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東シナ海の緊張 – 参議院選挙の隠れた争点

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参議院選挙、都知事選、イギリスのEU離脱で盛り上がっている裏で、かなり重要な事件が起きているようだ。元航空自衛隊空将の織田(おりた)邦男氏がブログで「東シナ海で中国軍が日本の自衛隊機に攻撃動作を仕掛けた」と発表し、毎日新聞が取り上げている。防衛省幹部が事実と認めたのだそうだ。その後、毎日新聞は両国政府がこれを認めなかったと再度報道した。様々な意味で、きわめてきな臭いことになっているようだ。
この件に関しては6月29日に一度書き、両国政府が認めなかったという記事を読んで再度書き直した。
可能性はいくつかある。

  • 実際に衝突が起きたが、政府が隠蔽した。
  • 実際に衝突は起きなかったが、何らかの政治的意図があり情報を流した。自衛隊が参議院選挙で共産党への拒否反応を引き出すために、わざと偽情報を流した。

なぜ政府は情報を隠蔽する必要があるのだろうか。実際には日本政府には衝突に対する手だてがなく問題を放置しているという疑いもある。放置しているのは、官僚機構ではなく政治家側だろう。自民党とその支持者たちは口では勇ましいことを言うのだが、実際にはこの問題に無策かもしれない。アメリカに訴えてみたのかもしれないが、アメリカはこの問題に対してとても慎重だ。尖閣諸島のような「小さな」海域のために、日中の衝突に巻き込まれることを恐れているからだ。
自衛隊員の命が毎日のように危険に晒されているというのが事実だったとして、日本政府がそれに無策だったなら、現場隊員の危機意識は高まるだろう。そこで、OBを通じて危険をアピールするというようなことが起きているかもしれない。
もちろん中国が日本の領土を狙っているというのも危険だが、現場の自衛隊隊員の不満が高まっているというのも危険なことだ。防衛省と自衛隊は憲法上の制約から他の役所のようには発言できない。しかし、やはり人間が働いている組織であり「認知されず面白くない」という感情も働くだろう。性質上、感情的な抑圧が働きやすい環境だと言える。
一方で、自衛隊員や元自衛隊員が憲法第九条の改正を狙って「カジュアルな嘘をついた」という可能性もある。政治的には中立であるべきなのだが(憲法上、非常に微妙な立ち居位置にいるので)政治的に影響力を及ぼさないように最新の注意を払うべき存在なのだが、それが分からなくなっている可能性もある。
よく、右翼系のブログなどで「中国には確固とした態度を取るべきだ」などと紋切り型の文書を目にすることがある。正直「アホなんじゃないか」と思う。実際には日本は単独では何もできないからだ。実際の自民党・公明党政権には何かあったときに日本人の命を守る覚悟などなさそうだ。その証拠にジャーナリストも北朝鮮の拉致被害者も返ってこない。反対に、自衛隊が自分たちの立ち位置を忘れ、政治的影響力を及ぼうそうと言う野心を燃やし始めたとも考えられる。
最初の報道は「戦争法というレッテル貼りがいけない」などと、野党攻撃に使われ始めたが、たいして盛り上がらなかった。今度は逆に「選挙になると中国脅威論が盛り上がる」という人が増えている。実情はそんなに単純なものではなさそうだ。確かに憲法第九条だけで平和を守ることはできないのだが、同時に日米同盟があれば何をやっても平気ということにはならないのだ。


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