ざっくり解説 時々深掘り

日本で二大政党制が成り立たないわけを痛感させられた

Xで投稿をシェア

カテゴリー:

そろそろ誰に入れるか決めなければならないので、ご近所の政治関係のところを回ってきた。一つは市民ネットワークで、もう一つは民進党の市議会のオフィスだ。感じたのは「リベラル」は崩壊するんだろうなあということだった。そもそも存在すらしていなかったのかもしれないと思った。
「保守」と「リベラル」という対立軸がないということは二大政党制そのものが成立し得ないことになる。
市民ネットワークは比例区で民進党の女性候補を推薦しており、選挙区では民進党の小西候補を推薦している。しかし奥に入ると社民党の福島みずほ候補のポスターが貼ってあった。立ち話の内容は下記の通り。

  • 比例区では候補者名を書くべきだ(あるいは書いても良い)ということをつい最近まで知らなかったらしい。最近、コネクションを維持するためには比例の特定候補を応援してプレゼンスを高める必要があるということに気がついたらしい。
  • 比例区で推薦すべき候補は複数いるのだが、社民党の福島さんは「現職だから大丈夫だろう」という理由で推薦しなかった。国会でプレゼンスがないので、推しても無駄ということに気がついたのかもしれない。もしそうだとすれば同じようなことが全国で起きている可能性がある。
  • 女性候補のパンフレットには「TPP反対」と書いてあるのだが、クリントン候補も反対しているみたいだから「大丈夫だろうと」思っており、よく研究していないようだった。また、女性候補がなぜTPPに反対しているのかよく分からないとのことだった。パンフレットを読むと「TPPで食品の安全が脅かされる」というのが反対の理由らしいが、細かいことには興味がないようだ。なぜ興味がないかは聞かなかったのだが、多分「立憲政治の破壊」こそが興味の中心なのではないかと思う。
  • そこで、民進党はTPP推進の立場なのではないか(※どうやらこれは僕の間違いで今回の合意には反対しているようなのだが)と聞くと「ああ、そうなの」と言っていた。民進党とは距離を置きたい。あくまでも応援しているのは個人とのことだったが、あまり理由になっていないと思った。このように政党と候補者が結びついていない人も少なからずいるのではないかと思った。こういう人に「どの政党を支持しますか」とアンケートしても無駄だ。
  • 支持政党なしという政党があるということを理解していなかった。下手をすると「支持政党がない」という理由で投票する人がでるかもしれないなと思った。
  • 自民党の憲法改正草案はひどい。憲法第九条だけではない。自衛隊も違憲なのではと聞いてみたら「それは……」と口ごもっていた。長島昭久衆議院議員のことを聞いてみたが、誰なのか知らないようだった。女性候補のパンフレットには憲法改悪を阻止したいと書いてあるが、どこをどう変えると改悪になるのかは分からない。ただ、もろもろ知らないほうが幸せそうなので、それ以上は聞かなかった。
  • 民主党にはなんだか悪いイメージがあるので、両候補が民進党だということは言わないことにしているとのことだった。

なんとなく民進党が推薦されているのだが、憲法やTPPなどの細かいことが理解されていないことが分かる。「戦争反対・社会保障充実」といったラインが「リベラル」と言われる人たちが理解できる最高のレベルなのかもしれない。
「知性が足りないから」理解できないのか、それとも「体系的な学習」という経路が遮断されているのかはよくわからない。いつも感じるのだが、雑多な知識を体系なく集めて「雑誌」のような知識世界を作っているという印象がある。SNSに熟達しているとは思えないので。Twitterの影響というわけではなさそうだ。そのかわりに知識をまとめる体系みたいなものがあるはずなのだが、それが何なのかは「うっすらと分かる」ものの、言語化するのは難しい。
もう一つの民進党市議のオフィスに行ってみたが、市議本人が電話でなにやら話をしている最中だった。いつも不在か忙しそうにしており、市民に訴えかける時間はなさそうだしその気もなさそうだ。アシスタントやリエゾンを置く資金的な余裕がないのかもしれあに。こちらは体育会計的な縦社会ができている。衆議院議員を頂点にして、県議、市議という具合だ。この陣営は水野候補を応援している。比例で誰を推しているかは不明だった。
看板にはまだ民主党のロゴが残っており「お金がないんだろうなあ」という気がする。話を聞けば憲法やTPPに関して現実的なことが分かるだろうなあとは思うのだが、いかんせん忙しすぎて時間が取れないようだ。実際の政治家は忙しすぎて中長期的な視点でランドスケープを把握することができない。もっとも水野候補は地元の佐倉市を中心に自前の支持組織を持っているはずで、民進党の議員に頼らなくても当選できるのではないかと考えられる。
この状況の面白いところは、政党が政策のバンドルとして成立していないところだ。実際には政党ごとに細かいセクトがあり、どの程度の影響力を持つかで、その後の意思決定に影響が出るのだろう。
小選挙区・二大政党制は、政党が予めアジェンダを設定して、それを有権者に提示するという前提のもとに成り立っている。実際にはその逆のことが行われているわけで、小選挙区制度そのものが成り立たないということがよくわかる。日本人の意思決定は非公式な経路を多用し、インタラクティビティが強いのではないかと思える。そのためにアングロサクソンで成立した二大政党制・マニフェスト選挙・小選挙区制度が成立しえないのだ。
今回のことだけで何かが分かるわけではないのだが、今週末には結果が出る。そのときに、どの勢力にどの程度のプレゼンスがあるかということが分かるのではないかと思う。そうした視点で事務所巡りをしてみるのも面白いかもしれない。