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若者を選挙に行かせるには

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以前、若者が政治に参加しないわけという話を書いたのだが、選挙で結果が出たようなので、まとめを書いておく。検証は大事。
一つ目の要素は「プライベート」である。山田太郎候補が29万票近くを獲得した。これは比例区の落選候補としては最大の得票数だったようだ。山田太郎候補が訴えたのは「表現の自由を守る」ということである。それ以外についてはあまり訴えなかった。これに呼応したのが「二次元好き」と呼ばれる人たちだ。
ここから分かるのは、若者を動かすために必要な素材は「子供部屋」の中にあるということである。「戦争」は遠い外国で行われており、彼らには響かなかった。どうも、若者は「利用される」ことに過敏に反応するらしい。
ある程度年齢を重ねれば「貸し借り」という考え方が身に付く。利益団体というのは「貸し借り」の論理で成り立っている。貸しを作って意思決定プロセスに関与するのだ。しかし、若年層は貸し借りという概念がないらしい。つまり、若者を動員したければ「九条擁護のために協力しろ」とか「デモに行け」などとは言ってはいけなかったことになる。
例えば、山田候補が社民党から出ていれば、社民党は政党要件を失わなかったはずだし山田候補は当選していたかもしれない。表現の自由は人権のサブカテゴリなので親和性はあったはずだ。しかし、実際に社民党と提携してしまうと「利用されるのでは」と考えて離反したのではないだろうか。
意外なことに、投票にいった若者は自民党に投票したようだ。この傾向は18・19歳の支持政党や東北地方の候補者投票先の統計で顕著に表れている。
高度経済成長期の若者はたいてい「反体制」ということになっていた。資源に余裕があり、未来に不安が少なかったので「反体制」という贅沢ができたのだ。ところが、現在の若者は失敗することが許されない。リソースや選択肢が少ないので一度の失敗で人生を台無しにしかねないからである。すると、政党を選ぶときにも「失敗がない」政党を選びたくなるのではないだろうか。SEALDsなどのデモは「人生の迂回路」であり、失敗の可能性がある。だから「戦争反対」は受け入れられなかったのだろう。
この結果は面白い。日本人には余計なリソースを与えず、生きるか死ぬかぎりぎりのレベルで育成したほうが権力にすり寄ってくれるということになるからだ。ランクをつけて管理し、身分外の枠組みを作って「あの人たちよりはマシだ」という感想を与えるとよいことになる。これは江戸時代に徳川幕府が行ったのと同じやり方だ。
リソースを減らし落伍者を作るやり方はいくらでもある。借金を抱えたままで大学に行かせれば、逃亡しないで安い賃金で働くだろうし、そこから落伍して借金が返せなくなる若者が出れば「ああはなりたくない」とか「あの人たちは実力がなかったのだ」と感じることになるだろう。落伍した若者が出れば「甘えている」とバッシングするようになるだろう。
日本人は管理しやすい民族ということが言える。
「若者のためを思って」とか「次世代のために」とか代弁するのはやめた方がよさそうだ。そう言えば言うほど当の若い世代は「利用されるのでは」と考え、権力に寄って行く。そして喜んで搾取されるようになるのだ。


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