イギリスのEU離脱騒動で株価が大きく下がった。日本の年金資金が株式市場に流れ込んでいるため「かなり損が膨らんでいるのではないか」と言われている。問題なのはいくら儲かっているかということがよく分からない点である。野党(特に民進党)は年金資金を株式市場から引き上げるべきだと主張している。
だが、これは間違っている。調子がよい時に株に投資し、調子を崩した時に株から引き上げれば、損が確定してしまうからだ。なけなしの資金を全て株式に投資した結果、値下がりすると怖くなって引き上げてしまうというのは、お金がない人の典型的な行動だ。さらに大量の資金を引き上げてしまえば株式市場はさらに混乱するだろう。実態経済を不況してしまうことになる。
民進党が近視眼的に「アベノミクスは間違っていた」と言いたいがために、自身の発言が何を引き起こすのかが分からなくなっているんどあろう。これに世論が呼応すれば(反応するかは分からないが可能性はある)人民裁判的に(つまり、ろくな議論をしないまま)で投資動向に影響を与えることになり、経済に深刻なダメージを引き起こすかもしれない。現在の市場はパニック状態にあり何が起るか分からないのだ。
民進党が間違っていることは論理的に説明できたが、ではこれは安倍政権が株式市場依存に陥ったことを正当化する物ではない。巨額の資金を使って株式市場の価格を維持しようとしたという疑いが持たれており、もしそれが正しかったとすると、それは明らかに間違っており危険な選択肢だ。そもそもいったん株式市場にコミットしてしまうと資金が引き上げられない。株式市場は複数ある選択肢の一つではない。これは明らかに危険だ。
問題は、国内市場が成長しないため国内株式市場や債券市場で高いリターンが望めないことと成長が見込める新興国経済が過剰投機の対象になっているということだろう。これを解決するためには日欧米の先進国が投資環境を整える必要があるのだが、安倍政権は何もやってこなかった。結果、年金資金に大きな穴があけば、自民党は恐らくこの先政権を取れなくなるに違いない。
日本の政治家の限界は、世界の金融市場を安定させるために自分たちに何ができなかったかを考えてこなかったことから生じているようだ。よくも悪くもアメリカ追従の歴史が長かったために、リーダーシップについて学ぶ機会がなかったのだろう。
いずれにせよ、現在のパニック的な状況を「政治的に利用できる」と考えているのであれば、そのような政党は支持できないし、政権を目指すのは諦めた方がよい。今すぐ、考えを改めるべきだろう。