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南スーダンが再び内戦状態に

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参議院議員選挙が終わってほっとしたのもつかのま、南スーダンが再び内戦状態に突入したのだというニュースが入ってきた。NHKによるとJICA関連など日本人70名が南スーダンに滞在しているらしく多くが取り残されている。だが、ニュースを見ても、大統領と副大統領が争っているということ以外には何がおきているのかよくわからない。でも、大統領が副大統領をアポイントしたんじゃないのかと思った。なぜ二人は争っているのだろう。
もともとスーダンにはアラブ系の民族とアフリカ系(ナイル系と呼ばれているようだ)人たちがいた。ナイル系の独立運動が起きて、長い独立戦争の末に独立を達成する。南部には油田がある。ところがいったん独立が成立すると今度はナイル系諸民族の間で利権を巡る争いが起きたようだ。南スーダンの収入のうち98%が石油利権だそうだ。
ナイル系民族も一枚岩ではない。大統領はディンカ族で副大統領はヌエル族なのだそうだ。どちらも同じ系統の言語を話し、ともに牧畜民だ。だが、長い間牛を巡って争っていた歴史があるということだ。それが内戦を経験することで大規模な民族衝突に発展し、最終的には石油を巡る利権争いに発展した。
民族紛争はとてもやっかいだ。民主主義の伝統のないアフリカでは大問題に発展することがある。この辺りの事情が、同じ多民族地域で激しい民族間対立を繰り返しつつ徐々に民主化していったヨーロッパと決定的に違っている。ヨーロッパはキリスト教を取り入れることで宗教的な権威のもとで精神的な統一を果たしたのだが、この地域にはそういう歴史もないのだろう。ソマリアでも同じようなことが起こり「報復はしない」と決めた地域と「あくまでも報復しない」と決めた地域で大きく様相が異なっている。ルワンダではもともと同じ民族だった人たちが人工的に分離されたうえ、ラジオに呼応して殺し合いに発展した。
「内戦で親族が殺された」という感情を許すのはとても難しいのだが、そこを乗り越えないと国家は破綻することになるだろうと考えられる。CNNの報道によると「報復の連鎖」が広がりかねないそうだ。
民主主義が成立するためには、政府が国民に依存する必要がある。つまり徴税権を行使するためには国家事業に国民をコミットさせなければならないし、経済を大きくしないと税収も増えない。ところが南スーダンの収入の98%は石油利権であり、設備は外資からの投資で賄うことができる。故に国民がいなくても国家は成り立つのだ。すると資源を巡る奪い合いが起こり、どちらかが滅びるまで内戦が続くか、膠着状態に陥るのだろう。
ヨーロッパの戦争は外からの資源投入がないので域内が疲弊すると終わり、また冨を蓄積すると戦争になるということを繰り返してきた。ところがアフリカ型の戦争は外からの潤沢な資金と武器に支えられている。このため、一度火がつくと、国を根本的に破壊しつくすまで終わらないのである。
残りの要素は外国からの介入だろう。地図で見るとウガンダ、中央アフリカ、コンゴ民主共和国といったきな臭さそうな国に囲まれている。国連が撤退すると内戦は石油利権を巡る諸外国を巻き込んで周辺に広がるかもしれない。


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