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「蓮舫による共産党主導の革新都政」を絶対阻止しなければならない!

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SNSのXに「蓮舫による共産党主導の革新都政」を絶対阻止しなければならないという文書が出回っている。真偽は不明だが自民党の内部文書とされている。自民党地方組織の崩壊が始まっていることを示唆する味わい深い文書となっている。幹部たちの追い詰められた心情がそのまま文書化されており、彼らにもはや考える力が残っていないことがわかる。

都知事選の報道は今の所「女傑対決」とか「連合は蓮舫さんを支援しない」などの印象報道に終始している。こうした漠然とした選挙運動を打破するためには誰かが「無党派層への手紙」を書くことが期待されるが、それに成功した候補者はまだ出ていない。

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自民党の内部文書は「蓮舫による共産党主導の革新都政を絶対阻止しなければならない」から始まる。続いて「小池百合子氏が出馬する場合は全面支援をしろ」と続くが「そのやり方は執行部に一任しろ」となっている。ただ、これだけでは文章の意味が通じないと考えたのだろう。自民党は小池知事を支援しないと注釈があり、その注釈に注釈を加える形で「小池さんが支援を望まないスタンスだ」と書かれている。

「とにかく蓮舫(呼び捨て)はダメだ」と考えた人が考えをまとめないまま文書を書き始め「いや小池さんは自民党から支援されたくないと言っていたよな」と迷い始めていることがよくわかる。根幹にあるのはおそらく2009年を彷彿とさせる「下野」への恐怖心なのだろう。つまりこの文書からは選挙で連敗を続けた自民党東京都連の慌てぶりが透けて見える。

Xでは「萩生田光一さんが小池支持を決めたら小池さんの支持率が下がった」という週刊誌の記事も盛んに紹介されていた。自民党支持者は「体制側を応援する俺かっこいい」という気持ちと「政治と金の問題はなんとなく後ろ暗い」という気持ちの間で揺れている。どちらも単なるイメージの問題だが多くの日本人にとってはこの自己イメージの維持こそが政治に参加する動機の全てと言っていい。体制を支援することで自分も大きなものの一部だと感じられる。裏返せば投票行動で体勢に賛同することによってしか政治との一体感を感じる術がない。

蓮舫による共産党主導の革新都政」の響きはどことなく「江青らが主導する中国共産党」という言葉が持つ印象に似ている。江青女史が粛清されたのが1976年だそうなのでその頃からあまり共産党に対する認識が変わっていないことがわかる。歴史を年表の暗記としてしか捉えない多くの日本人の情報はこれくらいアップデートされていない。

もちろん日本共産党が蓮舫陣営を支配しているとは思わないのだが、共産党が入った運動体に持続性があるのかも気になる。沖縄県議会選挙で「オール沖縄」が敗北した。オール沖縄は普天間返還・辺野古移転で大いに盛り上がった。ところが「オール沖縄は批判ばかりしている」という印象がついてしまっているようだ。

新潮によると特にその中で大きな役割を果たしたのが日本共産党だそうだ。原理原則にこだわり「反対運動をカードにして中央政府から何か有利な経済条件を引き出したい」と考える人たちと対立するようになったようだ。

日本共産党は日本では珍しい純粋イデオロギー政党だが高齢化も進んでいる。一生をかけて「米国排除」運動を展開してきた人たちが考えを変えるとは思えない。このため若者らや生活者が「オール沖縄」に魅力を感じなくなっていったのかもしれない。選挙結果分析では無所属与党系は1議席減らしただけだが、共産党が3議席減らしている。今回負けたというより徐々に支持を失って行ったのだろう。

有田芳生氏は今回の都知事選を「闘争」と位置付けているようだ。高齢者世代には好まれる表現なのだろうが、おそらく現役世代はこれを受け入れないだろう。有田氏はオール沖縄を立て直したいようだが、そのためには闘争だけでなくどこに問題があったのかを総括し有権者に示すべきだ。

