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なぜヤンキーは選挙に行かないのか

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さて、今回のお題は「なぜヤンキーは選挙に行かないのか」である。
まずはヤンキーが何かを定義しておきたい。ヤンキーは「主に田舎に住んでいるあまり教育程度が高くない人たち」だと定義する。田舎とは何かという問題が出てくるが、ここでは「単一価値観」としておく。例えば中野に住んでいても中央線に乗って別の街に出かけないなら、中野は田舎だ。
ヤンキーの価値観はなんといっても「地元のツレ」を大切にすることだ。買い物に出かけるのはイオンモールだ。イオンモールにはヤンキーの物欲を満たすものがなんでも揃っている。最新のファッションには反応せず「みんなが着ていて正解であるところのトレンド」を好む傾向がある。何よりも仲間から「それアリだよね」と承認されることが大切だからである。だから、服はユニクロかシマムラで買う。
さて、日本人にとって政治とは何だろう。どうやら今回の都知事選挙を見ていると「どちらの陣営が正しいのか」という対立になっているようだ。
かつて人々は「自分たちはどの集団に属しているか」という帰属意識に基づいて投票をしていた。農家・建築業界・鉄鋼会社(とその関連会社)といったような職業意識(とはいっても職種ではない)が帰属意識を持っていたのである。
職業や地域社会が希薄になって出てきた帰属意識が「ネトウヨ」や「パヨク」だ。名前の付け方はいろいろあるのだろうが、自民党を応援する人たちと、民進・共産・社民/生活を応援する人たちである。政治を通じて新しい帰属意識を感じようとしているのだろう。
だが、よく観察すると、民進党にも右派や左派がいるし、自民党の中にも「難しい問題はよく分かりません」という議員がいる。つまり、政党は主義主張で固まっているわけではなさそうだ。にも関わらず政党が成り立っているのは別の原理が働いているからだ。
なぜ人々は帰属意識を持ちたがるのか。それは、現実社会での帰属意識が希薄だからだ。だが、ヤンキーはツレとイオンモールにでかければ幸せだ。彼らは「ジモト」に帰属しており、とくに作り物の帰属意識を持つ必要はないし、LINEで友達の動向をチェックするのに忙しいく政治ニュースを見る時間もないだろう。結婚すれば、かつてはツレだった配偶者とイオンモールに出かけて「友達」みたいな家族を作るわけである。彼らの理想は「友達が気軽に集まれる家」を作ることだし、できなければ友達家族とガストに行く。
ヤンキーは政治でニーズを満たす必要はないのだ。ネットで検索すると「ヤンキーは新保守ではない」という記事がヒットした。保守的であることと、自民党を応援することはイコールではないらしい。
さて。今回は、現在の政治は「部族対立」であり「政策を巡る争いではないのではないか」という仮説をもとに組み立てた。この部族対立は新聞にも見られる。読売・産経が右で、朝日・毎日が左だ。このように日本人は、確かな集団も持っていないし、かといって個人の意見で意思決定をするほどの個人主義も発達していない。このため、いったん所属意識ができてしまうと、その枠内でしか思考ができなくなってしまうのではないだろうか。
さて、この夏「若者は選挙に行かなければならない」キャンペーンが大々的に行われた。そこで喧伝されたのは「若者は選挙に行くべき」で「選挙は政策で決めるべきだ」というものだったのだが、それは嘘だ。このキャンペーンを真に受けて政策をまじめに勉強した若者が(もしいたとしたら)かなり戸惑ったのではないだろうか。