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今回の政治資金規正法改正でもっとも多くを失ったのは維新だった

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政治資金規正法の改正案が自民・公明・維新の賛成で衆議院を通過した。今回最も被害が大きかったのは維新の改革派の人たちだった。

当初は維新が設定したレッドラインからどこまで撤退するのか?が問題だと感じていた。だが報道を見るとこうした細かい点は全く報道されておらず「そもそも抜け穴だらけでお話にならない」ということになっている。おそらく多くの有権者は「政治資金規正法改正案が衆議院の特別委員会で可決 「抜け穴だらけ」と指摘される改正案には疑問の声も」などのヘッドラインだけを見て「維新は単なる共犯者だ」と感じることになるだろう。ワイドショーの中には維新の合意が曖昧だったために国会が混乱したなどと指摘するものさえあった。

これまで自民党に閣内・閣外協力し多くの野党が潰されてきたが維新も同じ道を歩み始めたといえるだろう。自民党は「ぬえ」のようだと言われることがあるが、その「ぬえ」に取り込まれてしまうのである。

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維新の音喜多駿氏は当初「領収書の完全透明化がレッドライン」と指摘していたが結果的には多くが「後日検討」ということになった。「検討」している間は音喜多駿氏は約束を破ったことにはならない。また法律化をするところまでは「約束」を取り付けた。一方で自民党は条件についての約束はせず言質を与えなかったと言える状況を作った。

当初はこれが大きな問題だと考えていたのだが実はそうではなかった。ほとんど全てが後日検討ということになっている。岸田政権は今後レームダック化することが予想される。つまり岸田総理の主導で始まった「協力」が次の総裁のもとで継続されるかは保証の限りではないということだ。その意味では音喜多駿さんの「約束」が守られるかどうかは自民党の党内情勢次第ということになる。

今回最もかわいそうに見えたのが青柳仁士さんだった。彼の不満は午後の質疑で爆発した。

青柳仁士氏は「穴があるとは言っても」自民党・公明党の最初の案は「穴そのもの」であり、これを蓋つきの穴に変えただけでも前進であると不満をぶちまけていた。

また、法案を取り下げたため答弁ができなかったためわざわざ質問時間を使って選挙費用は今回の議論に含まれるとの主張を展開していた。国民民主党などは「選挙費用が含まれる保証はない」と主張しておりコンセンサスがない。これも青柳さんの主張を信じたいところなのだが実際の運用は全て後日検討になる。

他にもよその政党が言いがかりをつけているなどと質問時間を使って主張していた。本論の理解すらできない状態で青柳さんの主張を聞いていても一体彼が何に怒っているのかはよくわからない。共産党などは政策活動費を必要としているのは自民党と維新だけであり両者は共犯関係にあるなどとの主張を展開していた。

しかし、そもそも「維新が何を勝ち取ろうとしていたのかを理解しよう」とする人はごく少数派だったのではないだろうか。この間も少子高齢化が加速したというニュースや実質賃金が下がり続けているというニュースが多く扱われている。政治資金の問題が解決すれば国民生活の向上につながるのか?と問われても肯定的な答えは返せない。さらにマスコミは「そもそも法案は穴だらけで取るに足らない」との主張を展開した上で「麻生氏に見放された岸田さんは総裁選で勝てないのではないか」などと報道している。

実際にQuoraなどでこの問題を取り扱っていると「こんな問題を取り上げて何になるのか」というコメントを多くいただく。そもそも議論がわかりにくい上に自分達の暮らしが良くなりそうな実感が得られない。

おそらく、政治家が「政治に関わるとロクなことがない」という印象を払拭できない限りこの状態は続くだろう。実は政策活動費の使い方が問題なのではなく限られたパイの奪い合いのために政治資金を使ってでも相手陣営からの引き抜き工作をしなければならないという状況こそが問題なのだ。

青柳仁士さんも音喜多駿さんもおそらく改革派として熱心に問題に取り組んだのだろう。だがそもそも政治に対する関心が薄れている(あるいは最初から期待がない)ため、彼らが声高に主張したとしても細かい主張が有権者に伝わることはない。結果的に「万博や役職などの見返りを期待して穴だらけの法案の成立に加担した共犯政党」という漠然とした印象だけが残る。

ただ、自民党に協力した政党が支持者の離反を招き内部分裂を起こして崩壊してしまうというのはよくあることである。社会党は政権入りしたことで自衛隊の存在を認めたがこれが内部分裂を引き起こした。小沢一郎氏の率いる自由党も自民党との連立を組んだために「政権残留派」と「離脱派」で分裂した。この時に残ったのが二階俊博氏らの保守党(保守新党を経て自民党に合流)だった。

今回の議論内容を見ていると「改革政党」が自民党と協力する過程で「条件闘争」に突入していったことがわかる。自民党は党内議論という名目で相手に妥協を迫る条件交渉を行い自分達のプレゼンスを誇示するという古いガバナンスコードを持った政党だ。内部にいる人たちは必死に改革の意思を守ろうとするのだが外から見ると単に取り込まれて妥協しているようにしか見えない。これが大胆な改革に期待していた既存の支持者の離反を招く。

さらにそもそも自民党に近づくのは「自分達の力ではこれ以上成長できない」と認めているからである。背景に強い忠誠心を持った支持母体(創価学会)や大多数の国民からの支持があればもっと強い交渉力を獲得できるのだろうが維新にはそれがない。無党派層の期待を維持できなくなった時に政党としては終わってしまう。

ただし今回は「お試しパーシャル連合」だったために政党の瓦解につながるような大きな傷にはならなかった。維新が今回の教訓から何を学んだのかについては直接関係者の意見を聞いてみたいものだと思う。手遅れにならないうちに総括しておくべきだろう。

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