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消費税マイレージ制度について考える

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「日本のこころを大切にする党」が消費税マイレージ制度というのを提唱している。直感的に「この人たちはアホなのか」と思った。では、なぜ「アホ」だと感じるのか、自分でもよく分からなかったので整理してみた。なお、この文章は2016年7月に書かれたものだが、2017年の10月に再び検索され始めた。選挙のたびに日本のこころを大切にする党が持ち出すのだが、その頃には有権者はすっかりこれについて忘れてしまっているので、再び検索するのだろう。有権者の記憶は1年も保たないということになる。
ちなみに消費税マイレージ制度とは、支払った消費税をポイントにしておいて、後日還元してもらうという制度である。多分通帳みたいなものを作るのだろう。年金として還付するという方式が考えられているそうである。
第一に、消費税は額面に加算されるため消費を直接冷え込ませる効果がある。額面が消費性向を決めているとすれば、ポイントの有無は消費性向には影響がない。もし1年程度で還付されるのならばそれなりに興味を引くかもしれないが、還付されるのは数十年後である。
さらに、多く買い物をする人にはたくさんの還付金がたまる。一方、困っているのは比較的貧困な層なのだが、彼らはそれほど恩恵を受けない。つまり、逆進性が高い制度である。ゆえに、この制度が社会不安解消の制度になることはないだろう。貧困層が将来のマイルのために消費を増やすなどということは考えないからだ。逆に、比較的裕福な層もわざわざマイルを貯めようなどとは思わないはずである。
消費税マイレージ制度は効果が乏しそうだが、そのための費用は膨大なものになるだろう。年金制度すら満足に運用できていないのに、一人ひとりの買い物の記録を付けるなんてことが本当にできるだろうか。マイナンバーを使うのだと思うが、マイナンバーシステム自体の運用はボロボロらしい。これに購買情報を紐づけて自分で暗証番号の管理をする。毎回マイナンバーを「晒す」わけで、考えただけで寒気がしてくる。この提案の筋の悪さの背景には、システム構築への無理解があるのではないだろうか。システム構築の費用を過小評価しているためにこうした様々なアイディアが次々と出てきて現場を混乱させる。
日本のこころを大切にする党の説明によると、これは消費税を累進課税にする画期的な対策なのだと言う。であれば「所得税」一本でよいのではないだろうか。なぜわざわざ消費税が必要なのだろうか。税制が所与のものであって変えられないならコストをかけてでも平等性を確保すべきなのだろうが、税制は国会で審議すればいくらでも変えられるはずなのだ。
いろいろ考えてゆくと、そもそも「最初っから消費税なんか取らなきゃ良いじゃん」という一言に落ち着いてしまった。将来返すなら最初からとるなということである。
ここまではなんとなく笑いながら否定できる程度のことなのだが、その背後には、税に対する深刻な問題があるように思える。
多分、日本人には「返ってこない金は払いたくない」と考えており「官僚や政治家は手放したか金を好き放題使うだろう」と考えているのではないかと思う。つまり政治を信頼していないのだ。つまり、本来ならマイルなど使わなくても「将来社会に帰ってくるから今払っておこう」と思えるのが税金のはずなのだが、実際には「取られたら安倍首相のお友達に独り占めされるだろう」と考えられているので、マイレージ制度が必要になるということになる。政治不信を払拭するために、お金をかけて新しいシステムを作るのだから本末転倒も甚だしい。
政府資金の多くは国債由来なのだが、これは所有権が移転しない税の一種だ。社会保障費も一応「自分のための備え」という体裁になっている。日本は先進国の中では突出して国債残高が大きい。年金支出を加えるとその割合はさらに大きくなる。さらに税金にも名前をつけて後で返して欲しいと考えていることになる。
税を支払うと、社会に還元される。しかし一人ひとりは社会の一員なので結局は自分に戻ってくるというのが税金の本来の姿である。だが、実際には税金にも名前をつけておかないと不安だというのが日本人である。つまり背景には徹底した社会への不信感があるのではないだろうか。これがネトウヨ高齢者をターゲットとした政党から出てくるということは、彼らが社会に対して根深い不信感を持っているからだろう。この不信感は「自分で獲得したものは金輪際社会には還流させない」という強い決意とともに日本の政治を大きく蝕んでいる。
その一方で、政治に訴えかけても無駄だと感じているので、安倍政権のようなでたらめな政権がいつまでも放置され、実際に戦略特区という名前の荘園に補助金が注ぎ込まれることになる。
繰り返しになるが、この消費税マイレージ制度は「払った税金に名前を書いておきましょう」という制度だ。つまり、日本人の政治不信が凝縮している。それは政治が説明責任を果たしてこなかったことから起こる政治不信に根ざしている。
日本のこころを大切にする党は「ポイント制度とか若い人が食いつきそう!」とか思ったのかもしれない。それを想像するとイタい感じがする。実際にこの提案が受け入れられる可能性はなさそうなのだが、討論会などでどや顔で言われると、日本の政治家の発想ってこの程度なんだなあと悲しい気分になってしまうのである。