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労働移民に寛容な自民党と経団連

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現在、イギリスの国民投票を巡って様々な困惑が広がっている。さまざまな観測が出ているが、高齢のイングランドの地方在住者たちが移民の増加を嫌ったことが影響しているという見方が一般的なようだ。
一方で、日本の地方の高齢者たちは労働移民に寛容らしい。少し古い記事だがTPPを推進する経団連の当時の会長が「日本TPPに参入し、労働移民を取り入れるべきだ」と主張している。「経団連会長、TPP「人口減少で影響、移民奨励すべき」 (2010.11.8)」記事の出元はリテラではなく日経新聞である。つまり、自民党を支持することは、将来の移民流入を承認することになる。

経団連は安い労働力を欲しがっている。その方が企業運営に有利だからだ。TPPはアジアや南アメリカといった比較的物価と人件費の安い地域を含んだ経済連携だ。こうした国々に出かけていって工場を建てるよりも、地元に誘致したほうが楽なのだ。だから経団連の主張には経済合理性がある。公共工事への海外企業の参入も促進されるので、例えばアメリカ企業がベトナム人労働者を使って公共事業を取り仕切るというのも一般的な光景になるだろう。

自民党の支持者はどちらかというと、日本の民族の純粋さを希求する人たちだという印象があるのだが、それは間違っているようだ。実際の自民党支持者たちは、経団連などが支持している政党を応援することで自由な移民政策を推進している。つまり、自分の子供や孫たちが海外からの労働力と競合する未来を選択しているということになる。かなり自信があるのだろう。

賢い人なら分かるだろうが、人の往来の自由を制限しつつ、市場へのアクセスなどできるはずはない。これはヨーロッパの例から見ても明らかだ。移民の制限をしようと思えば、ある程度経済市場へのアクセスを諦めざるを得ない。途中で脱退することも可能なのだが 、ペナルティはかなりシビアなものになるはずだ。脱退への制裁を覚悟すべきである。それでも前に進もうというのだから、その勇気は相当のものである。

新しい移民政策は、現在のものよりも人権に配慮した物となるだろう。現在は南米の日系人(偽装している人たちも多いようだが)を受け入れたり、研修生という名目で短期間低賃金労働に従事させ、使い倒した上で放り出したりしている。一部は逃げ出して闇市場で働いているのだからほとんど奴隷と変わりはない。自由に労働市場にアクセスさせるということだから、福祉や労働者保護にもアクセスさせることになるだろう。雇い入れておいて「病気だから放逐する」というわけには行かないはずだ。

中には、こうした事情を知らずに共産党や民進党が嫌いだからという理由や、近所人に頼まれたという理由だけで自民党を選ぶ人もいるかもしれない。しかし、それは一部のあまり賢くない人だけだろう。これだけ情報があふれているのだから、将来日本に移民が流入してきたときに「私は知らなかった」などとは言えない。もしそう主張するとしたら、よほどの情報弱者だろう。

中国や韓国人を嫌う人が多い印象のある安倍政権支持者だが、移民政策には寛容なのだなということが分かる。これは実に意外なことだ。

自民党、公明党、民進党ともにTPPには反対していない。つまり、労働市場の自由について寛容でリベラルな政党が揃っていることになる。ヨーロッパやアメリカでは労働市場から移民を閉め出したいという動きがかなりでてきているのに比べて、日本の移民を巡る考え方はリベラルになったものだなあと思う。