岸田政権が何も決められなくなっている。欧米では当たり前になっているライドシェアだが日本ではなかなか結論がでない。ついに「期間を定めずに議論する」というのが最終結論となった。背景について調べると河野氏と公明党との争いだったようだ。やはり党派対立なのかと感じた。
この膠着状況を打破するためには早急な総選挙の実施が必要だ。
テレビニュースを見ていると人の良さそうな斉藤国土交通大臣に対して誰かが声高に何かを訴えている映像が流れてきた。どこの反社会勢力に凄(すご)まれているのかと思ったのだが、反社の人ではなくタクシー業界の人だったようだ。あるいはたまたまそういう映像が切り抜かれただけなのかもしれないが、タクシー業界というのは随分と怖い業界なのだなと感じた。
この映像の印象が強かったために斉藤国土交通大臣がタクシー業界から恫喝されたのではないかと思ったのだがどうやらそうではないようだ。公明党はタクシー業界と関係が深くライドシェアには反対だという。国土交通省は公明党の定席になっており利権として定着しているのかもしれない。一方で菅義偉氏を後見人にして「自民党はITに強い政党だ」という改革意欲を打ち出したい勢力もいる。それが河野・小泉連合である。石破氏を加えて「小石河連合」などと言われる。彼らはアメリカで定着しているライドシェアを導入したい。
TBSでは岸田総理と斉藤・河野大臣が会合を行ったと報道している。結果的に法整備の議論はやめないが期限も決めないということになったようだ。河野氏は提案を諦めずに済み斉藤氏も結論を出さずに済む。事実上の先送りだ。
自民党はもともと1つの政党ではなくいくつかの派閥の連合体である。派閥が政策コンペを行い疑似政権交代が起きるというのが日本の政治の安定に寄与してきた。アメリカ型の政治とは異なっていて水面化で「予備選」をおこなってきたのである。
ところが今回の事例ではIT業界を背景にした河野・小泉氏と運輸利権を持つ公明党との間で意思決定ができなかった。小さな利益集団が乱立し決定的なヘゲモニー(覇権)を持った集団が出ることがなくなっている。つまり日本の安定に寄与してきた政策集約能力が自民党内部から失われていることがわかる。問題の先延ばしを「解決だ」と偽って説明してきた安倍派一強の弊害の一つだろう。かなりポピュリズム化が進んでいる。
こうした睨み合いはさまざまなところで起きているが、派閥が中途半端に解体されたためさらに複雑になっている。関東では元々派閥の属さない議員たちも出てきているうえに公明党までが癒着するという複雑な構造になっている。
- 財政再建派と積極財政派
- 中国融和派と日米同盟・台湾優先派
- 政治と金積極開示派と非積極派
- 規制緩和派と守旧派
- 太陽光発電推進派と原発推進派
この他、憲法積極改正派(清和会と日本会議系保守)は小石河連合には政権は任せることができないとして岸田派を支援している。また太陽光発電推進は中国との結びつきが強く、原発推進派はアメリカとの結びつきが強いなどそれぞれのイシューが複雑に絡み合っている。
今回ライドシェアを推進する河野太郎氏は一方では太陽光発電の推進に積極的だった。ライドシェアはアメリカ発祥のサービスだが太陽光発電はパネル・制御装置・送電技術な土で中国の影響が強い。また河野氏は菅義偉氏と近いが政策グループは麻生氏と同じ宏池会系である。
今回のライドシェアの問題も「ライドシェアが解禁できないのが問題」というよりは「自民党・公明党が何も決められなくなっているのが問題」と問題を置き換えた方がわかりやすい。
自民党は政党としての成り立ち上、派閥の利害が対立しやすい構造を持っていた。これを「最後には総理・総裁に従う」ことでまとまってきた。つまり、選挙で岸田総理が大きな勝利を収めていればこんなことにはなっていないはずだ。さらに自民党の総裁選挙が地方・党員優先になっていれば自民党内の派閥も「民意」を無視できなかっただろう。
仮に「何も決めなくても日本はそれなりに動いているから別に問題ないのだ」と考えるのであればそのままでも構わないのかもしれない。だがやはりライドシェア1つ利害調整できないのは問題であり、それを解決するためには何らかの形で選挙を行う必要があるということになる。おそらく岸田総理は選挙には勝てないだろうがとりあえず「何も決められない」という状態からは脱却できる。