沖縄の例を見てもわかるように「反XX運動」を中核にした左派が合意形成できなくなるというのはよくあることだ。

今後「蓮舫体制」が成功できるかどうかはどの程度市民運動を中核にして無党派を取り込んで行くことができるかにかかっているといえる。熱心な左派運動は無党派層を遠ざける。だが、今のところ一般の無党派を運動に取り込もうという動きはなく「共産党主体だ」「立憲民主党は表向きは支援しない」「連合は蓮舫氏を支持しないが蓮舫陣営についた労働組合もある」という報道しか聞こえてこない。全て組織にまつわる話題であり不安を感じさせる。

ただ「無党派層への手紙」である公約はまだ出ていない。公約の発表は18日になるものとされている。ここで、蓮舫陣営は8.4兆円から8.5兆円と言われる一般会計予算を全て洗い出した「お手紙」を書くべきなのかという問題が出てくる。

同じく都知事選挙に立候補している安野たかひろ氏が興味深いレポートを出している。都議会の質問は多岐に渡っておりかなり複雑なものだがAIを使うとそれなりに可視化することができる。

ただしこれを見ても有権者一人ひとりの関心である「私にはどれくらい予算が使われているのか」がわからない。AI分類はそれぞれのトピックの関連性によって機械的に分類されているだけで現役世代向け・高齢者向け・一般インフラ維持などに色分けされている訳ではない。ターゲットごとに分類をするためには一つひとつの質問に「タグづけ」が必要だろう。

さらに付け加えるならば質問に出てこないが重要な予算もあるはずだ。例えば都営水道の維持などの「当たり前にかかるお金」はここには出てこないだろう。「当たり前にかかり省けないお金」と「政策的に使えるお金」の割合も示されていない。あるいは「政策的に使えるお金」は全体予算のほんの一部なのかもしれない。

政策的な予算の組み替えには2つのアプローチがある。

  1. 予算から無駄を排除して必要なところに回す
  2. 受益層の優先順位を変える(例えば公共工事から医療・福祉予算への組み換えなど)

当然、自民党を支援してきた保守層と蓮舫氏を支援するであろう人たちの間には優先順位の違いがあるはずだ。だから本来はこの2人の政策が同じになるはずはない。仮に同じになるとしたらどちらもケーキのスポンジ部分には手をつけずに生クリームだけを語っているのかもしれない。そしてこれは全体を可視化してみるまではわからない。

読売新聞の先行報道では「少子化対策や教育・福祉、多様性」など7つの項目に重点を置くということになっている。「多様性」という価値の領域に踏み込んでおり単なる行革型の打ち出しからは脱却しつつあることがわかる。

いずれにせよ選挙公約は「無党派有権者に対するお手紙」なのでターゲットを絞った上で一人ひとりが自分ごととして読み込めるものを作る必要がある。

だが、AIエンジニアの安野たかひろ氏が不完全ながらもAI分析を行うまで誰も東京都の予算や政治家の関心を可視化して共有しようとは考えなかった。

自民党に至っては過去の裏金の総括すら進んでいない。都連会長は「裏金議員」の一人である萩生田光一氏であり、彼は方針は全て自分達に一任するようにと言っている。過去もまともに総括できない彼らに「予算効率化のための可視化」などと発想が生まれるはずもない。3.0と言っている小池百合子氏も「では2.0はどうなったんですか?」という質問には答えられないだろう。

蓮舫陣営も今の所は脱組織化がうまく進んでいないようだ。今後「どのようなお手紙」を無党派層に向けて発信するのか、あるいは内向きの組織型選挙に終わってしまうのかに注目が集まる。

安野たかひろ氏はレポートを作ることまではできた。これを例えば蓮舫陣営の市民団体・共産党の人たちに見せたときにどんな反応が帰ってくるのかが気になる。まず見方がわからないと思うだろうが、一通り説明を聞けば今度は「もっとこの部分が見たい」と考えるはずである。つまり資料は作って終わりではなくそこからがスタートになる。

これは必ずしも現在の政治に詳しくない安野氏にも有効な知見を与えるだろう。対立候補だからといって協業してはいけないという決まりはないし協業したから合意しなければならないということにもならない。話し合った結果「優先順位が違っている」と確認できてもそれはそれで構わないのだ。

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