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人々は政治ニュースをあえて避け始めている

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BBCの調査によると人々は政治ニュースをあえて避け始めている。47カ国の国際調査の結果判明した。理由は「見ていて疲れるから」だそうだ。本来ならば疲れないニュースの発出が求められるが実際にはそうはなっていない。政治報道の機能不全は民主主義の土台を揺るがす。

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BBCが「ニュースを「積極的に避ける」人が増加 国際調査で明らかに」という記事を出した。政治ニュースを見ると「落ち込む」、「絶え間なく続く」、「退屈だ」と感じる人が増えているという。

調査は1月から2月にかけて47カ国の成人9万4943人を対象に行われている。特定の国で政治ニュースを避ける人が増えているわけではなく世界的な傾向のようだ。なお選挙関連のニュースは例外でアメリカなどの数カ国では却ってニュースへの興味が高まっている。勝ち負けに固執する人は増えているということがわかる。SNSが台頭すると問題解決ではなく闘争に夢中になる人が増えてゆくのだ。日本でも政治と金や戦争のニュースは好まれないが、政局報道や都知事選の「女傑対決」などには人気が集まる。

あまりにも刺激が強いニュースが多く「疲れる」という人が多いことはわかる。また結論が出ないニュースが五月雨式に流れてくることに苛立っている人も少なからずいるだろう。本来ならばこうしたニュースへの対策が求められるところだが、現実には疲れるニュースは益々蔓延している。TikTokのようなSNSの役割が増しているという。

アメリカ大統領選挙において両陣営がTikTokを利用していることからもわかるように政治家たちは短く端的で言い切り型の情報を伝える必要性に迫られている。大統領選挙報道は既に言葉による戦争の域に達している。人々は闘争に夢中になりそのほかのニュースには見向きもしなくなる。短くぎゅっとまとめられたSNSニュースは理性ではなく人類の闘争本能に直接作用するのかもしれない。

SNSは徐々に危険な存在に変貌しつつある。アメリカの医務総監が議会に「SNSにはタバコのような有害ラベルが必要だ」との勧告を出して話題になっている。若者は絶えず断片的で刺激的な情報に晒され続けるため精神衛生上の危機を招くという。医務総監の警告が表示されているのは現在アルコールとタバコのみであり、SNSはそれと同じくらい危険だということになる。パソコンでのんびりFacebookを見ながら「卒業以来顔を見なくなった人と再びつながることができた」と喜んでいた時代は過去になった。

政治ニュースもこうした刺激的な情報の一つとして扱われることになる。中には過度に夢中になる人も出てくるが「もう疲れた」と考えて政治ニュースに興味を持たなくなる人も出てくる。人々は選挙や戦争のニュースに夢中になる。選挙は結果が出るが戦争はいつまでもダラダラと続くことがある。すると今度は一転して戦争のニュースも避けられるようになってしまうのだ。

健全な民主主義のためには穏健な市民が参加が欠かせない。民主主義は選挙で完結するのではなくその後の監視と協力も重要だからだ。

現在、鹿児島県警の捜査隠蔽が問題になっている。問題が起きているのはおそらく鹿児島県警だけではない。中には「裏金」をためている警察もあるのではないかと言われている。市民が適切な監視を行わなくなると「警察はなんとなく怪しい」という印象が残る。警察への不信感は犯罪の増加に直接つながり我々の社会を蝕んでゆくだろう。

同じことが政治と金の問題についても言えるだろう。五月雨式に流れてくる情報を見ているうちに一体何を話し合っているのかがわからなくなってきている。当然市民は疲弊し関心を失う。ところがうっすらとした疑念だけは残るため政府が何か決定を下すたびに「支持率不足の政権が勝手に何かを決めるのは許されない」とSNSで反発の声が上がるようになる。最近ではマイナンバーカードに対して反発が広がる。

健全な社会を維持するためには穏健な政治報道が欠かせないのだが、我々の社会は効果的なソリューションを見つけることができていない。しばらくは一人ひとりが政治報道との付き合い方を考える必要がある。

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