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投資家は今後一ヶ月フランスの政治動向に注意を

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NISAの拡充で海外投資に興味を持つ人が増えている。一時は米株・米国債が中心だったが、最近では米国以外の金融商品にも関心が高まる。特にヨーロッパに投資をする人は今後一ヶ月はフランスの政治動向に注目すべきだ。イギリスの「トラスショック」の再来が懸念されている。ポイントになるのはフランス独自の選挙制度だ。選挙は2回行われる。最終結果は7月7日に確定になる。

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ロイターが「コラム:なぜ「フランスリスク」でユーロ売りなのか、市場が懸念する象徴的変調=上野泰也氏」というコラムを出している。フランスで総選挙が行われるというニュースをきっかけに一時ユーロ売りが行われたという。

フランスの現在の与党は改革派右派のREである。マクロン大統領が率いている。改革派(小さな政府志向)なので緊縮財政傾向だ。マクロン大統領は年金改革を主導し国内の労働者たちから批判を受けた。ここでEU議会選挙が行われルペン氏が率いるRNに大敗した。これを受けてマクロン大統領は議会総選挙を宣言する。

RNも三番手の左派連合も財政赤字を膨張させると予想されている。このため選挙結果によってはイギリスのトラス政権下で経験したトラスショックがユーロ経済圏でも起こりかねない。現に総選挙が実施されると宣言されるとユーロ安が起きた。ルペン氏は慌てて「自分はマクロン氏と協力するから心配しているようなことは起こらない」と懸念の払拭に躍起になっている。

しかしながら彼女の真意はわからない。単に穏健派を離反させないための虚偽の宣言である可能性は排除できない。

では結果はいつ見ればいいのか。ポイントになるのはフランスの独特の政治・選挙事情だ。フランスでは総選挙が2回行われる。ロイターは次のように表現する。

仏下院選は小選挙区2回投票制で行われ、第1回投票は30日、決選投票は7月7日である。

有権者は1回目の投票の結果で考えを変える可能性がある。REの勢力を削ぐためにRNに入れた人が「RNが勝ちすぎては困る」と考えを変える可能性がある。日本でも取り入れてほしい制度である。また二元代表制のフランスでは外交と内政で権限が分かれている。議会は内政しか担当しない。

第一回目の結果がそのまま最終結果になるとは限らない。つまり、第一回目の結果「RNが大勝したからユーロは売りである」と考えた人が結果的に判断を間違える可能性がある。ポートフォリオにユーロを組み込んでいる人はこれをを理解した上で投資戦略を組み立てる必要がある。結果は全く保障できないがヒリヒリとしたギャンブル好きは「1回目の結果が覆るだろう」という予測を立てるのも面白いのかもしれない。

中期的に投資戦略を考えたい人はG7を中心とした世界秩序が大きく揺らいでいる点を徐々に織り込むべきだろう。アメリカの覇権が揺らいでいると書くと「この人は反米なのではないか」と不安を感じる人が出てくる。日本人は世界史を善悪で捉えG7をアベンジャーズのように見てしまう。

ところが経済メディアのロイターは「G7が揺らいでいる」というコラムを出している。広島サミットとイタリアのサミットは大きく様変わりしている。岸田総理はバイデン大統領に全面的に協力したがメローニ首相は「EUはウクライナ支援には支出しない」と改めて強調するなどバイデン大統領の影響力を弱める方向に動いている。今後フランスでRNが大勝しなおかつトランプ氏が大統領に返り咲けば益々この傾向は強まるだろう。G7が機能不全に陥る可能性も十分にある。

おそらく善悪で物事を判断している人は徐々に方向感を失い政治報道酔いを起こすだろう。つまり、世界経済に投資をしている人は単純な見方を捨てて現実的な世界状況の把握に努めるべきであり徐々にこうした不確実な報道に慣れてゆく必要がある。。何が善で何が悪かわからない状況は不安だろうが正義感の保持ではなく資産の保護が優先順位であるべきだ。

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