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偉い政治家が知らない日本を活性化させるカンタンな方法4つ

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このところ政治の膠着について書いてきた。出口が見えないのはみんな同じみたいで東浩紀という思想家さんも「民進党しかないなあ」みたいなことを書いている。理由は自民党が嫌いで共産党も嫌だからだそうだ。頭がよくて文章も上手な(読んだことないので分からないが……)思想家さんでもそうなのだから、出口なしなんだろうなあと思いたくなる。
全く別の面白い文章を読んだ。それはみずほ銀行のデスマ案件のことだ。日本の悪いところがギュギュッとつまっていて、ひととき大笑いできる。日本のような先進国が生き残るためには、フィンテックのようなサービス業に進出してゆくしかない。だが、日本の銀行はフィンテックどころか基幹システムすらまともに組めないのだ。
直接的な原因は三つある。

  • 過去の仕事のやり方を変えたくない。システムは仕事のやり方にあわせたい。だが、その仕事のやり方は合併した旧銀行の数だけある。
  • 監督官庁が仕事のやり方を変えさせてくれない。
  • 過去のアーキテクチャが寄せ集めになっていて動かせない。(石油コンビナートのぐるぐる巻き付いたパイプラインを思い出すといいかもしれない。石油コンビナートも解体できないのだそうだ。)

その結果、みすほ銀行の案件は「デスマ化」している。デスマとはデスマーチの略である。軍司令部の無茶な要求のために、末端の兵士(ろくな兵站がない)が過労で動けなくなるまで行く当てなく行軍させられる状態を指す。このプロジェクトは20万人月と言われているそうだ。投資金額は3000億円とも4000億円とも言われるが、完成のめどが立たない。
ところが問題はそれだけでもなさそうだ。旧銀行はそれぞれおかかえベンダーを持っている。それらが仕事を請け負うわけだが、大手ベンダーは自分でプログラミングなんかしない。そこで下請けを雇うのだが、下請けは自前でプログラマを抱えたくない。そこで徐々に下請けしているうちに、七次受け、八次受けと進んでゆくそうだ。ついには、日本人だけでは賄えず、中国人や台湾人を連れてくる。彼らは現場でわーわー文句をいいながら、時には中国語で罵り合いが始まるという光景も出ているそうである。実務を担っている人たちの時給が900円という書き込みもあった。
IT産業の主な業務はプログラムを書いたり要件を決めることではない。どこからから学校卒業したてのエンジニアを騙してつれてきて、動けなくなるまで働かせることだ。つまり、IT産業は奴隷産業なのだ。価値の源泉はプログラミングのはずなのだが、実際はプログラマ(およびテスター)は消耗部品のようなものだ。知識の蓄積がないので、日本のIT産業は成長しないのである。
これがいかに危ないかよく分からないかもしれない。JRが死にそうになったバイト感覚の人に線路の保守点検をさせているみたいなものである。レールの形や敷設方法はベンダーによって違っていて、どこかを直すと別の場所のつじつまがあわなくなる。夜があける時間は決まっているが、どこまで保守点検していいか分からないし全体の地図もないなか保線作業員をあてどなく歩かせる。そんな電車に毎日乗りたいと思うだろうか。
こうした価値の源泉を潰してしまうという状態は多かれ少なかれどこの産業にでもあてはまるのではないかと考えられる。すると第一の処方性が出てくる。
第一の処方箋は孫請けを禁止することだ。労働者は生産性を上げるために働くべきであって、仕事をややこしくするためだけに存在する人たちを食わせるために働くべきではない
しかしこれは最初の一歩に過ぎない。次の原因はみずほ銀行そのものなのだが、それを作ったのは日本の金融政策だ。大きすぎて壊せないためにいくつかの銀行を寄せ集めたのだが、それがブラックホールのように労働色を吸い取って行くのである。つまり第二の処方箋は次のようなものになる。
第二の処方箋は古く競争力がなくなった会社は潰してしまうことだ。寄せ集めてもロクなことにならない。
みずほ銀行がなくなっても銀行そのものがなくなることは考えにくい。重要なのは新しい銀行が簡単に参入できるようにすることだろう。そもそも、銀行が仕事を変えられないのは監督官庁が厳しく業務のやり方を規制しているからだろう。つまり第三の処方箋も簡単だ。
第三の処方箋は政府の監督権限を減らすこと、つまり規制緩和だ。
こうした簡単な処方箋が政治から上がってこないのは、単純にプログラミングなどの仕事をしたことがないからだろう。成長産業を見つけたいと考えている人たちは、実は成長産業に触れたことがない。逆に成長産業に従事した経験のある人は政治の世界に入れない。政治に関連する法律(選挙制度や政治資金の運営)は難しく実務家が気軽にコミットできるような状態になっていない。つまり第四の処方箋も自ずと出てくる。
第四の処方箋は政治関連の規則を近代化することだ。運用や解釈が入る余地をなくすべきだ。
このようにして4つ並べてみたが、どれも簡単なことばかりである。意外性のあるものは一つもなく、がっかりした方もいらっしゃるかもしれない。