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「どうせ維新でしょ」が覆り 自民党が法案再修正へ テレビの政治評論は何を間違えたのか

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「政治と金」の問題が興味深い展開を迎えている。メディアは永田町の内部取材をもとに今回の問題を自民党の政局と捉えており「麻生太郎副総裁が岸田総理を見放そうとしていいる」などと伝えていた。

一方で政策活動費の問題は添え物扱いだった。そもそも企業献金の廃止などが触れられていないため国民の期待に沿うものではないという認識があるようだ。

また維新は「埋没を恐れて自民党に接近している」という論調になっている。このため結論は「どんな法案が出てこようがどうせ維新は賛成するだろう」ということになっていた。だが、そうならなかった。テレビは何を間違えたのか。

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まず大方の予想通り自民党は「先送り」と「検討」だけの法案を出してきた。自民党は民意を掴みかねている。これまで茶封筒をポンと渡すようなお金を使い方をしてきたのだからこれを改めて領収書の保存を認めさせるのはほぼ不可能だろう。つまり「黒塗り領収書」で済ませようとしていたのである。

ところがこの時点では既にXにおいて玉木雄一郎国民民主党代表と維新の音喜多駿氏・青柳仁士氏の間にコミュニケーションが成立していた。さらにここに橋下徹氏が参戦するという状況ができていた。玉木雄一郎氏は京都大学出身で経済産業省での勤務経験もある足立康史氏も勧誘していたが足立氏は断っていた。なお足立氏は現在党員資格停止中だ。

維新にはおそらく学歴障壁ができており法律論争に入れる人と政局にか興味がない人との分断がある。「安易な学歴差別はいけない」とは思うのだがやはり国語力の問題は非常に大きい。特にXは短文でのやりとりが主なので基本的な日本語のリテラシとITリテラシがないと議論に参入できない。

馬場代表が入らない形で「事実上のレッドライン」が成立していた。田崎史郎氏・伊藤惇夫氏など永田町取材組はおそらくノーマークだったはずだ。確かなことは言えないがおそらくアカウントもお持ちではないのだろう。

玉木雄一郎氏がこう反応すると……

音喜多駿氏がこれに応じた。条文まで作って渡したそうだ。要求は明確となり「解釈の余地」は残らない。

結果的に自民党は法案の再提出をすることになった。もちろんこれがすぐさま「維新の勝利」になるわけではない。現状「政策活動費50万円以上公開」という線は解除されるようだが、黒塗り領収書問題については回答が出ていない。

そもそも、国民と政治の関わり方がどうあるべきかという議論が行われておらず、政治資金を規制したからといって政治が機能を回復するという論理的な保証はない。また、最終的に自民党の恩を売っておきたい馬場代表が押し切ってしまう可能性は残っている。橋下徹氏も「最初は60点でいいんだ」などと高すぎるレッドラインの修正を図っている。だが少なくとも当初テレビが言っていた「どうせ維新は結論ありきで話を持ちかけたのだろう」ということにはならなかった。

2024年6月4日00時23分配信時点の時事通信は次のようにまとめている。つまり自民党としては50万円超を捨てて「黒塗り領収書」を死守したままで法案を成立させたいが維新がそれに応じていないということになる。

  • 日本維新の会が使途公開対象を1件当たり「50万円超」とする規定の削除を要求。自民は参院に送付した後に修正する考え。
  • ただ、3日深夜になって自民と維新の間で4日採決を見送る案が浮上。調整を続けており、衆院通過がずれ込む可能性がある。自民関係者は「想定通りに進まないかもしれない」と語った。

本日の山場は維新がこのまま「プロレス」的にレッドラインを移動させるのかそれとも最初のレッドラインにこだわるかである。岸田総理が与野党質疑に応じる予定になっているためこの辺りの状況を見極めつつ判断するものとみられる。

そもそも国民はこの法案をどのように見ているのか。

おそらく有権者は政治と金の問題でどのような提案がされているかにはさほど興味がなく細かい内容については知らないはずである。にもかかわらず、JNNの世論調査によると「法案には期待できない」とする人が7割に達する。「どうせ岸田総理は何もできないに違いない」という見込みがありその印象を持って様々な情報を取捨選択していることがわかる。意思決定のために情報を集めるのではなく、印象を補強するために情報をとっている。

岸田総理はG7サミットに出席する前にこの問題を「片づけ」てしまいたい。その後国会を23日に閉じてしまえばさらなる政権不支持につながる悪材料が一つなくなる。このため憲法審査会が犠牲になったようだ。このドタバタした状況で日本会議を満足させるために憲法の条文化までやろうとしていたのだなあと呆れるばかりだが、政治と金の問題も憲法も岸田総理にとっては単なる選挙対策であるということがよくわかる。

自民党は、憲法改正条文案の起草作業を行う場として提案していた衆院憲法審査会幹事懇談会の4日開催を取り下げた。

もちろん永田町のインサイダー情報は非常に大切なのだが、SNSには別のコミュニケーションパスができていてこちらも意思決定の上で重要な「戦線」になりつつある。もちろん仕組まれたやりとりなども存在はするのだろうが公開された場所で議論が進行していることも確かだ。「日本の政治状況もちょっとずつではあるが前進しつつあるのかな」と感じた。

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Comments

“「どうせ維新でしょ」が覆り 自民党が法案再修正へ テレビの政治評論は何を間違えたのか” への2件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    50万円超に限ると設定したことは許容しがたいことなのはもちろんですが、政策活動費の領収書公開を10年後に設定していることのほうが許容しがたいのではと思います。
    10年後って、まるで外交上の秘密のような扱いをしていますが、これを正当化する建前は用意できてるんでしょうかね。外交なら、すぐに公開しないことの正当性を説明する建前(相手の国の秘密を守ることが交渉を円滑に行うことに必要で国の利益になる等)を作りやすいです。しかし、領収書公開はお金がどのように使われているかを国民が知る(監視)するのが主な目的なので、10年後の公開ではそれが形骸化してしまうと思います。外交上の秘密と同じぐらい秘密にする正当性があるのでしょうかね。

    1. 結局「自民党と政治の金」の問題は解決しなかったわけですが、今度は自衛隊の裏金問題が浮上しました。自民党の統治問題も解決できなかったくらいですから、おそらく政府機関の問題も解決できないと思います。とはいえ、じゃあ野党に解決できるのか?と言われると全くそんなふうにも思えません。政治の世界に経営者などの人たちが参入できる仕組みを作らない限り問題は解決しないのではないかと思い始めています。