違いである。
だが、最近の男性誌はこの重心操作に飽きてしまったようだ。体全体に「ずたぶくろ」をかぶったように体型を隠すのが流行っているらしい。ボトムを太くしたり、長めのジャケットを着て体型を隠したりしている。すると起点であったスーツスタイルに似ていることになる。いくつかの操作を重ねた結果、もとに戻ったように見えるのだ。
しかし、よく観察してみると、最初のスタイルにはなかったバリエーションが加わっている。3で見た丈の短いパンツが使われていたりする。これは1にはなかったディテールである。また重心にもいろいろなバリエーションがある。4で操作した名残だろう。
Fineboysの最新号には「バランスのよい格好を本気で考えてみる」という特集があるのだが、これはバランス操作の段階まで来ている。同じ雑誌の中でもバリュー服を着るという特集と最新のファッションの特集があったりする。実際にみんなが好ましいと思っているのはそれよりも1世代前のタイトな服である。つまり、ファッション雑誌をまじめに熟読してしまうと「外してしまう」可能性が高そうだ。
ファッション雑誌のエディターがタイトなファッションをあまり多く取り上げないのにはいくつかの理由があるのだろう。ファッションは人為的に動かさないと新しい服が売れなくなるし、毎日同じようなスタイルばかりを扱っているとやっているほうが飽きてしまうのだろう。
ユニクロのルックブックを見ると、2から3への以降の途中にいるようだ。